「宋文洲の傍目八目」

宋文洲の傍目八目

2007年3月1日(木)

中国人を理由に僕を非難する方々へ

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 宋文洲です。いつもご愛読いただき心から感謝をしております。

 年始の挨拶の時も申し上げた通り、このコラムの趣旨は日本の方とは異なる視点を提供することで、様々な立場から議論し、それぞれの意見の偏りを修正して、問題の本質に迫ろうとするものです。ですから、僕の書いた記事に対して、建設的な反論や批判がなされるのは、最初から期待していることです。

 前回の「日本は本当に『環境先進国』なのでしょうか」でもたくさんの意見をいただき感謝しています。しかし、この記事に限ったことではありませんが、寄せられたコメントの中には「中国人による日本批判だ」「反日だ」「中国に帰ったら」といった言葉が交じっています。

 読者の9割近くが「とても参考になった」「まあ参考になった」と投票してくださった状況から考えると、このような少数の過激な言葉は、特段に気にする必要はないのかもしれません。しかし、こうした過激な表現をされる方々も、このコラムの大切な読者ですから、一度説明すべきと思って筆を取りました。

日本人1人当たりの二酸化炭素排出量は、中国よりも多い

 前回の記事を書いたのは、僕を含めて日本で生活している人々が、環境に負荷をかけていることにもっと気づいてほしかったからです。日本人の1人当たりの二酸化炭素(CO2)の排出量は、途上国のそれよりはるかに高い状況です。

 日本エネルギー経済研究所の2007年版「エネルギー・経済要覧」によれば、2004年時点で世界の二酸化炭素の排出量は72億3500万トン。そのうち中国の排出量は13億1100万トンです。日本は中国の約4分の1に当たる3億4900万トンです。絶対量では中国の方が多いですが、2004年時点で、中国の人口は12億9600万人で、日本は1億2800万人。これらから計算すれば、日本の1人当たりのCO2排出量は2.7トンで、中国は1.0トンになります。ちなみに世界の平均は1.14トンで、インドは0.3トンになります。

古紙の利用率も日本と中国は大差ない

 日本の皆さん一人ひとりが排出している二酸化炭素の絶対量は、中国やインドの民よりも多いのです。そして皆さんがオフィスで配られた分厚い会議資料などからも分かるように、CO2を吸収する森林資源の消費についても、日本は多いのです。日本製紙連合会の資料では、日本人1人あたりの紙及び板紙の消費量は2004年時点で247キログラムです。世界の平均は56キログラムで、参考までに中国は42キログラム、インドは7キログラムです。

 紙の消費量で言えば、日本が今の中国やインドの経済状況と同じ時点で比較すべきという指摘もあるでしょう。それはもっともです。また日本は古紙の利用率が高いという意見もあるでしょう。それもたしかですが、中国もけして低くはありません。

 製紙会社大手の日本製紙グループ本社(3893)のグループ会社、日本製紙の資料によると、2004年時点での世界の主要国の古紙利用率は、韓国がトップの79.6%で、日本は2番目の60.7%です。中国は4番目の58.2%です。

 GDP当たりのCO2排出量の関係でみれば、中国の分が悪くなります。2004年時点で日本の実質GDP(国内総生産)は4兆9330億ドル(ドル換算レートは2000年平均)に対し、中国は約3割の1兆7150億ドルだからです。

 今まで数字をあれこれ述べてきましたが、僕が皆さんに訴えたかったのは、二酸化炭素の排出量や紙の使用量、古紙の利用率などあれこれで、日本が中国を含めた諸外国と比べて、優れているとか劣っている、ということではありません。他の国々に対する優劣は、多かれ少なかれあるものです。その一つ一つにこだわるのではなく、日本の生活者は、地球のためそして子孫のために、今よりももっとできることがあるということです。

問題提起がなければ、カイゼンはあり得ません

 それを述べるうえで米国や中国、インドの人々も同じように努力すべきだと、頻繁に強調しておけばいらぬ誤解が減ったかもしれません。そうしなかったのは、「傍目八目」は日本人の読者に特異な視点を与えることが目的のコラムだからです。この趣旨を全く忘れて、日本に対する僕の見解=日本批判ととらえられることは、看過できません。

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著者プロフィール

宋 文洲(そう・ぶんしゅう)
ソフトブレーン
マネージメント・アドバイザー

そう・ぶんしゅう

1963年6月中国山東省生まれ。84年中国・東北大学を卒業後、日本に国費留学する。90年北海道大学大学院工学研究科を修了。天安門事件で帰国を断念し、日本で就職したが、勤務先が倒産。92年ソフト販売会社のソフトブレーンを創業し、代表取締役社長に就任、99年2月代表取締役会長に。2000年12月に東証マザーズ上場、2005年6月に東証1部上場を果たす。2006年1月代表権を返上し取締役会長に、同年8月31日、「もう1人の社長」「陰の実力者にならない」として、取締役会長を辞任し、マネージメント・アドバイザーに就任する。(写真:川口 愛)


このコラムについて

宋文洲の傍目八目

日本人が意外と気づかない視点を、『ここが変だよ日本の管理職』『やっぱり変だよ日本の営業』などの著書でおなじみのソフトブレーンのマネージメント・アドバイザーである宋文洲氏が独特の切り口で紹介します。

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