「イノベーション解剖学」

老舗企業の「アイデアキラー」たち

アイデアを事業につなげる3つの機能

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2007年4月2日(月)

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 「日本の研究開発はあまり独創性がない」といった声を聞くことがある。事実は決してそうではないのだが、かつて私自身も、日本には優れた研究者が多いのに面白い研究テーマが提案、実行されることが少ないのではないかと考えたことがある。そこで光エレクトロニクス関連の国際学会における発表論文数について、国別に比較してみた。その結果、日本からの研究発表は、応用に近い、あるいは実用化が目前の研究テーマに集中しがちなことが分かった。

 世界には様々な学会があり、この例から一般的な結論を導くことはできない。それに基礎研究と同様に、応用研究にも独創性は必要である。日本では応用研究が多いからと言って、独創性が不足していると結論づけることはできない。しかし、面白味、あるいはユニークさといった点では、確かに欧米の研究テーマに比べると不足していると感じたことは事実である。

日本では起こり得なかったボール・セミコンダクターの提案

 これも以前のことだが、「ボール・セミコンダクター(球状半導体)」の開発を提案し、起業した日本人がいた。ボール・セミコンダクターとは、球状のシリコンの上に集積回路を焼き付けるという画期的な半導体である。提案したのは、米国のICメーカーに勤務していた石川明氏。最初、この提案を聞いた時、製造方法の詳細が分からなかったこともあり、大変に驚いた。

 発案者は日本人である。しかし石川氏は長く米国メーカーで働いていた方である。発想を練った場所は米国だ。そこで仲間と議論になったのは、石川氏が日本企業にいたとしても、同様の発案がなされただろうかということである。また、発案されたとしても、実際に開発に着手できたかということだった。

 その時の結論は、「日本国内で、日本企業において」では起こり得なかったのではないかということになった。議論で出てきた仮説が、「アイデアキラー」の存在である。つまり、日本にも独創的な研究者や技術者はいるのだが、そうした人々が生み出すアイデアを殺してしまう機能、つまりアイデアキラーと呼べる機能が存在しているのではないかということである。もちろんこのような機能は日本以外でも存在していると考えられる。しかし特に日本においては、その機能が強いのではないかという仮説が浮かび上がった。

上司が破壊的イノベーションをつぶす?

 議論の中で引き続いて出てきたのが、日本の研究開発においては「アイデアジェネレーター」が弱いという仮説である。上記とは逆の見方である。つまり、独創的なアイデアを創出する人の力が弱いということである。

 研究開発や技術開発で独創を追うことは、アイデアジェネレーターとアイデアキラーという2つの機能が拮抗し、戦うことだとも捉えることができるだろう。

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著者プロフィール

池澤 直樹(いけざわ・なおき)

池澤 直樹

野村総合研究所 チーフ・インダストリー・スペシャリスト

1976年、慶應義塾大学工学部計測工学科修士終了。同年、野村総合研究所入社。約10年間、主としてエレクトロニクス関連の市場調査・技術調査を担当。次いで、製造業分野を中心に研究開発・事業開発のコンサルティング活動に従事。機能デバイス・素材産業研究室長、技術産業研究部長、産業コンサルティング部長を経て、2001年から現職。北陸先端科学技術大学院大学客員教授、中部大学客員教授、大阪経済大学非常勤講師を務める。主な著書に『ナノテクが日本を救う』『やらなきゃ良かったあのテーマ』、共著書に『創造の戦略』『ユビキタス・ネットワークと市場創造』などがある。



このコラムについて

イノベーション解剖学

企業の中で「イノベーション」は、いつ、どのような組織から生まれるのでしょうか。そして、イノベーションを事業として成功させるためのカギは何でしょうか。ケーススタディーを交えて、イノベーション誕生の瞬間に何が起きているのかを解き明かします。

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