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松下電器産業・長期ビジョンで育む未来の人材と市場

  • 鶴岡 弘之

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2007年4月13日(金)

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「破壊と創造」を掲げた企業改革。
その先にあったのは、長期的なビジョンに基づいた人材と市場の育成だった。 小中学生向けに設立した科学館「リスーピア」を通して、
未来を見渡す経営にチャレンジする。

(日経ビジネス オンライン副編集長=鶴岡 弘之)


台の上に現れる数字が素数かどうかを見極めて打ち返す「素数ホッケー」。2月24日から3月4日にかけて開催された平成18年度文化庁メディア芸術祭では、アート部門の作品として展示された (写真:山西 英二、以下同)

台の上に現れる数字が素数かどうかを見極めて打ち返す「素数ホッケー」。2月24日から3月4日にかけて開催された平成18年度文化庁メディア芸術祭では、アート部門の作品として展示された (写真:山西 英二、以下同)

 「割れない、割れないっ」

 「3で割れるよ、早く打たなきゃ」

 子供たちが夢中になっているのは、「素数ホッケー」というゲームだ。一見、ゲームセンターによくあるエアホッケーゲームのように見える。しかし、打ち返すのはプラスチック製のパックではない。数字を打ち返すのだ。

 ゲーム台は上面が大きなディスプレーになっている。ディスプレーの中央からはプレーヤーの手元に向けて、次々と数字が現れる。プレーヤーはその数字が素数だったら手元に取り込み、素数以外の場合は打ち返すというゲームである。

 素数とは、1と自分自身しか約数を持たない1以外の自然数のこと。例えば「11」は、1と11(自分自身)でしか割れないので素数である。「9」は1と9以外に3でも割れるので素数ではない。素数ホッケーでは、プレーヤーが素数と素数以外をどれだけ瞬時に見極められたかが得点として表示される。ホッケーゲームという遊びを通して素数とは何かを学べる、今までにない学習教材なのだ。

「リスーピア」が入っている松下電器産業のショールーム「パナソニックセンター東京」(東京都江東区)

「リスーピア」が入っている松下電器産業のショールーム「パナソニックセンター東京」(東京都江東区)

体験型の展示物が並ぶ3階の「ディスカバリーフロア」。土日は入場制限をするほどの人気ぶりだ

体験型の展示物が並ぶ3階の「ディスカバリーフロア」。土日は入場制限をするほどの人気ぶりだ

 「リスーピア」には素数ホッケーをはじめとして遊びと学びを一体化させた展示物が並ぶ。リスーピアは、松下電器産業がショールーム「パナソニックセンター東京」(東京都江東区)内に、2006年8月5日に設立した科学館である。理科と数学(算数)で遊ぶ場所だからリスーピア。小学生、中学生の子供たちをメーンターゲットとして、理科と数学(算数)の面白さ、楽しさに触れてもらい、もっと関心を持ってもらおうという施設だ。

 リスーピアは、理科や数学(算数)の原理モデルを展示する1階の「クエストフロア」、そして素数ホッケーのような体験型の展示物が並ぶ3階の「ディスカバリーフロア」から成る。特に3階のディスカバリーフロアは、土曜や日曜には入場制限をするほどの人気ぶりである。開館から約7カ月経った2007年2月末、入場者の数は、当初計画した年間目標である10万人に達した。


メーカーの将来が危ない

 松下電器はただ単に集客力のあるエンターテインメント施設を作ろうとしたわけではない。リスーピアを通して取り組んでいるのは、極めて長期的なビジョンに基づいた人材教育である。それは今までにない、新しい経営のあり方だとも言える。

 松下電器がリスーピアを設立した背景には、昨今叫ばれている子供たちの理数離れという問題があった。国際教育到達度評価学会(IEA)が行った「国際数学・理科教育動向調査の2003年調査」によれば、理科、数学(算数)を好きだという日本の小中学生の割合は、国際的に見て平均を大きく下回っているという。また小学校4年生と中学校2年生を比べると、理科や数学(算数)が楽しいと思う生徒の割合が、中学校2年生では小学校4年生の半分以下に低下してしまう。

2006年8月のリスーピア開館セレモニーでテープカットを行う中村会長(右端)

2006年8月のリスーピア開館セレモニーでテープカットを行う中村会長(右端)

 子供たちの理数離れを憂う松下電器の中村邦夫会長(当時社長)は2005年初頭に、「子供たちが理科や数学に興味を持てるような施設を作れないか」と発案、それがきっかけとなってリスーピアは誕生した。中村会長は8月5日のオープニングの挨拶で、次のように訴えた。「天然資源が乏しい日本は、ものづくり立国、科学技術創造立国としてでしか存続できない。これからの日本を支えるのは優秀な理科系人材だ。この施設をきっかけに、理科・数学への関心を少しでも高めてほしい」。

 子供たちの理数離れは、技術者によって支えられている「メーカー」にとっては死活問題だ。リスーピアの企画を立ち上げたシステム創造研究所 社会システムデザイングループ アーバンデザインチームの川端和彦チームリーダーは次のように語る。「このままだとメーカーに入って技術者になろうという人がいなくなってしまいます。メーカーが今後存続していくためにも、理科や数学に興味を持つ次世代の人材を育てなければなりません」。

 そこで、一民間企業である松下電器が、子供たちの理数離れという教育問題に取り組むことになった。優秀な人材の確保は、どの企業にとっても経営上の大きな課題である。松下電器は10年、20年という大きなスパンでの人材教育と人材確保に乗り出したのだ。

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