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売られた苦労は身にならない

2015年2月20日(金)

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 埼玉県所沢市の住民投票が話題になっている。

 経緯を振り返っておく。
 所沢市は、航空自衛隊入間基地(狭山、入間両市)に隣接している。場所によっては、学校の上空が自衛隊の航空機の飛行コースにすっぽり入ってしまう。

 そこで、市では、平成18年(2006年)、防衛省の補助金で建設された29小中学校の防音校舎に、暖房設備交換に合わせて計画的に冷房設備を整備する方針を表明し、うち1校については23年までに工事を完了した。

 ところが、平成23年(2011年)10月に就任した藤本正人現市長が、東日本大震災を経験したことを踏まえ、便利さや快適さ指向からの転換をすべきとの理由からエアコン設置の方針を撤回し、計画を白紙に戻す。

 で、その市長の決定から3年余りを経たこの2月15日に、28小中学校の防音校舎へのエアコン設置の是非を問う住民投票が実施された(以上の経緯はこちらから)。

 投票の結果は、「賛成」が5万6921票で、「反対」(3万47票)を上回り、投票総数の64.86%を占めた。
 しかしながら、住民投票の投票率は、31.54%と低迷し、市条例で結果を重視することを定めた「多数票が投票資格者の3分の1以上」という条件には届かなかった。

 この結果を受けて、藤本正人市長は16日の記者会見で、「結果は重く受け止めるが、財政配分も考慮しながら、任期中に慎重に判断したい」と述べ、判断を先送りした(こちら)。

 先に私の個人的な見解を述べておく。

 私は、そもそも、藤本正人市長が、防音校舎へのエアコン設置計画を独断で撤回したことが不当だったというふうに受け止めている。

 なので、投票の結果の如何にかかわらず(住民投票をするまでもなかった。このことについては後述する)すみやかにエアコンの設置工事をすすめるのがスジだと考える。

 と、こう書いてしまえばこの話はおしまいなのだが、当件は、いま書いた「スジ」論とは別の点で、考えさせられるところの多い事案だ。そこで、今回は、このお話を題材に、地方自治や、住民投票や、学校のあり方などについて、自分のアタマの中を整理してみたいと思っている。

 先に結論を述べておきながら、いきなりその結論に逆らうような話をせねばならない。
 実は、個人的な実感としては、私は、小中学校に冷房装置が必須であるとは思っていなかったりする。

 無論、所沢のケースは、二重窓の防音工事をしてある(ということは、防音のため、窓を閉め切って授業をする想定になっている)わけだから、通常のケースとは別に考えなければならない。

 それに、必須であるのかどうかという論点とは別に、議会で一度決まった方針に沿って防音工事が既に済んでいるという経緯、ならびに先述の「スジ論」からしても、この事案に限った話をすれば、やはりどう考えても、計画通りにエアコンを設置するのが正しいと思っている。

 その上で、あくまでも一般論として言うのだが、私は、小中学校へのエアコン設置が常識になっている現状(東京都ではほぼすべての小中学校に冷房設備が導入されている)を不思議に思っている。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「売られた苦労は身にならない」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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