「伊藤雅俊の「『ひらがなで考える商い』のこころ」」

「前年対比」で考える恐ろしさ

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2006年7月24日(月)

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 商人にとって大切なのは、基本を確実に実行すると同時に、お客様の変化に適切に対応することです。お客様は変化し続けます。だから小売業も、永遠に変化し続けなければなりません。すべての仕事に言えることかもしれませんが、商売に完成形はないのです。

 次から次へと課題が生まれ、終わることのない挑戦を繰り返すのが、商人の仕事です。それは大変難しいことではありますが、商人の生き甲斐であり、喜びでもあります。

 昨日と今日、その間にお客様は変化しているのでしょうか。していると考えるべきでしょう。10年前と今年で比べれば、お客様は明らかに変化しています。去年と今年で見ても、変化しているのはわかります。昨日と今日では目に見えにくいのですが、毎日変化し続けていると考えなければなりません。

「前年対比」は、去年売れたものを売る発想

 ある日、それが見えてきます。ぼんやりしていると気がつかなくても、目をこらしている人には見えてくるときがあります。早く気づいて、売り場を変えたり、品揃えを変えたり、先に対応した店が売れ行きを伸ばすことができます。そういうものではないでしょうか。

 ところが、人間の習慣とは恐ろしいもので、コンピューターの活用により、データの収集能力は昔と比較にならないくらい高まっているのに、使いこなすべき人間は前年対比の考え方がなかなか抜けません。去年この商品が売れたからという理由で、同じ品揃えをします。あるいは同じ売り方をします。それでは変化に対応できません。

 ましてや5年前と同じ品揃えでは、お客様はその店に魅力を感じてくれません。商品のライフサイクル(売れる期間)は年々、短くなっています。しかも、変化の幅が大きくなってきています。ある商品の売り上げは去年の半分になり、別の商品は倍になるといった現象が起こります。

商品からではなく、暮らしから

 今は非常に変化の早い時代ですから、極端な言い方をすれば、変化している部分の商品しか売れないことになります。変化に気づくのが遅れたら、店には売れない商品ばかりが並んでいる事態になりかねないのです。ある局面では、過去の商法にこだわらず、勇気を持って一気に変えることも必要になってきます。

 商人はつい、商品からものごとを見てしまいがちですが、これは正しい見方ではありません。あくまでもお客様の暮らしの変化から商品を考えることが肝要です。そうでないと大きな間違いを犯します。

 お客様の暮らしの変化から仕事を考えるとは、どういうことでしょうか。

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著者プロフィール

伊藤 雅俊(いとう・まさとし)

伊藤 雅俊

1924年東京生まれ。1944年、横浜市立商業専門学校(現・横浜市立大学)を卒業。1956年、羊華堂社長。1958年株式会社ヨーカ堂を設立。イトーヨーカ堂、セブン−イレブン、デニーズなど日本有数のグループを育てる。セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。著書に『新装版 商いの道』(PHP研究所)、『商いの心くばり』(講談社文庫)、『伊藤雅俊の商いの心』(日本経済新聞社)ほか。(写真:都築 雅人)



このコラムについて

伊藤雅俊の「『ひらがなで考える商い』のこころ」

この記事は、伊藤雅俊氏が語りおろした『ひらがなで考える商い(上・下)』(伊藤雅俊著・日経BP社刊)を、Web向けに再構成したものです。原文をお読みになりたい方は、書籍の形でご購入になれます。>こちらからどうぞ

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