『不都合な真実』(原題『An inconvenient truth』)という本の日本語版が出版され、同名の映画も上映されている。ご存じの方も多いだろうが、ゴア元米副大統領の手になるもので、地球温暖化とその影響という問題に正面から取り組んでいる。
個人的には「やっと日本語版が出たな」という感覚が強い。というのも、昨年後半、米国やEC(欧州共同体)諸国に出張するたびに、必ずと言っていいほどこの本・映画の話になり、あまりの頻繁さにびっくりした経験があるからだ。
出張先で会う人たちは、ほとんどの場合、経営に関わる方々であり、特に環境運動に熱心な人というわけではない。なのに、異口同音に「あの映画は見たか」「本は読んだか」「どう思うか」と議論を吹っかけてくる。
環境問題を再認識させる激烈な天災の記憶
なぜ、これほどの影響を及ぼしているコンテンツなのかと聞いてみると、返ってきた答えは次のようなものであった。
・用いられているデータに、論理的かつ科学的な裏づけがあるので、経営者にとって、ほとんど初めて「腑に落ちる」内容の、温暖化議論が展開されている。
・非常に美しいビジュアルが効果的に使われていて、印象的である。
・複数の航空会社で映画版が機内上映されたため、多くのビジネスパーソンの目に触れた。
・そして何より、温暖化の問題が遠い将来の話ではなく、我々の生活に対して、既に様々な影響を及ぼし始めていると実感させる内容だ。
私は、特に最後のポイントが決め手ではないか、と受け止めた。同書の中でも触れられているが、ハリケーン・カトリーナによって、ニューオーリンズが壊滅的な被害を受けたことは、人々に強烈な印象を残した。こういった「従来より強度を大きく増したハリケーン群」や「増加する竜巻、洪水、森林火災等による大きな被害」が、温暖化と関係している可能性が極めて高いというゴア氏の主張は、激烈な天災の記憶と相まって、広範囲に大きな影響を及ぼしたように見受けられる。
言い換えれば、大きな災害が発生することで初めて、「何となく大事なことだとは思うが、はっきりとした実感がわかない」温暖化という事象が、多くの人々にとって重要課題として認識された、ということでもある。
実際に、最近の米国における環境意識の高まりは、想像以上だ。もともと、EC諸国と違い、企業の多くも、現政権も、環境、特に温暖化問題については、腰が引けた対応を示してきたのだが、昨今、様変わりの状況にある。
『不都合な真実』の影響もあるのだろうが、国民の環境意識の高まりを受けてか、ブッシュ大統領自身も、ごく最近(エネルギー安全保障という名目ではあるが)環境対応を重点施策として打ち出すに至っている。名だたる大企業のトップが連名で、地球温暖化対策のアピールを出したのも、記憶に新しい。
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