このところ自動車業界の話題は、米ゼネラル・モーターズ(GM)と日産自動車・仏ルノー連合の提携の行方がどうなるかに集中している。結論から申し上げると、この組み合わせはメリットが少ない。
提携を画策した米著名投資家カーク・カーコリアン氏や彼が雇っているジェローム・ヨーク氏(GM取締役)は、あまりにも強引な手法に走って、墓穴を掘ったのではないだろうか。また、その話に乗った日産・ルノー連合のカルロス・ゴーン社長も今回ばかりは読みが甘かったように思える。
最初はゴーン氏の招聘を画策したヨーク氏
この話はもともと今春、ヨーク氏とゴーン氏がロンドンで会ったところから始まる。ヨーク氏はGMのリチャード・ワゴナー会長が進めるリストラクチャリングのスピードが遅いことに苛立っていた。
「このままではGM株が紙くず同然になってしまう」。そう焦ったヨーク氏はゴーン氏に「GMに来てくれないか」と声をかけた。かねてワゴナー氏のリーダーシップに疑問を抱いていたヨーク氏にとって、瀕死の日産を蘇らせたゴーン氏はうってつけの人物だったと言える。
移籍の打診に対し、ゴーン氏は既に日産とルノーの社長を兼任していることから、難しいと告げた。ヨーク氏はそこで今度は提携を持ちかけたと見られる。その時、ゴーン氏は返事を保留した。しかし、再び6月にカーコリアン氏も交えて3人で日産のオフィスがあるテネシー州ナッシュビル市で会った時には、ゴーン氏はかなり乗り気になっていた模様だ。
しかし、ヨーク氏らの手法はあまりにも強引過ぎた。提携を巡ってゴーン氏と独断で面会し、しかも、GMと日産・ルノー側にそれぞれ出した書簡を米証券取引委員会(SEC)に届け出るというのは、いくら何でもルールを無視している。私は必ずしもワゴナー会長寄りの立場を取っていないが、今回ばかりはワゴナー氏に同情する。
結局、ヨーク氏は多くの取締役の反感を買い、7月7日に開いた取締役会では、今後とも日産・ルノーとの提携交渉は、ワゴナー会長がリード役となって取り組むことが決まった。GMは一応、筋を通すために今後とも提携交渉を続けるが、ワゴナー氏がリード役となった以上、それほど踏み込んだ提携になるとは思えない。
単なる規模拡大では競争力は向上しない
そもそもこの組み合わせは、相乗効果が見当たらない。規模を大きくすれば、競争力が向上するというのは1990年代までの古い考え方だ。そこにはコストダウンの発想しかない。トヨタ自動車が好調なのは、カンバン方式を導入しているからでも、新日本製鉄の鉄板を使っているからでもない。顧客にとって魅力的なクルマを作っているからだ。GMと日産・ルノーが提携しても、魅力的なクルマができるというイメージがわいてこない。
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1934年生まれ。56年伊藤忠アメリカ入社。93年伊藤忠商事副社長。2002年3月に伊藤忠商事退社後、J・W・チャイ・コンサルタンシーを設立し社長に。ビッグプロジェクトの仕掛け人として知られる。いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の提携(1971年)をはじめ、トヨタ・GM提携(84年)、イトーヨーカ堂の米サウスランド(セブン―イレブンの元親会社)買収(91年)、伊藤忠、東芝の米タイム・ワーナーへの資本参加(92年)などの国際提携を演出してきた。韓国系米国人で日本在住経験もあることから、世界経済の潮流について複眼的な視点を持つ。米コネチカット州在住で、妻は自動車評論家・アナリストとして著名なマリアン・ケラー氏







