「日本の研究開発はあまり独創性がない」といった声を聞くことがある。事実は決してそうではないのだが、かつて私自身も、日本には優れた研究者が多いのに面白い研究テーマが提案、実行されることが少ないのではないかと考えたことがある。そこで光エレクトロニクス関連の国際学会における発表論文数について、国別に比較してみた。その結果、日本からの研究発表は、応用に近い、あるいは実用化が目前の研究テーマに集中しがちなことが分かった。
世界には様々な学会があり、この例から一般的な結論を導くことはできない。それに基礎研究と同様に、応用研究にも独創性は必要である。日本では応用研究が多いからと言って、独創性が不足していると結論づけることはできない。しかし、面白味、あるいはユニークさといった点では、確かに欧米の研究テーマに比べると不足していると感じたことは事実である。
日本では起こり得なかったボール・セミコンダクターの提案
これも以前のことだが、「ボール・セミコンダクター(球状半導体)」の開発を提案し、起業した日本人がいた。ボール・セミコンダクターとは、球状のシリコンの上に集積回路を焼き付けるという画期的な半導体である。提案したのは、米国のICメーカーに勤務していた石川明氏。最初、この提案を聞いた時、製造方法の詳細が分からなかったこともあり、大変に驚いた。
発案者は日本人である。しかし石川氏は長く米国メーカーで働いていた方である。発想を練った場所は米国だ。そこで仲間と議論になったのは、石川氏が日本企業にいたとしても、同様の発案がなされただろうかということである。また、発案されたとしても、実際に開発に着手できたかということだった。
その時の結論は、「日本国内で、日本企業において」では起こり得なかったのではないかということになった。議論で出てきた仮説が、「アイデアキラー」の存在である。つまり、日本にも独創的な研究者や技術者はいるのだが、そうした人々が生み出すアイデアを殺してしまう機能、つまりアイデアキラーと呼べる機能が存在しているのではないかということである。もちろんこのような機能は日本以外でも存在していると考えられる。しかし特に日本においては、その機能が強いのではないかという仮説が浮かび上がった。
上司が破壊的イノベーションをつぶす?
議論の中で引き続いて出てきたのが、日本の研究開発においては「アイデアジェネレーター」が弱いという仮説である。上記とは逆の見方である。つまり、独創的なアイデアを創出する人の力が弱いということである。
研究開発や技術開発で独創を追うことは、アイデアジェネレーターとアイデアキラーという2つの機能が拮抗し、戦うことだとも捉えることができるだろう。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。










