「御立尚資の「経営レンズ箱」」

温度差がある日・欧米企業のインド熱

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2006年12月25日(月)

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 2007年は、「日本におけるインド年」「インドにおける日本年」として、日印両国でお互いに関する様々な催しが行われる予定だ。先日は、その第一歩とも言えるインド首相の公式訪日があった。

 インドと言えば、ここ1年ほどの間ずっと気になっていることがある。欧米企業のトップのインドに対する思いの熱さだ。企業トップも、そして彼らのアドバイザーである私の仲間(ボストン・コンサルティング・グループのパートナーたち)も、インドについて語らせるとものすごく「熱い」。正直なところ、こちらが少し「引いて」しまうことがあるくらいだ。

 翻って日本では、インドへの興味が高まっているとはいえ、そこまで熱くなる経営者の方には、お会いしたことがない。中国については、ものすごく熱い思いを持っておられる経営者がいらっしゃるのだが。

 先だって、インドで丸1週間自社のパートナー(共同経営者)会議に出席することになったので、この機会に「熱さ」の違いの原因をしっかり見届けてやろうと考え、ニューデリーでのミーティングに臨むことにした。

インドを「市場」と捉える日本の企業

 デリーに1週間滞在した間に、インドの大蔵大臣や経済界のリーダーの方々と意見交換する機会も得た。多くのパートナーがインドの主要企業を訪問し、パートナー間でも様々な議論を繰り返した。

 そのうえで得た私なりの結論は、「インドを市場と捉える」のか、「自国企業の競争力アップの原動力と捉える」のかというスタンスの違いが、欧米人と日本人の関心度合いの差を生んでいる、ということだ。

 日本企業の経営者の方々との議論の中では、インドは中国と並んで、将来の成長を可能にする巨大市場の1つとして位置づけられることが多い。言うまでもなく、日本の国内市場の大きな伸びが期待できない中、10億を超える人口を有するインドが、経済成長軌道に乗り、巨大な消費市場として登場することの意味は大きい。社会インフラの未整備等、様々な困難があったとしても、中国だけに頼らない成長シナリオを描こうとする限り、インド市場での成功は、企業成長に不可欠な要因となる。インドが民主主義、法治主義国家であることも、市場としての大きな魅力の1つだ。

ビジネスプロセスに組み込んで競争力向上を狙う

 一方、欧米、なかんずく英国・米国の企業から見ると、ソフトウエア工場として、あるいはビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を通じた、自らのビジネスプロセスの一部の移転先として、自社のコスト競争力を大きく改善させるチャンスをもたらすのが、インドである。

 20万人とも40万人とも言われる年間理系大卒者数(ないし大卒相当の教育を修了した人たち)、そして英語に堪能で、知的レベルが高い理系・文系両方の大卒者層。これだけの知的労働者予備軍を、年間100万円前後のコストで雇用できる国は、インドをおいてほかにない。

 彼らを、インドのIT(情報技術)企業やBPO企業との契約を通じて、間接的に自社の人材として扱うことで、欧米、特に米国と英国の企業は競争力の向上を狙っているのだ。言い換えれば、インド(とその人材プール)を自らのビジネスプロセスに組み込むことが、欧米企業、そして彼らをサポートする立場にある我が社のようなコンサルティング会社の欧米人パートナーにとっての、最重要関心事なのだ。

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著者プロフィール

御立 尚資(みたち・たかし)

御立 尚資

ボストン コンサルティング グループ日本代表。京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。日本航空を経て現在に至る。様々な業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A(合併・買収)などの戦略策定、実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを数多く手がけている。著書に『戦略「脳」を鍛える』(東洋経済新報社、2003年)、『使う力』(PHP研究所、2006年)、『経営思考の「補助線」』(日本経済新聞出版社、2009年)など。



このコラムについて

御立尚資の「経営レンズ箱」

コンサルタントは様々な「レンズ」を通して経営を見つめています。レンズは使い方次第で、経営の現状や課題を思いもよらない姿で浮かび上がらせてくれます。いつもは仕事の中で、レンズを覗きながら、ぶつぶつとつぶやいているだけですが、ひょっとしたら、こうしたレンズを面白がってくれる人がいるかもしれません。

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