「ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」」

(6)“残飯漁り”で仮説と検証を実体験

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2006年12月27日(水)

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 給食会社で私は、京都にある企業の工場で働く工員さんが食べる給食の献立を考える仕事を任されました。

 ついたあだ名は「ショウショウ」。メニューには豚肉何グラム、と主な材料はグラムで書きますが、胡椒などちょっと使う調味料は「少々」って書きますよね。先輩方の目に、短大を出たての20歳の女の子が、一生懸命献立を考える姿が可笑しかったんでしょう。

 まだ若いから、同期の人たちは遊びたい盛り、仕事が終わるとみんな外へ出かけていました。でも私には、どうしても気になることがあったのです。その「ある事」をしてからでないと、仕事を終えられなかったのです。

 残飯漁りです。

食べ残しを運ぶトラックに乗り、バケツに手を突っ込む

 給食の時間が終わると、工員さんたちの食べ残しはバケツにどさっと入れられて、トラックでゴミ処理場まで運ばれます。私はそのトラックに乗り込み、バケツの中に手を突っ込んでいたのです。

ブックオフ社長 橋本真由美氏 (写真:鈴木 愛子)
ブックオフ社長 橋本真由美氏 (写真:鈴木 愛子)

 その日、自分が知恵を絞って考えたメニューの中で、何が食べ残されているか、どうしても知りたかったからなのです。残飯のバケツには、いくつかのおかずやご飯がすべて完全に混ざっています。ぐちゃぐちゃです。汚くて、目を背けたくなる状態です。すべて混ざっているので、見ただけでは何で構成されているか分かりません。だから蓋を開けて、バケツの中でびちゃびちゃしている物体に手を突っ込むしかない。その時の手の感触から、何が残り、何が食べられているかを探るのです。

 ああ今日はコロッケが自信作だったけど、ずいぶん残されているな。付け合わせのマカロニサラダとの相性が悪かったのかしら。キャベツのサラダに変えたらもう少し食べやすいかしら。あるいは調理の方法が悪かったのかしら−−。

 残飯は、その日の自分の仕事についての採点結果です。だからこんな考えが次々にわき上がってきます。しばし反省し、あれこれ考えるうちに、次の献立で何をどう改善すればいいか、方法が見えてきます。

 「ショウショウは変な子だねえ」。先輩や同僚にはあきれられました。特に夏の祇園祭の頃、みんなが祭りに出かけるのを横目に、トラックに乗り込んで残飯に手を突っ込む私の姿は異常に映ったようでした。さすがに、夏の残飯はきつかった。でも私はそうせずにいられなかった。

仕事って面白い! ところが…

 とにかく食べる人が喜ぶ、残されないような献立が書きたかったんです。だから残飯漁りで気の付いたことを実践して、次回、少しでも食べ残しが減っていると、もう嬉しくて嬉しくて。

 今思うと、それは企業行動に欠かせない「仮説と検証」そのものです。給食献立の仕事に没頭していた私には、そのプロセスが楽しく、周囲の目など気にしているヒマはなかったんです。祖母の教え通り、「いちがい」な人間になろうとしていたのかもしれません。

 けれども、仕事のおもしろさに目覚めてしまった私の前に、大きな壁が立ちはだかります。父です。

 「やはり女の子は親元を離れて遠くで働くもんじゃない。京都に出したのは間違いだった。帰ってきなさい」。父はこう言いました。我が家では父の存在は絶対的。聞かないわけには行きませんでした。

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著者プロフィール

長田美穂(ながた・みほ)

ジャーナリスト 1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本経済新聞記者を経て1999年よりフリーに。消費社会、性と社会問題をテーマに執筆。著書に『ヒット力』(日経BP社)『問題少女 生と死のボーターラインを揺れた』(PHP研究所)など。 



このコラムについて

ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」

“ビジネスモデル”で考えると、ブックオフの仕組みは恐ろしいほど単純だ。にもかかわらず、ブックオフだけが勝ち残ってきた理由は、現場(店頭)にある。

 この連載では、ブックオフの強力な現場が作り出されるまでの経緯を、1号店の現場からたたき上げて社長に就任した橋本真由美氏が語り下ろす。同社の「育ての母」の生の声を存分にお聞きいただきたい。インタビューと構成は日経トレンディなどで活躍中のライター、長田美穂氏、写真は鈴木愛子氏が担当する。

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