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生き残ることは罪なのか

2015年3月13日(金)

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 東日本大震災から数えて4回目の3月11日を迎えて、自分の中にさしたる感慨が湧いてこないことに当惑している。

 テレビの司会者に、突然コメントを求められたら、たぶん、とても困る。

「4年目の3月11日に、何を感じますか?」
「えーっと……別に……」
「……別に、とは?」
「……いや、ですから、特に何も感じないということです」

 このコメントは、私の評価を落とすことになるだろう。

「なんだこの露骨に他人事みたいな態度は」
「被災地のことなんか知ったことじゃないってことか?」
「要するに冷血なのね、このヒトは」

 そんなわけなので、もし本当に私がテレビに出演していて、司会者なりキャスターなりに水を向けられたら、もう少し心のこもっているらしいコメントをすることになるはずだ。

「4年前のことを考えると、すっかり遠い記憶になってしまったようにも思いますが、まったく変わっていないというふうにも感じます。前を向かないといけませんね」

 この方がずっとマシだ。
 何ひとつ意味のあることを言っていない点では同じだが、少なくとも何かを考えているようには聞こえる。

 いきなり変な話をはじめてしまった。
 それだけ微妙な領域に踏み込むのに困っているということだ。
 こういう時は、正直に自分の気持ちを直視した方が良い。

 私は、当惑している。
 その理由は、震災に関して「それらしいこと」を言わなければならない圧力を感じていて、しかもその圧力に反発を感じているからだ。

 4年目のその日を迎えて、新聞やテレビには、「それらしい」記事や「それらしい」映像が、山ほど配信された。で、私たちが暮らす平和なリビングルームには、「それらしい」言葉やコメントが大量に届けられた。

 それらの「真摯」で「ごもっとも」で「心がこもってるっぽい」コメントのひとつひとつは、もちろん、ウソではないし、ヤラセでもおためごかしでもない。それぞれに真剣で、偽りのない、心からの言葉だったのだと思う。

 ただ、そういう正しくも美しく、あたたかく前向きな言葉が1日中切れ目なく流れてくるのを、朝からずっと受け止め続けていると、その情報を大量処理しているこちらの精神の内部には、それぞれの言葉に対する反応とは別の感情が生まれる。

 具体的に言えば、恥ずかしさに似た気持ちだ。

「わかった」
「勘弁してくれ」
「それぐらいにしといてくれ」
「たのむ」
「オレに汚い言葉を浴びせてくれ」

 震災以来、私たちは、何かを感じなければならないと感じるようになった。
 あるいは、自分が何かを考えているということを人々にわかってもらわないとマズいというふうに考えるようになった。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「生き残ることは罪なのか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長