2006年に大きく取り上げられた話題の1つが、ウェブ2.0だったことは間違いない。グーグルやYouTubeについての記事、書籍が数多く登場し、ロングテールやCGM(Consumer Generated Media)というコンセプトが語られてきた。
ただ、一部の先進的な人々を除けば、大多数のビジネスパーソンは、いまだウェブ2.0を「トレンドについてのお勉強対象」としてしか捉えていないようだ。「何か新しいことが起こりつつあるようだが、当面自分のビジネスに直接は関係しない」というのが大方の意見だろうし、「(ネットでの口こみマーケティングや広告展開を除いては)自分のビジネスにウェブ2.0をどう活用できるか、さっぱり分からない」というのが本音かも知れない。
中長期的に大きな変化をもたらしそうな事象であるウェブ2.0と、現在の自分のビジネス戦略とを結びつけて考える。そのために有効な手法の1つは、古典的な「コスト戦略」というレンズでウェブ2.0を眺めてみることだ。慣れ親しんだ従来型ビジネス戦略の視点でウェブ2.0のコスト優位性を深く考えていけば、いろいろな示唆が出てくる。
「タダ」でどんどん参加してもらう
例えば「セカンドライフ(Second Life)」というオンラインゲームがある。近々日本語バージョンが登場するということもあり、ご存じの方も多いだろうが、狭い意味での「オンラインゲーム」という概念だけではその全体像を捉えきれない面白い存在だ。
セカンドライフという名前の通り、参加者は自分の分身(アバターという)を作り、その世界の中で生活し、楽しみ、モノづくりをし、それを売り買いすることすらできる。その気になれば、この世界の中での収入で生計を立てることすら可能だ(ちなみに、セカンドライフの世界で使われるリンデン・ドルという通貨は、実際に米ドルに交換することができる)。1月7日の段階で、約240万人の参加者が世界中におり、その日1日の「経済活動」は、米ドル換算で約100万ドルに達しているという。
簡単に言えば、「3DのCG(コンピューターグラフィックス)で、かなりリアルに感じられる仮想世界を用意しました。その中でやりたいことをどんどんやってください」ということなのだが、参加者自身が自分で、ありとあらゆるものを作り上げていく、というところがミソだ。
用意された様々なツールやプログラム言語を使って、参加者が、自分の衣装、住居、乗り物、といった自分の世界を作ることができる。また、他人に売るためのファッションやエンターテインメントコンテンツを作ることもできる。セカンドライフ側は、仮想世界の基本骨格とツールだけを用意し、その後、幾何級数的に増えていくアバター、そしてアバターたちの活動が生み出すコンテンツ、すなわち日々進化していく仮想世界の大部分は、参加者たちが知恵と時間を使って作っていってくれる。
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