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なぜボトルキャップでなければならないのか

2015年4月17日(金)

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 世界の子どもにワクチンを届ける目的でペットボトルのキャップを集めている団体があるのだそうだ。名前を「エコキャップ推進協会」という。で、その横浜市に本拠を置くNPO法人が、キャップの売却益を、2013年以降、ワクチンとの交換でなく、別の使途に充てていたことが発覚して、ちょっとした騒ぎになっている。

 寄付目的で集めていた善意(あるいは労力)の結晶を、掲げていた看板とは違う目的のために流用していたわけだから、これは「裏切り」と言えば「裏切り」ではある。
 大勢の人の小さな善意が裏切られたわけだから、怒る人がいるのは当然だ。

 が、最初に個人的な見解を述べておくと、私は、大勢の人々の小さな善意や、それを眺めている人間の憤りには興味がない。
 どうでも良いと思っている。

 ニュースを知って、私が興味を持ったのは、「そもそもどうしてペットボトルのキャップなんかを集めようとしたのか」という点についてだ。

 だって、あまりにも不可解ではないか。
 雲をつかむような話だ。

 この話(大勢の人間が、ペットボトルのキャップを集めることで善意を表現しようとしていたこと)のもたらす薄気味の悪さは、震災以来、私がどうしても拭えずにいる「絆」という流行語のきもちの悪さと、深いところでつながっている。

 今回は、この話をする。
 私たちはどうして瑣末なものを集めて善意の城壁を築こうとするのだろうか。

 慈善なら慈善で、もっと効率の良い方法があったはずだ。
 単純な話、お金を集めるのが一番手っ取り早い。
 現金は、多様な経路を通じて簡単に集めることができる最も優秀な慈善ツールだ。配送にも集積にも一切手間がかからない。なにより、すべてが明朗になる。

 出資元も寄付先も明瞭なら、その金額や集金の経路についても一点の曇りなく透明化できる。
 しかも、寄付を送る者と、受け取る者の間に、余計な人員が要らない。

 引き比べて、ブツを媒介した寄付では、あらゆる段階でいちいち個別的な作業が発生する。
 まして相手はペットボトルのキャップだ。
 すなわち基本は「ゴミ」だ。
 当然のことながら、カサ(物理量)のわりに経済価値が低い。
 ということはつまり、それを扱う作業は、賽の河原の石積みに似た過程に帰着する。

 たとえばの話、100平米の倉庫に山積みにしたペットボトルのキャップが最終的に何十万円かになるのだとして、価格がどうであれ、カサのあるものは積んでおくだけで倉庫代がかさむことになっている。たぶん半年も経たずに、ブツの価値より高い倉庫代を支払うことになる。

 運べば輸送費がかかるし、選別や集積にもいちいち労力が要る。
 これが現金の100万円だったら、どこに積んでおいても倉庫負担はゼロだし、配送にも集計にもまったくコストが発生しない。

 なのにどうしてわざわざキャップなんかを集めるのだろうか。
 答えを考える前に、よく似た事例を検討してみよう。

コメント106

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「なぜボトルキャップでなければならないのか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官