「宋文洲の傍目八目」

僕がソフトブレーンの会長を辞める理由

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2006年8月31日(木)

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 今日、8月31日は僕にとって特別な日になります。明日の9月1日から、僕はソフトブレーンの取締役会長から、マネージメント・アドバイザーになるからです。取締役は退任し、今後経営には一切タッチしません。現在保有する株は持ち続ける方針なので、ソフトブレーンと全く縁がなくなるワケではなりませんが、かつてのような経営の最前線に立つことはありません。

 札幌のマンションの一室で創業したのは14年前。当時の僕は「不渡り」を「渡り鳥が来ない」と誤解していたように、日本語もそして経営の知識もヨチヨチ歩きのような状況でした。そんな僕が、よくもずうずうしく会社のトップを務めてきたものだと、我ながら感心してしまいます。

 僕は、今でこそ講演会に呼ばれ、コンサルティングを頼まれるような身分になりましたが、創業当初の僕にとって当然ですが、すべてが初体験で、苦労と驚きの連続でした。特に社員の採用にはとても苦労し、社員になってもらうためにそのご家族や恋人のところまで出かけて、説得したこともありました。

 やっとの思いで採用できても、そこからがまた大変でした。社会経験がほとんど無く「見積もり」などの一般的なビジネス用語さえも知らない僕の言うことを、信じる社員はほとんどいないのです。逆に、社長の僕が、社員に説教される場面が数え切れないほどありました。

20歳のアルバイト社員に「あなたは劉備を知っていますか」

 こんなことがありました。20歳にもなっていないアルバイトの社員があまりにも働く意欲がなかったので、これではダメだと思った僕は彼をある時に叱りました。すると彼はこう切り返してきたのです。

 「宋さん、あなたは劉備を知っていますか。あなたがもっと広い心を持たないと孔明の僕は頑張りませんよ」と言うのです。三国志をどこの漫画で読んだのかは知りませんが、中国人の僕に三国志を知っているかと聞いたうえに、「自分は名参謀の孔明なのだから、劉備であるリーダーのあなたは気をつけて優秀な部下に対応しなさい」という態度には全く閉口でした。

 当時、日本オラクル社長の佐野力さんがオフィスで社員のために犬を飼っているとの話をテレビで見ました。僕も真似して熱帯魚を買ってきました。当時の社員に1日1回の餌やりを頼んだところ、全員に拒否されました。逆に社員と相談もせず勝手に熱帯魚を買った僕は問い詰められました。

 営業の初回訪問は、製品を説明するどころではなく、「自分は怪しいものではありません」と証明するのに精いっぱいでした。製品をアピールして「購入してください」と本来の営業活動をするのは、幸運にも2回目の訪問がかなった時ぐらいでした。こんな日々が6〜7年間も続きました。あれから月日は経ちましたが、つい昨日の出来事のように思えます。

 創業当初は、時に社員に見下され、取引先からは怪しいやつと思われ、そして様々なつらい場面に遭遇しても、自分が先頭に立って壁を乗り越えてきました。ほかの人がどう思おうと、自分はリーダーであるという自覚があったからです。

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著者プロフィール

宋 文洲(そう・ぶんしゅう)
ソフトブレーン
マネージメント・アドバイザー

そう・ぶんしゅう

1963年6月中国山東省生まれ。84年中国・東北大学を卒業後、日本に国費留学する。90年北海道大学大学院工学研究科を修了。天安門事件で帰国を断念し、日本で就職したが、勤務先が倒産。92年ソフト販売会社のソフトブレーンを創業し、代表取締役社長に就任、99年2月代表取締役会長に。2000年12月に東証マザーズ上場、2005年6月に東証1部上場を果たす。2006年1月代表権を返上し取締役会長に、同年8月31日、「もう1人の社長」「陰の実力者にならない」として、取締役会長を辞任し、マネージメント・アドバイザーに就任する。(写真:川口 愛)



このコラムについて

宋文洲の傍目八目

日本人が意外と気づかない視点を、『ここが変だよ日本の管理職』『やっぱり変だよ日本の営業』などの著書でおなじみのソフトブレーンのマネージメント・アドバイザーである宋文洲氏が独特の切り口で紹介します。

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