「御立尚資の「経営レンズ箱」」

団塊ジュニアのやる気を高める意外な方法

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2006年9月29日(金)

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 「CSR(Corporate Social Responsibility)」を直訳すれば、「企業の社会的責任」となる。このためCSRといえば、社会の公器たる企業が「営利活動を超えて外部社会に対する責任を果たしていく」という「ソト」を向いた視点で語られることが多い。しかしCSRは、企業内部、すなわち「ウチ」向けの視点でも大きな意味を持つ。特に「ウォー・フォア・タレント」を勝ち抜くための武器として強い力を発揮する。

 ウォー・フォア・タレントとは、人材獲得戦争のことである。以前からあった言葉だが、同名の書籍が出て以来、人口に膾炙(かいしゃ)するようになった。日本では、ようやく経済が再成長軌道に乗り始めたのと同時に、団塊世代の大量退職が始まった。長期的な人口減少と、「ヒト」をベースにした知識社会へのシフトという大きな流れもあり、優秀な人材を獲得し、囲い込もうという企業の意欲が強まっている。ウォー・フォア・タレントという言葉が、時代の「空気」とぴったりきたのであろう。

食料援助活動に経営コンサルティングの手法を活用

 CSRはウォー・フォア・タレントにおいて、特に団塊ジュニア以降の優秀な人材を確保していくうえで強力な武器となる。

 以前、このコラムで「WFP(国連世界食糧計画)」について触れた。私が日本代表を務めるボストン・コンサルティング・グループは、WFPのような活動を支援する場合、単純に「募金を集めよう」というのではなく、自社のスキルを活用してより大きな結果を出すべく、無料でコンサルティングを実施することがある。

 WFPは世界中の飢餓発生地域で食料援助を行うグローバル組織なので、物流効率を上げるオペレーション改革とか、世界各国に散らばる組織を効率的に運営するための組織改革などといった、一般企業と同様のコンサルティングで結果を出すことが可能だ。こういったコンサルティングプロジェクトは、一般的に「プロボノ(Pro Bono)」と呼ばれ定着しているが、いわば我々なりのCSR活動に当たる。

極めて高い参加メンバーのモチベーション

 日本でも、その一環としてお手伝いをしているのだが、自分自身で活動に深く関わってみて驚いた。参加するメンバーのモチベーションが、異常なまでに高く、それ以外の社員も「こういう活動をする会社なら、居続ける意欲が高まる」と答える人が、大変多いのだ。

 WFPのお手伝いは、飢餓を減らすことによって、途上国の子供の命を救うことに直結する。このため、自分たちの付加価値がはっきり分かるという特徴がある。それにしても、「どうしても参加したい」と言ってくるスタッフが数多くおり、プロジェクト中、いくら忙しくても、皆、目を輝かせて働き続けている。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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