「宋文洲の傍目八目」

宋文洲の傍目八目

2006年11月2日(木)

いじめが自殺につながる日本の「空気」

かつて国が主導するいじめを受けた人間の持論

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 僕も親です。いじめで子供たちが自殺するニュースを聞いて胸が詰まります。虹色で彩られているはずの世界が真っ暗になり、誰にも頼れないと悟る少女。幼い首に紐をかける彼女の顔は、まだ無邪気さが残っていたはずです。こんな理不尽なことは許されていいはずがないと思います。

 無性に怒りを覚えました。僕の怒りは、言い逃れをする先生でも、いじめに参加したとされる子供たちに対してでもありません。自殺してしまった子供に逃げ道を教えない、すべての大人たちに対してです。この環境を変えない限り、悲劇はまだ続くと思うのです。

なぜ頑張らなくてはいけないのですか

 岐阜の少女が残した遺書に、すべての大人に対して重要なメッセージが残っていました。それは遺書の最後にあった「もう、何もかも、がんばる事に疲れました」の一言です。彼女の遺書の言葉で、恐らく多くの大人たちは塗り潰されていた4人の同級生の名前に意識や興味が集まっているはずです。しかし、その4人の子供や家族が置かれている現状を考えると、彼らも被害者だと思います。

 読者の皆さんのご意見をうかがいたい。皆さんはこの世の中からいじめを無くすことができると思いますか。無くす努力は大事ですが、だからといって無くなるものではありません。病院がいくら増えても病気が無くならないように、人類が古くから行ってきたいじめを根絶することは気の遠くなるようなことです。

 子供のいじめは中国の学校にも、米国の学校にもあります。しかし、中国や米国の子供がいじめに遭い、自ら幼い命を絶ったという例を僕は聞いたことはありません。でも、日本では起きている。それは、なぜなのでしょうか。亡くなった岐阜の少女の遺書が答えています。日本は過剰に「頑張ること」を強いるからです。

 よく言われる日本の「ムラ社会の原理」は、子供の世界から既に始まっているのです。皆が一緒にあるために、自分に無理させてでも努力を強いるこの社会に、日本の子供たちは好きで入ったのではありません。大人が招き入れているのです。学校に行き、お友達と仲良くすることは至上命題であり、嫌な相手がいても、部活が自分に合わなくても、大人から「ともかく、頑張ってみなさい」と言葉をかけられる。

我慢させることの罪

 「頑張る」は聞こえがいいのですが、僕にしてみれば要は「我慢する」ことです。教育は本来その子の個性を見いだし、それに合った環境を提供し、本来の才覚を伸ばすことにあります。だから孟子のお母さんは、3回も住居を引っ越して子供に合う環境を見つけ出したのです。

 岐阜の少女が自殺した本当の理由を、他人の僕が知る由はありません。親御さんは自分の子供を守るために必死に努力したと思います。それが届かなかったのはなぜか。個別の理由は、一言では言い尽くせないものがあるはずです。

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著者プロフィール

宋 文洲(そう・ぶんしゅう)
ソフトブレーン
マネージメント・アドバイザー

そう・ぶんしゅう

1963年6月中国山東省生まれ。84年中国・東北大学を卒業後、日本に国費留学する。90年北海道大学大学院工学研究科を修了。天安門事件で帰国を断念し、日本で就職したが、勤務先が倒産。92年ソフト販売会社のソフトブレーンを創業し、代表取締役社長に就任、99年2月代表取締役会長に。2000年12月に東証マザーズ上場、2005年6月に東証1部上場を果たす。2006年1月代表権を返上し取締役会長に、同年8月31日、「もう1人の社長」「陰の実力者にならない」として、取締役会長を辞任し、マネージメント・アドバイザーに就任する。(写真:川口 愛)


このコラムについて

宋文洲の傍目八目

日本人が意外と気づかない視点を、『ここが変だよ日本の管理職』『やっぱり変だよ日本の営業』などの著書でおなじみのソフトブレーンのマネージメント・アドバイザーである宋文洲氏が独特の切り口で紹介します。

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