(前編から読む)
好評を受け続編「LOST2」も作られている
――「LOST」の話が出ましたが、この作品が2006年のレンタルマーケットを強力に牽引した作品の1つだと聞いています。どれくらいのビジネスになっているのでしょうか。
詳細な数字は公開できませんが、1つの比較事例を紹介しましょう。2006年3月に劇場公開した「ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女」は、興行収入で約70億円のヒット作です。当然、DVDのビジネスもそれなりの規模になっているのはお分かりでしょう。
しかし、「LOST シーズン1」のDVDビジネスは、「ナルニア」のそれを上回る実績を上げているんです。
――こういうケースは今まであったんですか?
テレビシリーズがヒット映画を超えるというのはないですね。だって、「ナルニア」は、2006年の興行収入ランキングでは第6位。その上はというと「ハリー・ポッター」と「パイレーツ・オブ・カリビアン」2作目、それに「ダ・ヴィンチ・コード」「ゲド戦記」「海猿」ですよ。
70億円規模の興収を上げる作品というのはそうそう出るものではありません。そういう力のある作品のDVDよりも、テレビドラマのDVDの方が売れるという時代が来たんですから、ファミリーカテゴリーを立ち上げる前段階として、新しいカテゴリーができたのかもしれないですね。
日本は先進国唯一、レンタル市場が健全
――「LOST シーズン1」のDVDのビジネスというのは、PPT(Pay Per Transaction、貸し出し回数に応じてメーカーへ代金を支払う)なんですか。
PPTもあるし、スタンダードもあるし、要するに基本はレンタルでの売り上げということです。一部、セルもありますが、BOXしか出してないので、そんなに大きな数字ではありません。だから、売り上げの9割方はレンタルですよ。
――この売り上げは驚きですね。
これこそが日本マーケットの特徴なんです。実は、先進国の中でレンタルというビジネスがちゃんと残っているのは、もはや日本だけ。ですから米国本社にレンタル向けのビジネスの予算計画を見せると、一瞬とまどいますよね。でも、これが日本マーケットの特殊性です。
――米国ではブロックバスターもリストラをして生き残っているようですが。
残ってはいるけど、かつてのような勢いはありません。米国は基本のDVDビジネスがセルに移行してしまったんですよね。
日本だけがレンタル市場が健全な形で生き残った背景には、いろいろな要素があると思います。1つはレンタル文化というのがあります。貸本、レンタルレコードを経て脈々と、その文化が受け継がれてきたんですよ。
そして便利なロケーションに店があること。コンビニもそうですよね。コンビニは家の近くにあって、いわば第2の冷蔵庫的な役割を果たしています。レンタルビデオ店も、大手チェーンに独立系は買収されるなどの統廃合はありますが、街に必ずありますからね。コンビニと同様に、外にある“自分のライブラリー”的な使われ方をしているわけです。実際、その数もコンビニほどではないにせよ、駅前、住宅地、スーパーの中という具合に存在している。店に行くのも通勤、通学、あるいは買い物のついでに気軽に行けますよね。
逆に、米国では移動がクルマとなることが多いでしょ。そうなると借りるときにクルマで出かけて、返すときにもまた出かけなくてはならない。それならば、低価格のセルにして、出かけるのは1回で済ませようとなるのではないでしょうか。
それと、たいていの国はハリウッドメジャーがセルの低価格戦略を取ったことで、レンタルビジネスが壊されてしまったんです。ところが日本では東宝や東映、松竹といったローカルの国内映画大手が強いため、そういう状況にはなっていません。この映画業界の構造もレンタルシステムが生き残った理由の1つでしょう。
「カリブの海賊」と「パイレーツ・オブ・カリビアン」
――レンタル店に行くと「LOST」は、大きなPOPなどが置かれて目立っています。マーケティングもかなり積極的に展開されたのではないですか。
塚越隆行・ウォルト・ディズニー・ジャパン/ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント日本代表
もちろん通常より量も質も上のPOPを配布しました。ただ、それ以上にお店の方が独自のPOPを作ってくださるなど、「LOST」の応援団になってくれたんです。それも、飛行機の模型を買ってきてPOPを作るといった具合に、かなり手が込んでいるものです(編注:LOSTは飛行機で孤島に不時着した人々のドラマ)。
これは、作品の面白さをお店の方が認めてくださって、「ビジネスになる」と本腰を入れていただけたからのようです。
こういう実態を見ていると、米国は映画のクリエーティブ能力にばかり注目されることが多かったですが、テレビのクリエーターの方々もかなり力をつけてきたと言えるでしょう。また、システム的にテレビの方が放映する期間が長い分、脚本やキャラクターの性格付けを見直していけることも有利に働いているんでしょうね。
――「LOST」がドラマのファミリーカテゴリーである一方、ライブアクション映画ですと、「パイレーツ・オブ・カリビアン」がその役割を果たすわけですね。ただ、この作品は一見するとディズニー作品とは思われないのでは?
それはタイトルのせいですね。日本だと東京ディズニーランドの中にあるアトラクションのタイトルが訳されて「カリブの海賊」になっているからでしょう。
逆に米国ではすごく分かりやすいんですよ。アトラクションの英文名は「Pirates of the Caribbean」ですからね。ロゴもそっくりです。だから米国では“パイレーツ・オブ・カリビアン”と言ったら、「ああ、ディズニーのあの乗り物ね」とイメージがリンクしてピンとくる。そして、そのイメージは家族とかファミリーなんです。
僕は、日本でもこのイメージのリンクを作りたいんですよ。米国のディズニースタジオも間違いなくそういう意識ですから、今後ますますディズニーのライブアクションとアニメーションは、ファミリーを意識したものになっていきますよ。
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