最近の自動車業界の話題で驚いたのが、スズキ(
)が日本に新工場を建設するというニュースだ。相良工場(静岡県牧之原市)の敷地内に約600億円を投じて、燃費効率の良い小型車向けの工場を造るという。
スズキの鈴木修会長は私が最も尊敬する自動車メーカーの経営者の1人である。トヨタ自動車やホンダなどの強力なメーカーを向こうに回し、軽自動車と小型車だけで、同社を発展させてきたのは立派の一語に尽きる。
その鈴木会長が国内に新工場を建設するのを決断したのは、今後、世界的な需要が小型車にシフトすると確信したからだろう。これは自動車産業が一つの転機を迎えたことを象徴する出来事と言ってよい。
私はなぜ、今回のコラムのタイトルが日産自動車なのに、スズキの話から始めたのか。それは、日産の小型車・燃費対策の遅れを心配しているからだ。
トヨタ、ホンダの小型車が米国でヒット
米国市場では今、ガソリン代の高騰を背景に、トヨタとホンダが小型車攻勢をかけている。トヨタは「カローラ」に加えて、今年から米国に投入した「ヤリス」(日本名ヴィッツ)が爆発的に売れている。若者向けの「サイオン」ブランドも依然として好調だ。ホンダも「シビック」に加え、今年から発売した「フィット」が快走している。
それに比べると、日産の「マキシマ」「セントラ」は元気がない。小型車だけでなく、米国ではトラック部門でも、日産「タイタン」の落ち込みは、トヨタに比べて大きい。ホンダの「リッジライン」などは燃費が厳しく問われるこのご時世に台数を伸ばしている。
その結果、8月の米国新車販売では、トヨタが過去最高の月間売り上げを記録する一方で、日産は2.7%もシェアを落とした。
確かに今の日産は新車投入前の「谷間」であることは認める。ただ、それを差し引いても、もともと燃費の良い小型車は、日系メーカーの十八番である。その小型車に需要がシフトしているのに、追い風に乗れないのはおかしい。
米国だけではない。日本でも7月の車種別販売台数では、日産はトップ10にミニバン「セレナ」の1車種しか入らなかった。今後はスズキとの提携を拡大し、同社からのOEM(相手先ブランドによる生産)によって軽自動車を増強するという。販売低迷に歯止めをかけるには、軽の車種拡大に乗り出すしかないからだろう。海外においても小型車分野で、スズキの協力を仰ぐ見通しである。
儲け優先の車種攻勢で燃費が悪化
しかし、こうした提携は本質的な解決にはならない。鈴木会長が考えるように、今後、世界の自動車需要が小型車にシフトするなら、この分野は自前で開発力を磨くべきだろう。そもそも自動車業界では、他社から供給を受けて名前だけをつけ替えたクルマは、供給してくれたメーカーの販売台数の2〜3割しか売れないというのが定説だ。それでも、必要に迫られてスズキを頼らざるを得ないところに、日産の苦境が透けて見える。
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1934年生まれ。56年伊藤忠アメリカ入社。93年伊藤忠商事副社長。2002年3月に伊藤忠商事退社後、J・W・チャイ・コンサルタンシーを設立し社長に。ビッグプロジェクトの仕掛け人として知られる。いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)の提携(1971年)をはじめ、トヨタ・GM提携(84年)、イトーヨーカ堂の米サウスランド(セブン―イレブンの元親会社)買収(91年)、伊藤忠、東芝の米タイム・ワーナーへの資本参加(92年)などの国際提携を演出してきた。韓国系米国人で日本在住経験もあることから、世界経済の潮流について複眼的な視点を持つ。米コネチカット州在住で、妻は自動車評論家・アナリストとして著名なマリアン・ケラー氏







