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感謝の心配りと伝統、地場
3本の矢で後発の不利を覆す

成長企業に学ぶブランド構築法
ケース【1】椒房庵

  • 真弓 重孝

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2006年7月31日(月)

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 かつて炭鉱町として栄えた福岡県久山町は、のどかな田園風景が残る住宅地だ。博多駅からクルマで30~40分ほども離れ、これといった名所があるわけではないこの場所に、地元客をはじめとして客足の絶えない店がある。

 博多名産の「辛子明太子」を主に製造・販売する椒房庵(福岡県久山町、河邉哲司社長)が2000年にオープンした唯一の直営店、久山本店だ。販売しているのは、辛子明太子のほか醤油、「キャベツのうまたれ」など地場の特産品が中心で、とりたてて珍しい商品があるわけではない。値段も決して手頃とは言えない。辛子明太子の価格は、100g当たり1000円を超える。

 だが、販売は堅調だ。久山本店の2006年6月期の売り上げは3億円と、前期より3000万円の増加となる見込みだ。久山本店に顧客が引き寄せられるのはなぜか。その理由の一端が、店のスタッフの姿に表れている。

見えなくなるまでやめない

 買い物を終えて客が店を出ると、スタッフは玄関で一度挨拶し、すぐに駐車場の出口まで歩いていく。立地上、久山本店の買い物客のほとんどは、自家用車などで訪ねてくる。買い物を終えた客がクルマに乗り込み駐車場から公道に出ると、店のスタッフは腰の高さまでゆっくりとお辞儀をする。

 ここまでなら、他の店でも見受けられる光景だろうが、久山本店のスタッフは、これで終わりにしない。背を起こして見送りの言葉を心の中でつぶやきながら、もう一度、腰の高さまでお辞儀をする。2回目のお辞儀は、300mほど先で道が右に折れてクルマが見えなくなる場所まで続く。

 客が玄関を出てクルマが見えなくなるまでには、少なくとも数分はかかる。決して短い時間ではないが、スタッフは購入商品の多寡にかかわらず、すべての客に帰り際の挨拶をする。

 こんな不便な場所まで、わざわざ買いにいらしていただき、本当にありがとうございました――。長いお辞儀には、「心からの感謝の気持ちを表す」と椒房庵の河邉社長は言う。帰り際のお辞儀は従業員の提案で始めた。

 久山本店の店内には「モノ言わぬモノに モノ言わすモノづくり」という言葉が壁に掛けられている。「『ありがとうございました』と挨拶するのは、誰でもできる。しかし、毎日欠かさずに続けることは、簡単に見えて難しい。ほかの会社は恐らく真似できない」。笑顔で河邉社長は語る。

 その表情には、赤字続きで事業の撤退も迫られた危機を、乗り越えてきた自信が潜んでいる。

 河邉社長が椒房庵の営業を開始したのは、久山本店をオープンする10年前の1990年。全国展開できる自社ブランド商品を作りたいと始めた新規事業だった。そもそもの河邉社長の社会人としてのスタートは、醤油の販売だった。

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三品 和広 神戸大学教授