「常盤文克の「新・日本型経営を探る」」

人づくりの原点は「学びの循環」にあり

「コトづくり」が企業を強くする

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2007年4月17日(火)

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 日本という国の将来にとって、最も重要な課題の筆頭格に挙げられるのが、教育の再生です。実際に最近、「ゆとり教育」の見直しだ、いや「詰め込み教育」の強化だ、などと教育のあり方を巡って議論が沸いています。また、いじめや学力の低下、学級崩壊なども社会問題化してきています。こうした状況を見ても分かるように、いま教育は避けては通れない大事な課題なのです。

 それは企業においても同じです。今回は企業における教育のあり方について、まず「学びの循環」という考え方からお話ししたいと思います。

 これは北海道のある家具メーカーの事例です。このメーカーでは、社員を仕事の内容によって10人程度にグループ分けしたうえで、それぞれのグループに若手とベテランを組み合わせてあります。その結果、毎日の仕事の中で、若手は経験豊かで匠の技を持つベテランの仕事ぶりを見て、「やっぱり先輩はすごいな」とベテランに対して尊敬の気持ちを抱くようになります。

「教育」という発想では限界がある

 一方、ベテランは若手がコンピューターを上手に使いこなしている姿を見て、「最近の若者はすごいな」と後輩に敬意を抱きながらIT(情報技術)を学びます。こうして互いに相手の能力を評価しながら、ベテランは若手から、若手はベテランから学び教え合ううちに、おのずと「学びの輪」ができてきます。このような尊敬と信頼の絆で結ばれた循環の輪ができると、社員はこの輪の上で、毎日の仕事を通して少しずつ知識や技術を身につけていきます。

 循環はこれだけでは終わりません。人は集団の中で成長を続けていくうちに、一人ひとりが自分なりの個性を育てていきます。そしてこの個性が、今度は集団を変えていく力となるのです。つまり、個は集団から学び、さらに集団は個に育てられてより強い集団へと成長していくという、大きな循環が生まれます。

 こうした循環を自然発生的に起こすには、教育、つまり上が下を「教えて育てる」という発想では限界があります。上下の関係なく共に育つという意味の「共育」という考え方こそが、重要な意味を持つのです。人を「育てる」という発想ではなく、互いに教え、学び合い、共に育ち、成長していくという考え方です。

 つまり、人を育てるという他動詞ではなく、人が「育つ」という自動詞で捉えるのです。ここで大事なのが、人が自発的に育つような企業の風土です。風土さえ良ければ、人は勝手に育ってくれるのです。

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著者プロフィール

常盤 文克(ときわ・ふみかつ)

元・花王会長
1957年東京理科大学卒業、花王入社。スタンフォード大学留学後、大阪大学にて理学博士。花王で研究所長などを経て、76年取締役。90〜97年まで社長、2000年まで会長。現在は企業の社外取締役、アドバイザリーボードメンバーなど幅広く活躍。著書に『モノづくりのこころ』(日経BP社)、『コトづくりのちから』(同)、『ヒトづくりのおもみ』(同)、『反経営学の経営』(共著、東洋経済新報社)、『いま・ここ経営論』(共著、同)など多数。

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