「J・W・チャイ「コスモポリタンの眼」」

間違いだらけのGM・日産・ルノー提携

ゴーン氏を過大評価していないか

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2006年7月13日(木)

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 このところ自動車業界の話題は、米ゼネラル・モーターズ(GM)と日産自動車・仏ルノー連合の提携の行方がどうなるかに集中している。結論から申し上げると、この組み合わせはメリットが少ない。

 提携を画策した米著名投資家カーク・カーコリアン氏や彼が雇っているジェローム・ヨーク氏(GM取締役)は、あまりにも強引な手法に走って、墓穴を掘ったのではないだろうか。また、その話に乗った日産・ルノー連合のカルロス・ゴーン社長も今回ばかりは読みが甘かったように思える。

最初はゴーン氏の招聘を画策したヨーク氏

 この話はもともと今春、ヨーク氏とゴーン氏がロンドンで会ったところから始まる。ヨーク氏はGMのリチャード・ワゴナー会長が進めるリストラクチャリングのスピードが遅いことに苛立っていた。

 「このままではGM株が紙くず同然になってしまう」。そう焦ったヨーク氏はゴーン氏に「GMに来てくれないか」と声をかけた。かねてワゴナー氏のリーダーシップに疑問を抱いていたヨーク氏にとって、瀕死の日産を蘇らせたゴーン氏はうってつけの人物だったと言える。

 移籍の打診に対し、ゴーン氏は既に日産とルノーの社長を兼任していることから、難しいと告げた。ヨーク氏はそこで今度は提携を持ちかけたと見られる。その時、ゴーン氏は返事を保留した。しかし、再び6月にカーコリアン氏も交えて3人で日産のオフィスがあるテネシー州ナッシュビル市で会った時には、ゴーン氏はかなり乗り気になっていた模様だ。

 しかし、ヨーク氏らの手法はあまりにも強引過ぎた。提携を巡ってゴーン氏と独断で面会し、しかも、GMと日産・ルノー側にそれぞれ出した書簡を米証券取引委員会(SEC)に届け出るというのは、いくら何でもルールを無視している。私は必ずしもワゴナー会長寄りの立場を取っていないが、今回ばかりはワゴナー氏に同情する。

 結局、ヨーク氏は多くの取締役の反感を買い、7月7日に開いた取締役会では、今後とも日産・ルノーとの提携交渉は、ワゴナー会長がリード役となって取り組むことが決まった。GMは一応、筋を通すために今後とも提携交渉を続けるが、ワゴナー氏がリード役となった以上、それほど踏み込んだ提携になるとは思えない。

単なる規模拡大では競争力は向上しない

 そもそもこの組み合わせは、相乗効果が見当たらない。規模を大きくすれば、競争力が向上するというのは1990年代までの古い考え方だ。そこにはコストダウンの発想しかない。トヨタ自動車が好調なのは、カンバン方式を導入しているからでも、新日本製鉄の鉄板を使っているからでもない。顧客にとって魅力的なクルマを作っているからだ。GMと日産・ルノーが提携しても、魅力的なクルマができるというイメージがわいてこない。

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著者プロフィール

ジェイ・W・チャイ
(Jay・W・Chai)
J・W・チャイ
・コンサルタンシー社長

ジェイ・W・チャイ( 1934年生まれ。56年伊藤忠アメリカ入社。93年伊藤忠商事副社長。2002年3月に伊藤忠商事退社後、J・W・チャイ・コンサルタンシーを設立し社長に。ビッグプロジェクトの仕掛け人として知られる。いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の提携(1971年)をはじめ、トヨタ・GM提携(84年)、イトーヨーカ堂の米サウスランド(セブン―イレブンの元親会社)買収(91年)、伊藤忠、東芝の米タイム・ワーナーへの資本参加(92年)などの国際提携を演出してきた。韓国系米国人で日本在住経験もあることから、世界経済の潮流について複眼的な視点を持つ。米コネチカット州在住で、妻は自動車評論家・アナリストとして著名なマリアン・ケラー氏
(写真 村田 和聡)



このコラムについて

J・W・チャイ「コスモポリタンの眼」

トヨタ・GMの提携や、イトーヨーカ堂の米サウスランド買収など新聞の一面を飾るような数々の国際提携を演出してきた筆者。世界経済や企業経営に関するホットな話題を、日本では語られていない裏話も交えながら、独自の視点で斬る。

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