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“都”の前には“未知”がある

2015年5月15日(金)

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 大阪市をなくして特別区を設ける、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う住民投票がこの週末(5月17日)に実施される。

 冒頭で明らかにしておくが、私は、今回の住民投票を「大阪都構想住民投票」と表記する記事の書き方に、ずっと以前から違和感を覚えている。

 堺市長選に敗北し、2014年1月の法定協議会で、賛成の決議を得ることができなかったことによって、事実上暗礁に乗り上げた形になっている「大阪都構想」の名前が、いまさらのように持ち出されることに、納得が行かないのだ。

 もっとも、記事の本文をよく読むと、どの新聞記事も、このたびの住民投票が大阪市を「廃止」「解体」することへの賛否を問うものである旨を説明している。最後まで記事を読めば、誤解する余地はないのだろう。

 が、見出しだけを取り上げると、各社とも「大阪都構想住民投票」という文言を使っている。

 投票に赴く市民が、記事の本文を最後まで読む人間で占められているのなら問題は無いのだが、おそらくそういうことにはならない。市民の中には見出ししか読まない層が、必ずや一定数含まれている。と、その人たちは、「大阪都構想」への賛否を投票することになる。
 これは、まずいのではなかろうか。

 新聞やテレビ、ウェブを含めたメディアが「大阪都構想」という文言を見出しに使いたがる理由は、「大阪市を無くして特別区を設けることについての住民投票」という実態に即した表記が、見出しの言葉として冗長に過ぎるからなのだろう。

 引き比べて「大阪都構想」は、これまで数年間、事ある毎に繰り返し見出しの中に登場した馴染み深い用語で、読者の認知度も高い。シンプルさとわかりやすさが見出しの生命である点を考えれば、この言葉を使って見出しを打つことが、読者にアピールする上で最も効果的だと考えた編集部の判断は理解できる。

 が、「大阪都構想住民投票」というこのヘッドラインは、住民投票の内容を正確に反映していない。なんとなれば、大阪市を無くして特別区を設けたからといって、「大阪都」という自治体ができるかどうかは、今回の住民投票の結果からは、未知の領域だからだ。

 スクラップ・アンド・ビルドの計画の先に「大阪都」を作るという構想が存在しているのは事実だ。しかしながら、今回の住民投票で決定されるのは、スクラップの部分(つまり「政令指定都市としての大阪市を廃止する」ということ)に限られている。その後に続くはずの「大阪都」の実現は、周辺諸都市や国との調整を考えれば、困難だと言わざるを得ない。

 であれば、正確を期して「大阪市を無くして特別区を設けるための住民投票」と書くか、でなければ「大阪市廃止に関する住民投票」なり「大阪市解体住民投票」なり、より実態に近い見出しを案出するべきだったと思う。

 この原稿で、私は、大阪都構想ないしは大阪市解体について本格的な分析をしようとは思っていない。
 賛否について、個人的な主張を展開する気持ちも持っていない。

 分析なり批評については、もともと私の力量に余る仕事だし、個人的な賛否に関して言うなら、余計なお世話だと思うからだ。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「“都”の前には“未知”がある」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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