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知られざるヘッジファンドの舞台裏

実は「ローリスク、ハイリターン」、米国では淘汰の時代へ

  • 若林 秀樹

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2006年11月2日(木)

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 先週(10月23日の週)、香港でヘッジファンドに関するセミナーがあり、パネリストとして参加した。

 聴講者は300人くらい。白人、日本人、中華系、インド系など人種は様々である。筆者のようなヘッジファンド会社のほか、シティバンク、ゴールドマン・サックスなどの大手証券会社、香港に拠点をおく国際企業、そして大富豪が個人として参加していた。いくつかのセッションに分かれて、グローバルマネーの流れや、株式市場の見通し、運用方法、規制動向などについて議論した。

日本のヘッジファンドは発展途上

 筆者が担当したセッションは、日本におけるヘッジファンドの動向についてであり、昨年と打って変わって厳しい運用環境をどう考えるべきかがテーマである。9月には日経ビジネス主催の東京国際デジタル会議やSEMI(国際半導体製造装置材料協会)/SEAJ(日本半導体製造装置協会)主催の半導体/FPD(フラットパネルディスプレー)に関するセミナーなどに講演する側として参加したが、ヘッジファンドに関するものは初めてなので緊張した。各パネラーが早口の英語でまくし立てるのに驚きながらも何とか成功裏に済ませることができた。

 ヘッジファンド専門誌の「アジアンヘッジ」によると、この半年ぐらいの平均パフォーマンスは「マイナス5%」と悪く、大体が大型株をショートして中小型株をロングにする戦略が失敗して苦しんでいるところが多いという。ただし、この10月から相場環境の変化で物色対象が中小型に広がっていくため状況は改善するということ、そして、日本のヘッジファンドは発展途上にあり真価が問われるのはこれからだ、という意見が最大公約数だったと思う。

 夜はパーティー会場に移り、好成績を収めたファンドの表彰式である。10人の丸テーブルが30卓くらいあっただろうか。日本株、アジア株、株式ロングショート、グローバルマクロといった運用カテゴリー別に、成績第1位だったファンドチームが表彰される。

「リターン」だけでなく「質」が評価される

 面白かったのは、過去12カ月のリターンだけでなく、その質の指標でもある「シャープレシオ(リターンを標準偏差で割った数値)」も考慮されていることだ。トップはリターンが20%でシャープレシオが2くらい。受賞者は割れんばかりの拍手と、まばゆいばかりのスポットライトを浴びる。

 来年は、このパーティーに参加できず業界から消え去る者も多いだろう。筆者のファンドは誕生から9カ月なので選考外だが、50本くらいのファンドの中で6月まではビギナーズラックということか1位、現在も2位を維持している。来年は表彰台を狙えるだろうか、あるいは消え去っているだろうか。国際金融都市香港でヘッジファンド業界の厳しさを垣間見たように思った。

 さて、筆者が仲間と共にヘッジファンド(投資顧問助言会社)を立ち上げてからまもなく1年になる。この間にもヘッジファンド業界を巡る環境は大きく変わった。1年前は、ヘッジファンドについてマスコミが取り上げることは少なかったし、解説本も10冊くらいしかなかった。しかも、大半が数年前に米国で書かれたものの翻訳版である。

 ところが、今はどうだろう。日経ビジネスでも本格的に取り上げられ、日々の新聞でも何かと話題は多い。昨年末には、金融庁から初めて業界動向に関するリポートも出た。年金基金などでは、ヘッジファンドをある程度までポートフォリオに取り入れるのは当然になりつつあり、投資市場での市民権を得ようとしている。世界では、1995年に20兆円、2000年に60兆円、昨年は80兆~100兆円と規模が急拡大している。

パフォーマンスに明確な差がつき始めた

 ただし、これは伝統的な運用規模の数%以下にすぎない。日本のヘッジファンドは数兆円規模と言われているが、1000億円以上の運用資産を有するものは10社程度であり、多くは数億円から数十億円規模と小ぶりである。雨後の筍のごとくヘッジファンドが設立されているが、上げ相場の昨年と違って今年はパフォーマンスに明確な差が出始めている。実際、回復不能の損失を出した例も少なくない。本場米国では、早くもピークを打ち、淘汰の時代を迎えつつあるという見方もある。日本にも遠からず、その波が押し寄せるだろう。

 さて、ヘッジファンドというといまだに、「超富裕層向けの、デリバティブを活用してレバレッジを利かせるハイリスク、ハイリターンを狙う正体不明のファンド」というイメージが根強いのではないか。株式市場などの波乱要因としても、短期の投機筋などと一緒くたにされ、訳が分からない相場の原因にされることが多い。確かに、そういうものもあるし、過去にはそういう傾向が強かったのも事実である。しかし、最近は、そうした話を聞いてヘッジファンド仲間で首を傾げることがしばしばである。
 ヘッジファンドのヘッジとは、リスクヘッジのヘッジである。本来はハイリスク、ハイリターンとは全く逆の性格を持っている。

 ヘッジファンドとはプロ向きの私募投信である。「“絶対収益”を確保するために、ロングとショート(売りと買い)を巧みに併用して相場の急落を回避、ある程度のレバレッジを利かせるファンド」ということになろう。

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