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【第6回】日本版SOX法とは?

2006年5月15日(月)

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前回の【第5回】では日本版SOX法について解説し、また日清オイリオグループにおける内部統制構築への取り組みについて紹介した。今回は、コマツ及びTDKの取り組み方についてみてみよう。

コマツ

団塊世代のノウハウを文書で残す

コマツの国内事業所を担当した内部統制構築グループのメンバー
コマツの国内事業所を担当した内部統制構築グループのメンバー

 これまで“日本版SOX法”に備えて内部統制を構築し始めた日本企業の取り組みを見てきた。これらの企業のさらに先を行き、既に内部統制の構築を終えつつある企業がある。米ニューヨーク証券取引所(NYSE)や米ナスダック市場などに上場している日本企業だ。

 2002年7月に成立した米SOX法は2006年7月15日以降の決算から米国外の企業にも適用されていく。米国で上場する日本企業は2006年度から同法に対応した内部統制の運営を始めなければならない。

 NYSEに上場するコマツもその1社だ。同社では1年前に文書化をほぼ済ませ、今年3月には内部統制の運用のテストを終了。4月から正式に運用を開始する。

 「2007年には団塊の世代が大量に退職する。その前に内部統制を整備することで、彼らが持つノウハウを次の世代に伝える仕組みまで作り上げることができた」。約2年にわたって内部統制の構築に携わってきたコマツの森本誠経理部長はこう胸をなで下ろす。

 ノウハウを伝達する仕組みまで作ることができたのは、従来はいわゆる“暗黙知”として記録に残されることがなかったノウハウを文書化したから。財務報告の適正性を確保する目的で始めた内部統制の構築が、予期せぬ副産物をもたらしたわけだ。

日米欧でそれぞれ構築

 もっとも、コマツにおける内部統制構築の道のりは決して平坦ではなかった。同社で内部統制を構築するプロジェクトが始まったのは2004年4月のこと。2003年12月に米国で同社の会計監査をしているKPMGから坂根正弘社長兼CEO(最高経営責任者)の元に「CEOやCFO(最高財務責任者)が財務報告にサインして虚偽や不正があった場合には罰則を科される。SOX法に対応して内部統制を構築することが急務だ」という報告がもたらされた。これを受けて急きょ本社の経理部に内部統制構築グループを立ち上げた。

 森本部長は当時の様子をこう振り返る。「2004年1月末まで米国に赴任していたので、SOX法についてはよく知っているだろうと周囲からは言われた。しかし実際にはそんなことは全くなかった。会計監査法人にもまだ詳しい人はいなかったので、SOX法に関する書籍を読んで勉強することから始めた」。

 内部統制構築グループが発足した当初の専任スタッフはわずか2人。これには理由が2つあった。第1に内部統制の重要性についての認識が当時はまだ不足していて、経理部の1プロジェクトという位置づけだった。

 第2にコマツは業績不振から2002年にグループ全体で約2500人を削減していた。「営業や情報システムの部門からも専任スタッフを出してくれるよう交渉したが、どの部署も人手が不足していて余裕がなく、実現しなかった」と森本部長は言う。

 ところが、SOX法や米国企業の対応について調べていくうちに、同法に対応した内部統制を構築する難しさが次第に分かってきた。特に連結決算の対象である子会社でも内部統制を構築しなければならない点が難題だった。コマツの場合、対象の子会社は国内で30社、国外で20社余りに上る。

 「内部統制の構築を始めた時点では、2005年度の決算から適用される予定だった。たった1年で子会社を含めて内部統制を構築しなければならず、時間が足りなかった」(森本部長)

 そこで日本とは別に米国や欧州にも専任スタッフを置き、3つの拠点のそれぞれで内部統制の構築を進めることにした。その結果、社外のアドバイザーの顔ぶれも3つの拠点で異なった。日本はあずさ監査法人とリスク・コンサルティング会社のプロティビティ ジャパン、米国は米プロティビティ、欧州はKPMGといった具合だ。

 日本本社とあずさ監査法人が方向を示したほか、プロティビティの『SarbOX Portal』という文書化の支援ソフトウエアを共通して使うことで最低限の標準化を図った。「それでも途中で適用期限が1年延期されなければ、内部統制を整備するのは難しかっただろう」と森本部長は打ち明ける。

「性悪説」に現場から猛反発

 森本部長が率いる内部統制構築グループは国内における内部統制の構築に集中すればよくなった。それでも一筋縄ではいかなかった。SOX法が求める内部統制を構築するためには、「人間は不正を犯すもの」という“性悪説”に立つ必要がある。そうした観点から財務報告の誤りや不正につながるリスクを洗い出し、対策を考えていかなければならない。

 文書化の作業を始めると、国内の各部署や子会社からは「なぜそこまでしなければならないのか」という疑問の声が相次いだ。そこで内部統制構築グループは、各部署や子会社でリスクを特定して対策を考えるリーダーである「プロセスオーナー」を集めて研修を行ったり、社内のイントラネットに内部統制を構築する取り組みを紹介する連載記事を掲載したりした。

社内のイントラネットで連載した内部統制構築の紹介記事

 これらの工夫に加えて、グループのメンバーが現場に足しげく通い、同じ説明を何度も繰り返した。こうした地道な努力を積み重ねた結果、「徐々に協力を得られるようになった」(同社経理部内部統制構築グループの齋藤美津弘主査)という。

 「従来は口に出さなくても了解し合っていたノウハウを社員が文書にするのは難しく、そこは社外のアドバイザーに代行してもらった」(齋藤主査)

 コマツがグループ全体で特定した業務のリスクは1万件余り。社外のアドバイザーや文書化の支援ソフトへの出費だけで10億円を超えた。それでも社員が自分の業務を再点検し、さらに暗黙知化していたノウハウを文書化して社内で共有できるようにした効果は大きいと森本部長たちは見ている。

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「【第6回】日本版SOX法とは?」の著者

中野目 純一

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス副編集長

2012年4月から日経ビジネス副編集長。マネジメント分野を担当し、国内外の経営者、クリステンセン、ポーター、プラハラードら経営学の泰斗のインタビューを多数手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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