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不正の「兆し」をキャッチせよ

コンプライアンスとガバナンスを考えるヒント

2006年7月14日(金)

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 「アルケミスト」という小説がある。パウロ・コエーリョというブラジルの作家の手になるもので、羊飼いの少年が、大いなる旅を通じて精神的な成長を遂げていく一種のビルドゥングスロマン(成長譚)だ。自分の成長と周囲の世界との関わりを考えさせてくれる素敵な小説なので、いろいろと悩んでいる後輩には、気分転換も兼ねて読んでみろ、と推薦することが多い。

 「アルケミスト」には様々なテーマが隠されているが、その1つが「前兆」「兆し」といったものに敏感であれ、というものだ。

 先が見えない不安の中では、人はともすれば立ちすくみ、リスクを取らずに現状に安住しようとする。主人公の少年は、進むべき方向を指し示してくれる「前兆」を見つけ出し、それに背中を押されることで、次なる旅に乗り出していく。ほのかな「兆し」を感知することで、不安感に打ち勝ち、取るべきリスクを取ることができるのだ。

 当然ながら、「兆し」は将来を完全に読み解く水晶玉ではないので、新たな旅も予測し得なかった困難に満ちている。しかし、一歩先に進んだことで、新たな学びと成長があり、少しずつでも最終目標に近づいていく。「兆し」を無視して同じ場所にとどまっていては、決して成し得なかったことだ。「アルケミスト」に描かれた世界では、「兆し」(より正確には、その感知能力)は、人の成長の原動力として、ポジティブかつ不可欠な役割を果たしている。

浮かび上がってきた「CEOの不正」

 さて、ライブドア事件をきっかけに経営者の不正をどう防ぐか、という議論が盛んだ。

 これまで日本では、企業の法律・ルール遵守(コンプライアンス)について、主として従業員の不正を防止するにはどのような仕組みを作るべきか、という議論がなされてきた。それに対して、今回のライブドア事件では、トップ経営者が暴走することを防ぐ仕組み(ガバナンス)の必要性が浮き彫りにされたと言えよう。

 実力CEO(最高経営責任者)が、企業価値極大化を求めて、様々な手を考え実行していく時、社内でブレーキをかけるのは極めて難しい。海外でも、エンロンの例に代表されるように、市場全体の信用を失墜させるような不正は、結果としてトップ経営者自身が引き起こしていることが多い。コンプライアンスとガバナンスを掛け算で考えることで、実効性のある不正防止が可能となると考えられているのは、このためだ。

不正企業の共通点とは

 ボストン・コンサルティング・グループでは、米国で、経営者が不正行為を行った企業と、同業種・同規模の代表的企業とを比較調査したことがある。調査結果の概要は、新聞紙上等でも紹介しているので、ご覧になった方も多いかもしれない。調査結果の中で興味深いのは、不正企業の多くに共通する特徴が存在するということだ。

 具体的には、まず次のような3つの共通点がある。

(1)常識破りの高い成長目標を掲げている
(2)CEOが、メディアをはじめ、社内外でスーパースター扱いされている
(3)CEOの報酬が、業績や株価に連動した巨額のものである

 高い目標を掲げ、それを達成する。そうすると、株主やメディア、そして社内からは、「あの人はただものではない」という評価を得るようになる。相当自己抑制の効いたトップであっても、自分の能力を過信してしまいがちな状況だ。周囲からカリスマ視され、その状況を永続的にすべく、より大きな成功を求めて、ありとあらゆる手を打とうとする。結果が出れば、カリスマとしての社会的喝采に加えて、巨額の報酬も得られる。

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「不正の「兆し」をキャッチせよ」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官