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かばんや雑貨を販売する「マザーハウス」(埼玉県さいたま市)。社長の山口絵理子が2006年3月に立ち上げた会社だ。マザーハウスの最大の特徴は、バングラデシュの素材を使い、現地の人の手で作ったかばんを販売している点にある。
同社のかばんは、バングラデシュでなめされた牛革とジュート繊維で作られている。ジュートとはコーヒー豆を保存する麻袋に使われている繊維で、強靭なうえに通気性に優れている。天然繊維だから土に埋めれば自然に分解され、環境に優しい素材でもある。
しかし麻特有のゴワゴワした手触りから、服飾関連など身に着ける日用品にはあまり用いられることはなかった。山口はジュート繊維に特殊な液をかけて軟らかくする加工を施し、手触りを改善して商品化に結びつけた。完成したかばんは同社のホームページだけでなく、東急ハンズ渋谷店や伊勢丹都庁総合売店などの店頭に並び、初回生産の160個は3カ月で完売した。
バングラデシュに欠けていたもの
バングラデシュは、アジアに点在する最貧国の1つに位置づけられる。インド北東に位置し、北海道に九州と四国を足した国土面積に1億3800万人もの人口を抱え、かつその5割以上が貧困層だ。山口がマザーハウスを立ち上げた大きな狙いは、成人の識字率が半数に満たない同国に文化産業を植えつけ、根づかせることにあった。
なぜ山口はバングラデシュに興味を持つようになったのか。学生時代は国連などに就職し、発展途上国への支援を手がけたいと切望していた。しかし、彼女が描いていた夢は大学3年の春に渡米し、国際機関でインターンシップとして働いた時に崩れ去った。発展途上国への援助方法など一切を決定しているエリートたちと実際に言葉を交わすいい機会となったが、話を聞いてみると誰一人として現地に赴いたことがないという事実が分かってきた。現場を知らずして何ができよう。これは自分の描く将来像ではないと判断するやいなや、山口は国際機関で働くという夢をあっさりと捨てた。
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何も見ずして行動はできない。視察といっても短期間では実情は分からないだろう。そう考えた山口は、最貧国の現状を把握するため、現地での大学院進学を決意する。そして2004年4月、日本人として初めてバングラデシュBRAC大学院に入った。
政権が頻繁に入れ替わり、政情が不安定なバングラデシュ。22歳の日本人女性が1人で暮らすには酷な社会だった。強盗に入られたこともある。郵便物を受け取りに行っても、日本人だからと当然のように“袖の下”を要求される。社会全体が腐敗した現状を目の当たりにした山口は、最貧国から抜け出せない理由を導き出した。
「自立する意識がない――」
経済発展の足がかりさえ見つけられないバングラデシュに対して、世界中のNGO(非政府組織)やNPO(非営利組織)が援助の手を差し伸べている。しかし「援助だけではこの貧困状態からは永遠に脱却できない」と山口は言う。彼女が目指すのはバングラデシュの人たち一人ひとりの“自立”である。援助に頼らず生きていくためには、現地のヒト・モノを生かして外貨を稼がなければいけない。
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