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(2)大失敗の「語り部」が、若い人を育てるんです

  • 長田 美穂

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2006年11月29日(水)

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 ブックオフ2号店を作る。店長は橋本さんだ。

 1号店のパートとしてブックオフに入り、自分の小さなアイデアが評価され、店の運営に反映される。仕事って、面白い。

 ブックオフに「ハマって」いた私は、坂本(現・ブックオフ会長)に2号店を任せると言われて、元々のモーレツ主婦魂が、店のモーレツお母さん魂に転化し、めらめらと燃えあがりました。

 しかし2号店は、1号店の成功体験に冷水を浴びせる、失敗の連続だったのです。

必死になって作った棚がお客さんを遠ざけた

ブックオフ社長 橋本真由美氏  (写真:鈴木 愛子)
ブックオフ社長 橋本真由美氏  (写真:鈴木 愛子)

 私はギラギラ、ピカピカの文庫の棚を必死になって作りました。というのも1号店では、とにかく周りの店より明るくなるよう蛍光灯を沢山つけました。それで夜、帰宅途中のサラリーマンなどお客様を引きつけるのに成功したんです。その成功体験が、無意識のうちにあったんでしょう。赤、オレンジ、といった派手な色のカバーの文庫本ばかり「華やかな棚にすれば人が寄ってきて売れる」と思いこみ、並べていたんです。名作であっても大作家の作品であっても、カバーが地味ならしまい込み、棚出しは二の次、三の次。

 苦労のかいなくというか案の定というか、まったく売れません。私がしゃかりきになって作った、「きれいな」棚の本たちは、見事に、動かなかったのです。

 ある時、近所で医院を開業しておられた、初老の院長先生がやってきました。

「角川文庫は、ないのかな」

「ございます」

 私はそそくさと、ストックの中にずらりと並んだ角川文庫を院長先生にお見せしました。院長先生はじっとタイトルを眺め、2、3冊を手にとって、仰いました。「いい本、あるのにな」。

 頭を殴られたようでした。私が作ろうとしていたのは、本の中身より見かけにとらわれる自分好みの棚であって、本が好きで買いにいらっしゃるお客様の視点を無視していた。そう気づかされました。

「モーレツお母さん」が空回り

 おまけにその店で、必死になっていたのは私、モーレツお母さんだけ。私が帰宅した後は、「橋本さん、いないからのんびりしよっと」なんて若い子たちは途端に気を緩め、たばこを吹いながらレジを打つ。そんな状態だったらしいのです。躍起になって派手な棚作りに精を出していた私は、彼らの心の動きまで、気が回りませんでした。これではお客様が通いたくなる店など、作れるわけがありません。

 さて2号店はその後、閉店の危機にさらされました。しかし、奇跡の復活を遂げたのです。その詳細は、また、後ほどにしましょう。ただし明言しておきたいのは、息を吹き返すに至ったのは、1つは私が視野の狭い「モーレツお母さん」から、「現場全体に目配りするお母さん」に変わったから。もう1つは、若いスタッフたちが、働くことの喜びを体感してくれたからなのです。

 バイト店員の大学生やフリーター君たちは、片手間で漫画が読めて、楽にバイトできそうだな、という気持ちでやってきたのです。専業主婦の小さな世界から飛び込んできた私自身は、家庭はさておき「ブックオフの仕事がすべて」とばかり、労働に熱中することができました。でも彼ら・彼女らはそうじゃない。遊んだりデートしたり、楽しみがほかに一杯あるのです。その彼らをいかに、「働くって楽しい」という思いにさせるか。

 今、社会全体では若者の不登校や引きこもりが顕在化し、問題になっています。

最近の若者、ちっとも情けなくありません

 けれども私は、最近の若者は情けない、とはこれっぽっちも思いません。逆に、誰もがすばらしい潜在能力をもっていると見ています。その潜在能力を、引き出す仕組みがあればよいのです。私のお母さん魂も、少しはこの仕組みの構築に寄与したんじゃないかな、と自負しています。

 それがどんな仕組みなのか、ちょっとご紹介しましょう。たとえばブックオフには、「語り部」が沢山いるんです。沢山というより、スタッフ全員が「語り部」なんですよ。「語り部」が何を語るかと言えば、自分の体験です。ブックオフの仕事で経験した、成功と失敗の体験です。

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