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現代の成果主義と戦前の厨房の共通点

「後輩にコツを教えない」個人主義の跋扈

  • 寺山 正一

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2006年8月2日(水)

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 少し前の話で恐縮だが、7月8日から22日までの3週にわたり、NHK総合テレビで放映していたドラマ「人生はフルコース」を見ているうちに、はたと思い当たることがあった。

 戦前の厨房と現代の成果主義は、意外なほど共通点を持っているのである。一言で言えば、「自分の立場を守るには後輩なんて育てないに限る」。

新入りにはソースの味を教えない

 戦前のコックの世界に根づいていた徒弟制度と現代の成果主義。両者は到底相容れないように見えるのだが、「徹底したエゴイズム」が根底に流れている点で、苦笑を禁じ得ないほど雰囲気が似通っているのだ。

 放映をご覧になっていない読者のためにご説明しておくと、「人生はフルコース」は戦後日本のフランス料理界をリードしてきた元帝国ホテル総料理長、村上信夫氏の自伝を再現したドラマである。

 村上氏は戦前の帝国ホテルに見習いとして入社、徴兵によって中国大陸での戦闘に駆り出され、シベリアでの抑留を経験。戦後はパリの名門、ホテルリッツなどで腕を磨き、東京オリンピックの選手村食堂で料理長として活躍するなど、文字通り我が国フランス料理の歴史と共に歩んだ重鎮である。

 その村上氏が帝国ホテルに入社した1939(昭和14)年頃は折りしも日本が中国大陸に戦線を拡大している最中で、ホテルの厨房には、徒弟制度が支配する職人の世界が色濃く残されていた。

 「おい、新入り」と何かにつけて手が出る足が出る、ここまでは当たり前、というより現代の厨房でも一部の店では「手が出る」雰囲気が残っているようだ。問題はその後である。

 「この鍋を洗っとけ」。先輩に言われて鍋を取りに行くと、鍋の底には石鹸水や塩の塊が振りかけてあり、鍋底を舐めて先輩のソースの味を確かめようにも、確かめようがない。

 それどころか、「おい、新入り、お前は俺が苦労して作り上げた味を盗むのか」とぶん殴られる始末。考えて見れば、厨房に限らず、この時代はあらゆる職場で先輩の技術やノウハウは「盗む」もので、教えてもらうものではなかったのだろう。

後進を育てると自分が損する成果主義

 この話自体は、元々村上氏の著書などを通じて見聞きしたことがあった。とはいえ、改めて映像で目にした時に、はたと考え込んでしまったのである。「後輩を育てたら自分が損をする、下手すれば職場を失ってしまう。現代の成果主義は、より合理的に一種の“ミーイズム”を推奨しているだけで、その実態は戦前の厨房と五十歩百歩なのではないか」と。

 成長なき現代の企業社会は、ある意味で長丁場の椅子取りゲームを続けているようなものである。後進を育てて自らの席を譲った途端、職場での居場所を失って、宙ぶらりんのポジションに弾き出されてしまう。

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