「神谷秀樹の「日米企業往来」」

神谷秀樹の「日米企業往来」

2007年2月5日(月)

7割はジャンク、米国企業のお寒い現実

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 およそ25年前、私は当時所属していた住友銀行(現三井住友銀行)の国際企画部で、格付け機関である米スタンダード・アンド・プアーズと米ムーディーズ・インベスターズ・サービスから、AAAの格付けを獲得しようと奮闘していたことがある。

 「当行の含み益はこんなにある」
 「不良化した貸し出しはほとんどない」

 資料をもとに、懸命に格付け会社のアナリストに説明した。その甲斐あってか、結果はスタンダードプアーズからAAA、そしてムーディーズからは1ランク低いAa+を取得した。より高い信用格付けを取得するのは、銀行に限らずすべての企業経営者にとって優先順位の高い経営課題と言える。その当時の米国企業は日本企業と比べると、押し並べて自己資本比率が高く、格付けも高かったことから、日本企業にとっては高い信用力を保つお手本であり、憧れの的でもあった。

AAAはわずか2%に

■ 米企業の格付け分布の状況(%)
1980 2006
トリプルA 及び ダブルA 17 2
シングルA 33 9
トリプルB 18 18
ダブルB 22 25
シングルB 7 42
トリプルC 及び D 3 4
資料:米スタンダード・プアーズ

 そんな過去の経験もあったから、先日のウォールストリート・ジャーナル紙の記事を見て仰天した。記事は今や金融機関や電力などを除く事業会社の7割がジャンク(紙くず)債の水準(BB以下)と報じていた。1980年と2006年の間の、格付け別企業数シェアの著しい変化は下記の通りだ。

 記事によると、ジャンク債のカテゴリーに入る企業は、1980年は全体の約3分の1だったが、80年代の終わりに約半分に上昇し、現在は7割まで上昇したとのことである。

 これは一体何を意味するのであろう。

 米国経済もしくは世界経済が少しでも悪化した場合、直ちに多くの企業が倒産し、大量の不良債権を抱えた金融機関は貸し出しを控え、クレジットクランチ(信用収縮)を招き、大不況を招いてしまう危険性が高まっている。現在、多くの米国企業は、不況を乗り切るだけの信用力と資本力が欠如している。

 株式指数である「S&P500」に組み入れられているような大企業でさえも、70社がジャンク債の部類に入る。この中にはフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)のような米国を代表する大企業の名も見られる。金融機関以外で、最高峰のAAA格を持つ企業は実に6社に過ぎない。

 日本企業は戦後、直接金融の道が狭く、資金調達を銀行借り入れに頼ってきた。過小資本、過大借り入れの状況で高度経済成長の波に乗ってきたが、低成長期に入っても状況は変わらなかったため、80年代に入っても海外企業と比べると日本企業の信用力は低かった。それが今や見事に逆転している。なぜだろうか?

「強欲資本主義」のなれの果て

 基本的にはこれも、私が本コラムでたびたび指摘している「強欲資本主義」の産物だと思う。日本企業は、もちろんこの悪癖をマネしないことだ。強欲資本主義とは、投資ファンドなどが収益優先主義に走り、投資先の企業を活性化するどころか、逆に食い物にしてしまうことがはびこる姿だ。

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著者プロフィール

神谷 秀樹(みたに・ひでき)
ロバーツ・ミタニLLC創業者兼マネージング・ディレクター

神谷秀樹

1953年東京都生まれ。小学校時代をタイで過ごし、75年早稲田大学政経学部経済学科卒業後、住友銀行入行。ブラジル・ミナス・ジェライス連邦大学留学を経て、84年ゴールドマン・サックス証券に移籍。92年に日本人では初めて米国で投資銀行の「ミタニ&カンパニー・インク」を設立、95年に「ロバーツ・ミタニLLC」に社名変更。米国在住。著書に『ニューヨーク流たった5人の「大きな会社」』『さらば、強欲資本主義』(いずれも亜紀書房)『強欲資本主義 ウォール街の自爆(文春新書)、共著に『世界経済はこう変わる』(光文社新書)がある。これまでに大阪府海外アドバイザー、フランス国立ポンゼショセ大学国際経営大学院客員教授などを兼務。

(写真:丸本 孝彦)

ロバーツ・ミタニLLCのサイトはこちら


このコラムについて

神谷秀樹の「日米企業往来」

日米の巨大金融機関で勤務した後に、顧客と投資家と投資銀行家の3者の利害が一致する投資銀行を実現したいと一人で投資銀行を設立した筆者。日米の企業風土や人生の価値観などを指摘する。

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