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働くことは価値観を持つこと

  • 神谷 秀樹

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2007年1月23日(火)

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 「時が経つのは早い」もので、この1月で当社「ロバーツ・ミタニ」は創立15周年を迎えた。設立当時、私は38歳だった。独立するなら40歳前までにと考えていた中で、投資銀行を設立するための不安材料の1つが、市民権を持っていないことだった。

 私は永住権を持っていたが市民権を保有していないことから、身分は米国人ではなく日本人のままだ。そんな私にSEC(米証券取引委員会)は、果たして投資銀行の設立を認めてくれるのか、と心配していたが、杞憂だった。

 恐らく外国人が金融機関を設立できたのは米国だからのことだ。当時の日本は日本版金融ビッグバンが起きる前で、金融行政は護送船団の枠を取り払っていなかったので、投資銀行(日本で言えば証券会社)の設立を、外国人にしかも個人に認めるという雰囲気はなかった。1997年に出縄良人さんがディー・ブレイン証券を設立して、初めてそうした道が拓かれた。

規模や成長の前に、人の縁と暖簾の誇り

 何を目標として創業するのか、その理由は創業者一人ひとり独自の考えを持っていると思う。私の場合は「自分の経営哲学に沿った仕事をしたい」ということが何よりも重要なことだった。会社を大きくするとか、公開するとか、規模を追求することは全く目標になく、「成長」という言葉に自分が追い立てられるというようなことは、御免蒙りたい。

 「縁あって当社のメンバーとなった仲間と、縁あって当社の顧客となってくれた人々に、最高の投資銀行サービスを提供する」ということが当社の行いたいことであり、それは永年家業として昆布の佃煮を作ってこられた老舗の方が、暖簾と味を守るということに専念するという気持ちと共通している。

 当社を設立する前に私が勤めていた米ゴールドマン・サックスは当時まだ非公開だった。他のほとんどの投資銀行も非公開だった。各企業にはその企業に適した企業形態があり、私は顧客サービスに徹する投資銀行は、公開会社となるよりも非公開のパートナーシップの方が良いのではないかと思っている。

社員は多くて20人と考える理由

 ロバーツ・ミタニはLLC(合同会社)という有限責任のパートナーシップを基本とする形態だ。日本がLLCという形態の会社を設立できるようになったのは、昨年のことだ。企業にはそれぞれ「最適規模」というものがあるはずだ。当社の場合、現在それぞれ専門を持つ10人の人間で構成している。人数は最大で20人止まりと考えている。

 それは、経営の価値観を共有するためだ。わずか15年ではあるが、ロバーツ・ミタニにも伝統らしきものができてきた。これを維持するには、価値観を共有できる人を集めなくてはならない。そのような人たちを多数集められるとは思っていない。

 米国の投資銀行は、浮沈の激しい業種である。かつて大手だったファースト・ボストン、ソロモン・ブラザーズ、キダー・ピーボディーといった名門は既に他の金融機関に吸収され、独立した形では存続していない。技術主体の企業を育てる代表だったハンブレヒト・クイスト、ロバートソン・コールマン、アレックス・ブラウンというような名前も既にない。そう考えると、この激動するウォール街で15年も事業を続けていると、古株の部類に入るのである。

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