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サブプライム問題に見る米国の病魔

  • 神谷 秀樹

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2007年3月30日(金)

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 「貧乏人は高い金利で金を借り、一方運用は低金利の定期預金。金持ちは低い金利で金を借り、一方運用は高利回りのヘッジファンド。だから貧富の差は開く一方だ。世の中アンフェアにできている」というのは、ある1人の韓国人移民の男が、かつて私に言ったことだ。

 彼はなけなしの貯金で株を買い、また目いっぱいの借金をして家を買い、少しでも値上がりすると買い替え、住宅投機に張る賭け金を大きくしていった。実に5年の間に3回家を買い換えた。

 「貧乏人は高い金利で金を借り」というのは、日本の消費者金融含めて、恐らく世界中で真実だろう。収入が低ければ、預金額が小口のために銀行預金はほとんど金利が付かないし、大口預金者には免除される口座維持手数料などが課される。

 こうした処遇に遭う状況から抜け出すために、せめて家を持ちたいし、家の値上がりで一財産作りたいと思うのは、極めて分かりやすい心理だ。しかし、もう一方で、貧乏人が高い金利の金を借りれば、買った資産が余程の値上がりをしない限り、やがて支払えなくなり、自らの首を絞めることになるというのもまた真実である。

焦げ付きで大手金融機関も倒産の危機

 現在、米国ではサブプライムと呼ばれる低所得で信用力の低い層を対象にした住宅ローンの焦げ付き問題が大きな経済問題、かつ社会問題となっている。その背景には、少しでも資産を増やして優遇措置を得たいという庶民感情、「頭金不要」「当初の支払い額は小額」といった甘言で釣るノンバンク金融業者、世界的な過剰流動性の存在、そしてノンバンクゆえの消費者保護や金融機関規制の盲点の発生――などがある。
 
 サブプライムが全米の住宅ローンに占める比率は残高で15%、件数では小口なので恐らくその倍の比率になると言われている。また焦げ付き率は金融機関によって異なるが、大手業者で3割近くになっていると報じられている。

 焦げ付きが多く発生したのは、住宅ブームの中で、一部のノンバンクがほとんど審査もせずに貸し出しを増やしたためだ。最初の何年かは金利が特に低く固定されている方式や頭金なしで購入金額全額を貸し付ける方式など、借り手の心をひく仕組みを作り、返済に無理がある人にまでドンドン貸し付けた。

 中には借り手を欺くような、丁寧に言えば説明義務を果たしていないものも報道されている。例えば、65歳のおばあさんには3万6000ドルを貸し付け、返済期間は15年というローンを組ませた。おばあさんには「毎月300ドル強支払えばいいです」と融資担当者は言う。当然、おばあさんは15年後の80歳には完済になると思う。ところがこのローンは、80歳になっても実は元本分の返済が済まないという代物だった。

65歳のおばあさんに貸し付けたローンは80歳でも完済せず

 このおばあさんは返済途中で、そのことに気づき、ローンの支払いを拒否すると、家を取り上げられた。さすがにこの件は裁判所に持ち込まれ、元々おばあさんが80歳になった時点で、返済できるわけがないことを知りながら貸し付けた「貸し手責任」を問われ、おばあさんには損害賠償として1万4000ドルが支払われたという。

 これらのローンが組まれる前提は「買った家(貸し付けた家)が値上がり続ければ、すべての問題は問題ではなくなる」というものだった。サブプライムが伸び始めた当初、住宅価格が値上がりを続けたので、前提通りに物事が進んだ。ところが世の中、そんなに甘くない。住宅価格の騰勢は止まり、多くの地域で値下がりし始めた。

 その一方、最初の3年など一定の特別低金利期間が終了し、金利が短期金利に連動し、返済額が上がる時期を迎えた契約者が出始めた。中には返済額が倍になる人も出た。そんなに多額を返済できないと家を売って完済しようにも、不動産は下落しているので売るに売れない。またローンを組み直すリファイナンスもできない。

 返済できない人が増え、焦げ付きが増え、今度はサブプライム金融機関の経営が低迷し、彼らに転貸資金を貸し付けていた金融機関が一斉に資金を引き上げ始めた。既に24社以上が潰れ、公開しているような大手も続々倒産に直面している。

現金問屋の買い叩きに投資銀行が参戦

 担保を行使されて取り上げられた家は、市場で叩き売られ、それが一層の住宅価格破壊を呼ぶ。住宅の動きが止まると、開発会社、資材供給会社、不動産ブローカー、弁護士、火災保険、家具商など関連業界で働く人々の収入低下を招く。一層消費が低迷する。住宅ブームが起こした経済への波及効果は大きかったが、その逆さまの波及効果も大きい。前FRB(米連邦準備委員会)議長のアラン・グリーンスパン氏が本年後半に米国景気が低迷するという懸念を表明した1つの理由もここにある。

コメント16件コメント/レビュー

小泉前首相が作った「日本の病魔」と言い換えてもよいでしょう。本件記事のように、金融は貧乏人から金持ちにお金を移転する仕組みです。税金・福祉など公的な仕組みは金持ちから貧乏人にお金を移転する仕組みです。”公的なものを小さく、金融を大きく”という小泉政権の政策は格差を生み出して当然です。(2007/04/04)

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いただいたコメント

小泉前首相が作った「日本の病魔」と言い換えてもよいでしょう。本件記事のように、金融は貧乏人から金持ちにお金を移転する仕組みです。税金・福祉など公的な仕組みは金持ちから貧乏人にお金を移転する仕組みです。”公的なものを小さく、金融を大きく”という小泉政権の政策は格差を生み出して当然です。(2007/04/04)

どこかで読んだような内容で、真新しいことは書かれてませんね。軍隊の人のことに触れられていますが、神谷氏はMilitary Family Tax Relief Actや Soldiers and Sailors Civil Relief Actはご存知ないのでしょうか。従軍者のクレジットカードなどの利率を下げたり、所得税の負担を軽減したりできる法律です。ただし、恩恵を受けられるのはこれらのActの存在を知っている人たちだけです。借金の負担もさることながら、法律的知識や資産運用のノウハウを持ち合わせているか否かが格差を広げているのではないでしょうか。(2007/04/01)

「ツケを払わされる時が、やがて来ると思えてならない。」という締めがキレイにまとめすぎに思えます。著者がそうなることを希望していると,きっぱり書いてあったほうが文脈からいって正直で読後感がよいです。勝者がルールを作れるなら,負けることのないように手を打っておくのは当然です。賢い勝者なら,暴動やテロも未然にしろ事後にしろ防ぐでしょう。(2007/03/31)

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