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母親のアニマ

夢をみる(20)

2014年12月11日(木)

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アニマの両義性

 前回ご紹介しましたように、男性にとって自分のうちに潜んでいる女性的な要素は、夢の中ではアニマとして現れます。このアニマはさまざまな姿をとるものです。ユングはこのアニマの重要な特徴が、聖なるものと魔的なものが両義的に備わっていることにあると指摘しています。

 これはゲーテの『ファウスト』で語られているような「光の天使として、〈魂の導き手〉としても現れ、最高の意味へと導く」[1]ものです。しかし他方では、「豊かなものを持ちながら満たされていない、意味も法則もない生命」という反対の側面をもち、文明的な男性にとっては「恐怖の的であり、防御の対象である」[2]という側面も兼ね備えているのです。これはマリア像のような崇高なイメージをもつと同時に、破壊する魔女としても現れます。

母親のアニマ

 その代表的なものが「母親」としてのアニマです。この母親はたんに自分の生みの母だけではありません。ユングは多様な母親原型として、「自分の母と祖母、継母と姑、かかわりのあるどこかの女、乳母または保母、女祖先と雪女、高次の比喩的な意味において、女神、とくに神の母、処女(永遠に若い母、たとえばデメトルとコレー)、ソフィア([息子に]恋する母として、時にキュベレー・アッティス型として、あるいは愛人としての娘(永遠に若い母)」[3]などを挙げています。「かかわりのあるどこかの女」であればよいというのでは、夢の中に登場するどんな女性でもアニマとなりうるということになります。

 ここには神話的な女性像も多数含まれていますが、男性にとって自分の母親が、何よりも重要な意味をもつことは明らかです。フロイトの精神分析の理論では、エディプス・コンプレックスで説明するのですが、ユングは個人のコンプレックスでは説明できない広がりと深さが、母親のアニマには存在していると考えるのです。

 フロイトが指摘しているように、男性にとっての最初の愛の「対象選択」が、かつて幼い頃に自分の世話をしてくれた女性とよく似た女性に向けられるということは、かなり普遍的にあるようです。自分では食べ物も手に入れることができなかった時に、自分に食べ物を与えてくれ、身体を世話して不愉快な原因となる排泄物を取り除いてくれたのは、母親やその代理の人物であり、こうした女性が自分の欲望を満たしてくれたという記憶は、男性にとって強い力を発揮するもののようです。

母性の特徴

 しかしユングはこうした母親への愛着とは別のところで、もっと広い意味での「母性」がもつ力に注目するのです。母親原型の代表としての「母性」の特徴として、ユングは次のようなものを挙げています。「女性的なものの不思議な権威。理性とは違う智恵と精神的高さ。慈悲深いもの、保護するもの、支えるもの、成長と豊饒と食物を与えるもの。不思議な変容、再生の場。助けてくれる本能または衝動、秘密の隠されたもの、暗闇、深淵、死者の世界、呑みこみ、誘惑し、毒を盛るもの、恐れをかきたて、逃れられないもの」[4]

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「母親のアニマ」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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