「ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」」

(9)張り切っているのは、私だけでした

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2007年1月24日(水)

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 41歳の時、私はパートのまま、2号店の店長を任されました。

 スタッフは私を入れて7名でした。
「前はカラオケ店でバイトしてました」
「古本屋なら漫画が沢山読めるかと思って」

 応募してきたのは、よく言えば屈託のない若者たち。それから私と似たような主婦のパートの女性でした。

 大学生、専門学校生のアルバイト、フリーター、主婦のパート。もっとも店長の私も主婦のパートなのですから、今思えば滅茶苦茶な陣容です。

 主婦生活が長かった私にとって、いくら1号店で仕事の面白さにハマってしまったとはいえ、私の夫は田舎の長男。女房を働かせるなんて男の沽券に関わると思っていました。私も同じ。扶養控除の枠を超えて働くなんてもってのほか。それに私の意識の中では、やはり夫が家にいる土日のうち1日は店を休みたい、子供たちの夕食は私が作るんだからあまり遅くまでは店にいられない、等々、様々な自主規制をしていたのです。

 けれどもさすがに店長となると、扶養控除の枠内に時給を抑える働き方では済まなくなりました。私が意を決して社員になったのは、1991年の8月。2号店開店の7カ月後です。家族も渋々ながら、認めてくれました。

「和気藹々とした店を」と決意したのですが…

 どうせやるなら思いっきりやってみよう。自分で新しい扉をひとつ、開いたのです。胸中、高まるものを覚えました。

 2号店は、神奈川県相模原市の上溝商店街の一角に出しました。ちょうどお米屋さんがお店をお閉めになるという空き店舗を坂本が見つけたからです。25坪ほどの小さな店でした。家からもほど近く、私は自転車で店まで通いました。

 商店街は、江戸時代から市場として栄えた由緒ある場所なのですが、当時は商店街のオーナーの皆さんの高齢化が進み、あまり活気はありませんでした。跡取りは市役所にお勤め、老夫婦がのんびり店番をしているといったふうのお店が多かった。そこへ私たちの真っ黄色の看板が、商店街の真ん中にドンと掲げられたのです。目立つことこの上なかったはずです。

 オープンは1991年の1月1日。正月は5日ごろまで、商店街はどこもお休みです。シャッターが閉まって閑散とした中、颯爽と開店した2号店には、寝正月を決め込む中年男性やお年玉を持った子供たちなどが押し掛けました。それなりに揚々たる幕開けでした。

 2号店は、私が任された我が城です。こうしたい、と心がけたことが2つありました。

 1つは、和気藹々とした店にしたい。長く主婦だったのですから、ハタチやそこらの学生たちとつき合ったことなどありません。彼らの生態そのものが、衝撃的でした。たとえばパチンコ狂のフリーターの男の子がいました。年は20歳くらい。朝は眠そうな顔でご飯も食べずにふらふらと店にやってくる。

 夕方5時まではうちの店で働きますが、夕方になるとなんだかそわそわし始めるんです。何かと思えば、5時になったらやりかけの仕事もほったらかして猛ダッシュ、パチンコ店に駆け込んで、台を選ぶのです。店ではガマンしていた煙草を好きなだけくゆらせ、轟音の中、何時間もひたすら粘るのです。

 いやはやこんなタイプの人は、私の人生において接したことがありません。私のうちに秘めたお母さん魂が、つい、顔を出し始めました。

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著者プロフィール

長田美穂(ながた・みほ)

ジャーナリスト 1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本経済新聞記者を経て1999年よりフリーに。消費社会、性と社会問題をテーマに執筆。著書に『ヒット力』(日経BP社)『問題少女 生と死のボーターラインを揺れた』(PHP研究所)など。 



このコラムについて

ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」

“ビジネスモデル”で考えると、ブックオフの仕組みは恐ろしいほど単純だ。にもかかわらず、ブックオフだけが勝ち残ってきた理由は、現場(店頭)にある。

 この連載では、ブックオフの強力な現場が作り出されるまでの経緯を、1号店の現場からたたき上げて社長に就任した橋本真由美氏が語り下ろす。同社の「育ての母」の生の声を存分にお聞きいただきたい。インタビューと構成は日経トレンディなどで活躍中のライター、長田美穂氏、写真は鈴木愛子氏が担当する。

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