「新日本的経営の姿」

ブックオフ流「社長を育てる方法」

坂本 孝(ブックオフコーポレーション会長兼CEO)が語る

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2007年4月10日(火)

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ブックオフコーポレーション(単体)の売上高と経常利益の推移

「パート出身の、東京証券取引所1部上場企業の社長が誕生」――。
売上高260億円(単体。2006年3月期)、古書チェーン業でシェア6割を誇るブックオフコーポレーション。同社の社長を務める橋本真由美氏は、41歳の時、主婦パートとしてブックオフ1号店で働き始めた。そして、パートの主婦やアルバイトの若者たちを取りまとめ、古本流通の新しい仕組みを作り上げ、2006年にはついに社長兼COO(最高執行責任者)に。
創業時に彼女を見いだし、現在の地位に引き上げた坂本孝会長兼CEO(最高経営責任者)にこれまでの経緯を通して、「新・日本的」な経営者育成法を聞いた。

(構成 : 長田 美穂=ジャーナリスト)


「井戸端会議の司会者だな」

ブックオフコーポレーション 坂本 孝 会長兼CEO (写真:菅野 勝男)

ブックオフコーポレーション 坂本 孝 会長兼CEO (写真:菅野 勝男)

 ブックオフの次の社長は橋本真由美さんだ、と発表したのが2006年5月16日ですから、まもなく1年になります。「パート主婦出身」「タレント・清水國明さんの姉」とずいぶん騒がれました。僕にしたら、1990年にブックオフを創業して以来、店の現場はほとんど橋本さんに任せっきりでここまで成長してきたのですから、橋本さんに社長を引き継ぐのは、とても自然な流れだったんですが。

 橋本さんが面接に来た時のことは、今もはっきり覚えています。

 「この人、井戸端会議の司会役なんだろうな」と。

 「こうやったら、きっと自治会費を上手に集められるわよ」とか言いながら、5人、6人集まったら、自然と話を交通整理するのがこの人なんだろうな、とね。面接でも、僕との会話はいつの間にか橋本さんのペースで進んでいて、「来てあげてもいいわよ」といった雰囲気になっていた。

 パート・アルバイト募集の広告を出したものの、応募してくるのはほかのアルバイトを断られたような若者たちですよ。そんな状況だから、橋本さんが彼らのお母さん役として居るといいかなと思ったんです。

主婦は、家事の経営者

 なぜなら主婦は「家事の経営者」。だから、トイレットペーパーの値段はいくらなら安いとか、金銭感覚が鋭い。それに掃除が得意です。店のトイレって重要なんですよ。トイレが汚いと、お客さんの足が遠のくでしょう。

ブックオフコーポレーション 橋本 真由美 社長兼COO (写真:鈴木 愛子)

ブックオフコーポレーション 橋本 真由美 社長兼COO (写真:鈴木 愛子)

 ただしスタッフを18〜19歳で揃えた場合、主婦が1人だと、その中で浮いてしまう。だから橋本さんともう1人、計2人の主婦を採用しました。

 神奈川県相模原市でブックオフ1号店が開店したのが90年5月2日。橋本さんが来たのは、4月17日でした。

 1号店がいざ動き出すと、若いお兄さんたちも主婦もみんな、古本の仕事にハマってしまいました。古本屋って、自分で買い取った本を自分で磨いて、自分で売る仕事です。つまり最初から最後まで、仕事を自分で完結させられる。すっきりして気持ちいいんです。

 すると問題が起きた。「僕は学校があるから週1日で」「私は週2日でいい」とか言っていた人たちがみんな、店に入りたいと言い出して、シフト表がいっぱいになっちゃった。これでは人件費がかさんでしょうがない。

 すると、橋本さんは言いました。

 「1人週2回までにして、シフトは均等に分けましょう」

 今で言う「ワークシェアリング」の発想です。この人の経済観念は大したものだ、と驚きました。彼女がそれを言い出したのは、働き出してわずか1〜2週目の時期でしたよ。

恐るべきメモ魔だった

 それから驚いたのは、彼女が大変なメモ魔だったこと。

 僕はどんどん思いついては忘れていくタチ。橋本さんはそんな僕についてきて、メモを取るんです。だから絶対に忘れない。ちょっとした思いつきが、橋本さんの手にかかると、店できちんと形になる。

 スタッフさんの言葉も聞き逃さない。「あら、それ面白いわね」と褒められて、しかも店で自分の思いつきを実行してもらったら、誰だってうれしいでしょう。

 「これやりなさい」と上からモノを言うんじゃなくて、みんなで集まって意見を聞く。それを2〜3回繰り返すと、橋本さんの思う通りに、みんなが動き出していく。

 橋本さんはいつのまにかリーダーシップを発揮して、店をまとめてくれていた。教えたわけではないのに、最初から彼女はブックオフの「現場の母」だったんです。

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著者プロフィール

長田美穂(ながた・みほ)

ジャーナリスト 1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業後、日本経済新聞記者を経て1999年よりフリーに。消費社会、性と社会問題をテーマに執筆。著書に『ヒット力』(日経BP社)『問題少女 生と死のボーターラインを揺れた』(PHP研究所)など。 



このコラムについて

新日本的経営の姿

日経ビジネスの特別編集版2007年4月2日発行号では、「新・日本的経営」をテーマに特集しています。本コラムでは、その中から主要な記事を紹介します。

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