(第9回から読む)
年が明けると、店はもうこの商店街から無くなってしまうんだ。
年末、坂本(当時ブックオフ社長、現会長)から2号店の閉店を言い渡された私は、落ち着かぬまま元旦を迎えました。
ところがその夜、スタッフの1人から電話があったのです。「23万円売れました!」と得意気な声で「明日も頑張るから安心して休んでいいですよ」と言ってくれました。年始のお客様を接待しながらうれしさがこみ上げてきました。
予定通り正月3が日はしっかり休み、1月4日の朝、私は店に出ました。
あれ、何か違う。
スタッフが化け、店が変わった
はっきりと、今までとは変わっているのです。目を凝らすと、棚に天井までぎっしり、新しい本が並んでいます。たとえば漫画のセットが増えているのです。これまでは全20巻が途中で切れていても、そのまま放置してありました。それが全巻きちんとしたセットになり、いくつも並んでいます。棚に並ぶ商品が年末からかなり入れ変わっていたので、店内の彩りが違って見えました。倉庫を見ると、段ボールがぐんと減っていました。
スタッフの顔つきも変わっていました。目が真剣なのです。年末までとは比べ物にならないスピードで本を磨き、補充のために走り回ります。いらっしゃいませの声も、格段に大きくなりました。本を持ってきてくださったお客様がいれば、すぐドアの外まで走って取りに行き、レジでは大急ぎで電卓をたたいています。「引き取ってくれないか」と電話があれば、「はい、今日の夜でもいいですか」。タバコを吹かしながら「来週っすね」と言っていた彼は、何処へ行ってしまったのか。
元旦の売り上げは23万円。2日、3日も20万円台に乗せていました。夢のような快挙です。
閉店のニュース、そして私が泣いていたと耳にしたアルバイトの男の子たちは、にわかに一致団結したのでした。僕らの店は、死んでいる。じゃあどうすれば生き返るのか。
買い取りには急いで行こう。買い取ってきた在庫は、すぐに段ボールから棚へ出そう。セットの本があればなるべく残りを探して全巻揃いにしよう。するとお年玉を持った子供達が、商店街で唯一元旦から営業しているブックオフにやってきたんですね。
「あ、三国志が揃ってる。お母さん、お年玉で買っていい?」それで横山光輝作の全60巻が売れた。自分が買い取って、走り回って全巻揃えたセットが、売れたらうれしいんですよ。じゃあどうすればもっと売れるのか、考え始めるんです。こうなればしめたもの。
基本動作の「ところてん」がしっかり形作られたのも、この「2号店の奇跡」の最中でした。棚に何冊か同じ本が溜まったら、すぐに100円のコーナーに移そう。いつまでも滞留している本が棚の同じ場所にあると、そこだけ棚が薄汚れて見える。買い取って、加工して補充して、棚からさらに100円コーナーへ。後ろから押し出すようなこの商品の移動のことを、私は「ところてん」と呼び始めました。
ところてんをきちんきちんと行うと、なるほど商品の回転が速くなる。このことに気づいた2号店の若者たちは、その後、率先して他店にところてんの効用を説く役になってくれました。
さて私にも、猛省を迫られた出来事がありました。
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