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アナリスト残酷物語――人気ランキングに振り回された10年

2006年5月2日(火)

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 証券アナリストにとって、春は“ソワソワ”の季節である。毎年、3月末から4月にかけて、インスティテューショナル・インベスター(I.I)誌や日経金融新聞によるアナリストランキングが発表されるからだ。

 日経金融新聞でランキング1位になると、発表の1~2週間前に原稿依頼が来る。I.I誌の記者からはインタビューの問い合わせが来る。苦労に苦労を重ねた末に、トップの座を勝ち得た者でなければ、あの体の芯から沸き上がってくるような喜びを理解することはできないだろう。

栄光、祝福、昇給とヘッドハンティング

 アナリストがアナリストランキングで1位になることの意味は、それが名誉であるというだけではない。アナリスト/投資家向けの会社説明会の席では、企業の役員やIR(投資家向け広報)担当者、顧客である機関投資家が近寄ってきて祝福してくれる。

 説明会のQ&Aセッションで手を挙げれば、ほかのアナリストよりも優先的に指名されるように思う。講演や原稿執筆の依頼も増える。もちろん、所属する証券会社に対する投資家からの評価も上がり、会社の業績にも貢献できる。

 当然、給料や賞与、昇進に反映される。ランキングでトップを獲得したのに明らかに不遇の扱いを受けているような場合には、ヘッドハンティングの話が舞い込んでくる。

 逆に、1位から転落してしまった時の悔しさ、失意、不安というものも経験者でなければ分かるまい。私の場合、体調を崩して寝込んでしまったことがあるほどだ。自分を取り巻くすべてがネガティブに回ってきて、ひどい場合には会社からリストラされてしまうこともある。

 今年のアナリストランキングでは、私が昨年1位だった産業用エレクトロニクス(総合電機、半導体)を含めたいくつかのセクターで順位が入れ替わった。世代交代も起こっているようだ。

 私はアナリストを引退し、機関投資家の側に回った立場なので、もはやこのランキングに掲載される資格はない。しかし、この10年間、激戦区と言われた産業用エレクトロニクスのセクターで奮闘努力して上位(10回中1位5回、平均2位)を維持してきた者として、アナリストの役割とは何だったのか、株式市場と日本企業はどう移り変わってきたのかを冷静に振り返ってみることは有益だと思う。

減益予想、売り判断などもってのほか

 新聞や雑誌でアナリストと称する人間を見かけることは多いし、一般にもアナリストという言葉は十分に浸透している。しかし、その正確な定義や舞台裏を知っている方は意外と少ないのではないだろうか。

 私が、最初に入社してアナリスト部隊に加わった頃は、エコノミストという呼称は普通に使われていたがアナリストという言葉はまだ定着していなかった。社内ではアナリスト職を「研究員」と称していて、まだアナリストランキングというものもなかったし、日系証券会社の研究員の仕事は担当している産業や企業の分析、市場予想や業績予測であって、投資判断にまでは踏み込んでいなかった。

 それに業績予想といっても、会社側が示す予想と大した違いはなかった。会社側が増益予想なのに、我々“研究員”が減益予想を打つことなどタブーであり、その不文律を犯せば担当会社や法人部門から圧力をかけられるのが当然だった。

 ましてや、主幹事を務める企業の投資判断を「売り」にすることなどできるはずもない時代だった。研究員というのは学術論文めいたリポートを書くことというくらいの位置づけであって、ほとんど株式部が書いたシナリオに沿って通称「アジビラ」と呼んでいた補足資料を作成することがせいぜいだったような気もする。

 変化が起こったのはバブル崩壊の前後だったように思う。「日本経済新聞社がアナリストランキングというものを始めるらしい」と調査部が大騒ぎになったのだ。

 米国では既にI.I誌がランキングを実施していたが日本では全く初めての試みであり、どのように対処したらいいのか見当もつかなかった。第1回の日経ランキングでは、現在のように、セクター別に分けておらず、いろんな業種のアナリストが、いわば全国区で評価されていた。

 結果は、野村勢の圧勝。調査部では、「現状のままでいいのだ」という安堵感が広がったのを覚えている。

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