今年11月の米国の中間選挙。争点となるのは、「経済」「イラク」「ヘルスケア」、そして「移民」だろう。とりわけ移民問題は米国民の本音と建前が複雑に入り組んでいるため、日本人には分かりにくいかもしれない。この問題は、避妊の是非を巡る議論と同じように世論が二分され、解決の糸口を見いだすのが非常にやっかいになっている。
移民の問題は大きく4つに分かれる。1つは中南米からやってくるヒスパニック系の不法移民。2つめは911(米同時多発テロ)以降、厳しくなった特にアラブ系民族に対する入国審査。3つめは中国系、インド系、韓国系などの優秀な人材が母国に帰る頭脳流出。4つめが単一民族と多民族のいずれを目指すべきかという国家像の問題である。
米国の不法移民は2000万人近くいるという説も
このうち最も頭が痛いのは、1つめの不法移民だろう。不法移民の数が急増を続ける中、米国では今、移民法の改正を巡って激しい論議が繰り広げられている。現在、米国には1200万人の不法移民がいると言われているが、そもそも「不法」なのだから、誰も厳密に数えたことはない。実際は1200万人どころではなく、2000万人はいるのではないかという説もある。そうなると、米国の人口はもうすぐ3億人になると言われているが、実際にはとっくに3億人を超えていることになる。
この不法移民に「正式に市民権を与えよ」とメキシコ政府が要求しており、どう対処すべきか賛否が分かれている。ブッシュ大統領は不法移民の取り締まりを強化する一方で、外国からの出稼ぎ労働者に対し期間限定の労働許可を与える制度の導入を提唱している。
これに対して、下院は大統領の提案を無視し、不法移民の締め出しに的を絞った移民法改革法案を可決した。一方、上院では法案の調整が難航し、可決には至っていない。
米国民も移民人口の増加が米国経済を支える大きな原動力になっていることは分かっている。テキサス、アリゾナ、カリフォルニアなど、メキシコ国境に近い州の農業やサービス産業はもはやヒスパニック系移民無しでは成り立たない。年金や健康保険を持たずに、レストラン、建設業、清掃業務などに従事する彼らは、米国経済を底辺で支えている。
医療費、教育費の負担は重い
ただ、理屈では分かっていても、本音では彼らを煙たく思っている人は多い。人種別の犯罪率を見ると、黒人やヒスパニックの割合は高く、治安を悪化させている。また、医療現場でも深刻な問題が起きている。保険を持たない不法移民は通常、病気や怪我をしても病院には行かない。
しかし、どうしても我慢できない時には、病院のER(救急救命病棟)に駆け込む。ところが、彼らは治療代を支払ってくれないため、病院経営が圧迫されている。また、ERが混雑して診療の質が下がるという問題も起きている。
さらに教育コストの負担も重い。米国では不法移民も含め、高校相当卒業までは公教育を受ける権利を保障している。米国の学校には、英語の不自由な外国人を集めて英語の特別レッスンを施す仕組みがある。
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1934年生まれ。56年伊藤忠アメリカ入社。93年伊藤忠商事副社長。2002年3月に伊藤忠商事退社後、J・W・チャイ・コンサルタンシーを設立し社長に。ビッグプロジェクトの仕掛け人として知られる。いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の提携(1971年)をはじめ、トヨタ・GM提携(84年)、イトーヨーカ堂の米サウスランド(セブン―イレブンの元親会社)買収(91年)、伊藤忠、東芝の米タイム・ワーナーへの資本参加(92年)などの国際提携を演出してきた。韓国系米国人で日本在住経験もあることから、世界経済の潮流について複眼的な視点を持つ。米コネチカット州在住で、妻は自動車評論家・アナリストとして著名なマリアン・ケラー氏

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