「ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」」

(14)開校、“橋本学校”

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2007年2月28日(水)

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第13回から読む

 2月に入ってからのある日、ボイコット組の男の子たちが店に揃っていました。

 「今日はこれを片づけよう」と、倉庫の天井まで積み上がった段ボールを指さして、私は音頭を取りました。

 まずは私が箱によじ登り、上から段ボールを下ろしました。箱を開け、これは店に出せるもの、これは出せないものねと仕分けを始めたんです。「じゃあオレが登ります」と、男の子たちも段ボールによじ登りました。ガムテープを引っ張りはがして、「これはどうっすかねえ」「ちょっと厳しいわね」なんてやりながら、箱を一つひとつ片づけていく。お互いを隔てていた壁が、次第に溶けていきました。

 夜になってすべての作業が終わり、「いやあ、疲れたね」「のど渇きましたね」と一緒にジュースを飲みました。

 ひとつになれたな、と感じた瞬間でした。映画のワンシーンのようでした。すっと霞が消えるように、わだかまりも壁も溶けていったような気がしたのです。

 それからは店は完全に団結しました。「堀之内の奇跡」とでもいうような、すごい業績を上げ始めたのです。赤字、赤字だった店が利益を出し始め、売り上げは右肩上がりになりました。

 それが他の不振店にも知れ渡り、「堀之内はどうやっているのか」と不思議がられるようになりました。坂本が「じゃあ橋本さんの所にいって、教えてもらえば」と言うので、全国の店舗のオーナー様、店長さんが八王子堀之内店に「研修」にいらっしゃるようになったのです。

 「橋本学校」の始まりでした。

「店長にいい格好をさせたい」

 一時期のブックオフでは、スーパーバイザー制度を実施していました。ほかのフランチャイズチェーンさんでもよく採用している、スーパーバイザーが3カ月に1度、店を訪ねて「ここをこう変えたらいいですよ」と指導する、あれです。でも店の業績はなかなか変わらない。坂本は、だったら不振店に出向くのではなく、成功している店がどうやっているのかを目で確かめてもらった方がいいと考えました。

 最初にいらっしゃったのは、四国のある加盟店のオーナー様でした。

 堀之内店のスタッフは一丸となっています。よその店から見学が来るとなると、もう、いつも以上に張り切ります。「橋本さんに、いい格好させたい」と思ってくれるのです。

 たとえば出し切り。私たちは「ボイコット事件」の時に、究極のスピードアップの方法を体得しています。不振店のオーナー様が、「うちは1日に1500点、出し切りできたらいい方だなあ」とおっしゃるのを聞くと、「うちは7000点だって出していますよ」と私が言う。「うそでしょう」と言われるので、「いえいえ本当ですよ」。

 夕ご飯の時間になるとスタッフが、「店長、先に休憩してください。僕ら後休憩でいいですから」と声をかけてきます。「分かった。じゃあ先に行ってくるね、よろしくね」と私はオーナー様をお連れして出かけます。「行ってらっしゃい」と私たちを送り出したスタッフは、お尻に火がついたように動き出すのです。

 オーナー様と私は1時間半ほど食事してお話しして、店に戻ります。すると在庫の出し切りはすべて完了。カートの向きまでぴしっと揃っている。

 オーナー様はビックリ仰天。「店長、じゃあ俺たち休憩もらいますから」とスタッフは颯爽と店を出ていきます。店から見えなくなると、「やったあ、これで店長いい格好できたね」と喜んでいるらしいんですね。

 四国のオーナー様は戻られてから、お礼のちくわと「堀之内で元気とやる気をもらいました」とのお葉書を下さいました。それを私が朝礼で発表すると、わあ、もっと頑張ろうとみんなが盛り上がる−−。

 「橋本学校」といつの間にか呼ばれるようになりました。

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著者プロフィール

長田美穂(ながた・みほ)

ジャーナリスト 1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本経済新聞記者を経て1999年よりフリーに。消費社会、性と社会問題をテーマに執筆。著書に『ヒット力』(日経BP社)『問題少女 生と死のボーターラインを揺れた』(PHP研究所)など。 



このコラムについて

ブックオフ社長橋本真由美の「最強の現場の創り方」

“ビジネスモデル”で考えると、ブックオフの仕組みは恐ろしいほど単純だ。にもかかわらず、ブックオフだけが勝ち残ってきた理由は、現場(店頭)にある。

 この連載では、ブックオフの強力な現場が作り出されるまでの経緯を、1号店の現場からたたき上げて社長に就任した橋本真由美氏が語り下ろす。同社の「育ての母」の生の声を存分にお聞きいただきたい。インタビューと構成は日経トレンディなどで活躍中のライター、長田美穂氏、写真は鈴木愛子氏が担当する。

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