「寺山正一の「新・産業夜話」」

日本代表に捲土重来を期待

人はなぜワールドカップを愛し、村上ファンドを嫌うのか

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2006年6月14日(水)

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 日本代表のワールドカップ初戦は残念ながらオーストラリアに逆転を喫し、黒星スタートとなった。後がないクロアチア戦では捲土重来を期待したい。

 スポーツの原点が古代の戦争にあることは改めて指摘するまでもないだろう。ルールの制約の中で、見る人の印象や裁定を抜きに、単純な点数の結果だけを競い合う。「市場原理」などと難しい定義を持ち出さなくても、強いものが勝つのだし、言い換えれば勝ったものが強い。その魅力が国境を越えて世界中のファンを惹きつける。

 だとしたら人はなぜこれだけサッカーに熱中し、同じ「ルールの中で結果を競っていた」はずの村上ファンドを嫌うのか。インサイダー取引というルール違反の疑惑が明らかになる以前から、村上ファンドに対する嫌悪感は強まっていたように映る。

 村上世彰氏本人が会見で語っていたように、「稼ぎすぎたことに対する世間の嫉妬」があったのは否めないにしても、それだけではどうも腑に落ちない気がしてならぬ。

市場原理と愛国心がキーワード

 今年のワールドカップを観戦しているうちに、自分の中で理由の一端が浮き彫りになってきた。それは「市場原理と愛国心、ないしは郷土愛」という、一見すると相矛盾する2つの要素がどう作用しているか、その方向性の違いにほかならない。

 平たく言えば、市場原理と愛国心(郷土愛)をうまく連動させたワールドカップはファンの心をつかみ、市場原理と愛国心を敵対させてしまった村上ファンドが総すかんを食った。そう位置づけられるのではなかろうか。

 きっかけは人口130万人というトリニダードトバゴをはじめ、初出場国や経済的には小国に分類されるチームの善戦である。

 スウェーデンと引き分けたトリニダードトバゴなど、ほとんどのチームで欧州のリーグで鍛えられたスタープレーヤーが主力となっている。高い報酬を求めて欧州のプロリーグに参加しているプレーヤーが、ワールドカップの際は母国のナショナルチームに馳せ参じ、本場の熾烈な競争で磨き抜いた技を国家の代表として披露する。

 欧州が剥き出しの市場原理で世界中からサッカーの才能あるプレーヤーをかき集めているにもかかわらず、世界のファンがそれを受け入れているのは、市場原理と愛国心のバランスを確保していくうえで、4年に1度のワールドカップが格好の舞台となっているからではなかろうか。

 その点、「日本市場の閉鎖性を打破する」錦の御旗を掲げ、「株主価値を高める経営」を実現しようと試みた(少なくとも村上氏はそう主張していた)村上ファンドはどこが違ったのか。元通産官僚の村上氏が語る「日本のため」という大義名分には、最初から実態が伴っていなかったのだろうか。

 あくまでも筆者の個人的な感想だが、20年前には「大経営者たるもの株価など全く気にする必要はない」との空気が蔓延していた日本の企業社会に対し、多少なりとも改革の機運を巻き起こした村上氏の功績は、たとえ条件付きにせよ、正当に評価していいのではないかと思っている。

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著者プロフィール

寺山 正一(てらやま しょういち)

日経ビジネス在籍18年目の最古参記者が、自らの目と耳で見て感じたデジタル時代の経営を考える。もとよりディープインパクトのような「駿馬」とはほど遠く、とぼとぼ歩く「驢馬」のような筆者だけに、「やわ(夜話)」なお話が混ざってもご容赦願いたい。

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