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ブランド作り、奮闘記

成長企業に学ぶブランド構築法
ケース【7 - 9】日本IBM、NTTドコモ、松下電器産業

2006年8月24日(木)

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 企業が製品やサービスを顧客企業や消費者に買ってもらうためには、その特徴や機能、他社との違いを明確に伝えなければならない。この時、「価格」とか「スペック」のような数値化された情報は比較が容易だし、違いは一目瞭然である。

 だが、企業が伝えようとするメッセージが、企業が追求している「理念」とか「考え方」のような抽象的なものだったり、長い年月を通して消費者に「この会社の製品っていいね」と感じ取ってもらう信頼と信用であったり、過去に例のない全く新しい価値だったりするとそう簡単なことではない。

 伝えにくいメッセージをいかに伝えるか、いかにして消費者や顧客の心を打つか――。このテーマに取り組む日本IBM、NTTドコモ、松下電器産業の“ブランド新展開作戦”、その舞台裏に迫る。

世界統一ブランドのジレンマを突破
ケース【7】日本IBM


浸透しない「イノベーション」

 世界中で活動するグローバル企業には、「世界統一ブランド」を定めている場合が少なくない。コンピューター産業の雄、米IBMもその1社。現在、「イノベーション」という企業理念を前面に押し出したブランド戦略を世界各国で展開している。

 ところが、このイノベーションという理念が、日本では十分に浸透していないのが日本IBMのブランド戦略担当者の悩みだ。日本語では「技術革新」と訳されることが多いが、米IBMが唱える イノベーションとは技術に限らず企業経営や社会全般にわたって新たな価値を生み出すという広い意味での「革新」を意味している。「IBMは顧客企業のイノベーションのパートナーを目指す」、というメッセージをこの言葉に込めているのだが、日本のビジネスパーソンにはこの横文字単語の裏にある真意が伝わりにくい。

 イノベーションの前に打ち出していた「オンデマンド・ビジネス」というメッセージについて企業経営者の認知度を調査したところ、「日本の経営者の理解度は先進7カ国の中で一番低かった」(瀬戸口修 広報マネージャー)。世界では伝わるのに、日本では伝わりにくい。このジレンマを解消しようにも「世界統一ブランド」という米本社の方針が壁となり、日本独自のローカル戦略は認められない。例えば、テレビCMは米国版を日本語に吹き替えて放映するしかなかったのである。

 統一ブランドに手を加えるのではなく、伝え方に工夫をすることで日本の顧客にもその真意をもっと知ってもらいたい。日本IBMの広報、宣伝担当スタッフがその可能性を探り始めたのは昨年春のことだった。

「剛」を「柔」でくるむ

 検討は広告代理店も交えて進められ、テレビ番組の中に商品やサービスを登場させる「プロダクト・プレイスメント」という手法を応用することに落ち着いた。真面目で少々お堅いメッセージだけに、思い切って対極の「面白さ」や「楽しさ」という軟らかい要素でくるんで送り出すことにした。

 「爆笑ものだけれども、視聴者の知的好奇心もくすぐる異色のエンターテインメント番組」(瀬戸口氏)というコンセプトで制作されたのが、「イノベーション歴史学」という番組。今年6月、BSフジで2週続けて放映された。スポンサーは日本IBMだ。

 「武田信玄が豊臣秀吉を征圧して天下統一を成し遂げるための“イノベーション”を提案しなさい!」。司会役の大学教授に扮するタレントが戦国武将を題材にした奇妙な問いを放つと、学生に扮した男女3人のタレントがこれまた珍妙な回答をプレゼンする。

 「甲斐の国の温泉資源を活用した信玄温泉センターをフランチャイズ展開することによって、天下統一が実現できるのです!」

 1990年頃にフジテレビが深夜枠で放映した面白歴史番組「カノッサの屈辱」をモチーフに、実現していたら歴史を変えたかもしれない途方もない戦略を「イノベーション」と位置づけて、要所要所に散りばめた。イノベーションというのは楽しいことであり、問題を解決するための人間の知恵なのだというメッセージを言外に込めた。視聴者の多くが40代の男性で狙い通り。評価も上々だった。

 当初、日本IBMのこうした提案に米国本社はなかなか首を縦に振らなかったが、イノベーションを多くの日本人に正しく理解してもらうための前向きな挑戦だと主張して、何とか許諾を得ることができた。

 とはいえ、「戦争」という言葉は御法度、番組内で使うマンガが幼稚ではないか、サムライはなぜ皆頭が禿げているのかなど、注文は厳しく、疑問は尽きなかった。番組に登場する「大奥」を直訳すると米国の担当者に“セクハラ”を想起させてしまうのではないかなど、随分と気も使った。

 キーワードを呪文のように唱え続けるのではなく、“伝わる”手法を工夫する。その努力自体がイノベーションなのかもしれない。

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「ブランド作り、奮闘記」の著者

秋山 知子

秋山 知子(あきやま・ともこ)

日経ビジネス副編集長

1986年日経BP社入社。日経コンピュータ、日経情報ストラテジー、日経アドバンテージ、リアルシンプル・ジャパンの編集を担当。2006年から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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