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ヤジよりも遺憾なこと

2015年2月27日(金)

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 安倍晋三首相のヤジは、不適切だった。
 とはいえ、既にご本人が非を認めて遺憾の意を表明している。
 これで一件落着ということになると思う。

「安倍さんが表明したのは遺憾の意であって謝罪ではない。これでは納得できない」

 と息巻いている向きもあるが、一国の首相たる者が「遺憾の意」を表明したことは、やはり重く受けとめるべきだ。なかなかできることではない。

 ついでなので、「遺憾」という言葉について前々から思っていたことを明らかにしておきたい。

 「遺憾」は、不思議な言葉だ。

 いまから17年前の1998年、私は自分のホームページ上に公開していた日記(9月1日記述分)の中で、この「遺憾」という言葉について触れている。以下、引用する。

《ミサイルが飛んできた。
 官房長官のコメントは例によって「極めて遺憾」というものだ。
 奇妙な言葉だ。
 何かこちら側に不始末があった場合も「遺憾」と言うし、逆に相手側に問題があった場合にも「遺憾」が使われる。
 つまり、「遺憾」は、「謝罪」にも「非難」にも使われるわけだ。
 足を踏まれても遺憾、足を踏んでも遺憾。
 何だろう?》

 「遺憾」という言葉がはらんでいる矛盾の様相は、17年後の現在でも、基本的には変わっていない。

 いわゆる「遺憾の意」は、今回の安倍さんのヤジのケースのように、自分の側に何らかの不始末があった場合に、非をある程度認めて、現今の事態を招いてしまったことへの「残念」な気持ちをあらわす言葉として用いられる。

 陳謝、謝罪、お詫びというほど重くないが、一定の責任を認めた言い方だ。
 ここまではわかる。

 不思議なのは、「遺憾の意」という同じ言い回しが、自分の側にではなくて、相手の側に問題があった場合にも同じように用いられていることだ。

 たとえば、北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射したようなケースでは、官房長官あたりが「遺憾の意」を表明して対応するのが通例になっている。

 この場合、「遺憾の意」は、「非難」ほど強力でなく、「不快感」ほど明確でないものの、現状についての「残念」な気持ちを伝えることで、先方に向けて一定量の懸念のニュアンスを伝えている。

 要するに、「遺憾」は、こっちが間違いを犯したケースでも用いられるし、先方に失礼があった場合にも使われているわけで、この言葉はどうやら「非難」と「謝罪」という正反対の場面で使用できる、魔法の外交用語なのである。

 英語では、“regrettable”と言うらしい。
 実に味わい深い言葉だ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「ヤジよりも遺憾なこと」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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