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MBA型リーダーは企業を破綻させる
米国をまねる日本企業の落とし穴

ヘンリー・ミンツバーグ

2007年5月21日(月)

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企業買収やリストラなど派手な戦略で目先だけの利益を追い、法外な報酬を手にする米国企業経営者が後を絶たない。
今や米国経済は、株主価値至上主義に毒され危機にある。
こう指摘するのが論客ヘンリー・ミンツバーグ氏だ。
日本企業が今後も長期的に競争力を維持しようとするなら、米国の経営手法に翻弄されることなく従来の強みを貫けと説く。
組織を発展させるマネジャーはMBAコースでは育成できない。
経験を重視し、「内省」など5つのマインドセットの習得を提案する。

ヘンリー・ミンツバーグ氏

ヘンリー・ミンツバーグ
(Henry Mintzberg)
1939年カナダ生まれ。61年マギル大学工学部卒業後、65年米マサチューセッツ工科大学スローン・スクールにてMBA(経営学修士)取得。68年同大学院にて博士号を取得して以来、マギル大学で教鞭を執る。経営学の世界では故ピーター・ドラッカーに並ぶ論客として知られる。政府にも様々な提言を行っており、98年にはカナダで最も栄誉ある勲章「オーダー・オブ・カナダ」を受賞。
著書はThe Nature of Managerial Work、邦訳『マネジャーの仕事』(白桃書房)、Mintzberg on Management、同『人間感覚のマネジメント』(ダイヤモンド社)、Managers not MBAs、同『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP社)など多数)


 米国の企業経営はかつてない危機的状況にあります。早晩、米国経済はそのために破綻するのではないかとさえ私は危惧しています。なぜか。今の米国企業のトップの多くが、経営者として、リーダーとして本来、果たすべき役割を果たしていないからです。必要な資質を持ち合わせていない。

 株主価値至上主義が蔓延し始めて以来、短期で業績を伸ばす経営者ばかりが持てはやされるようになりました。特に最近は、大型の企業買収や大規模なリストラをぶち上げるなど、派手なパフォーマンスを繰り広げることでアナリストの注目を集め、株価の上昇を狙う経営者が後を絶ちません。

 多くは、その派手な戦略を策定、実行した(この場合の実行とは単に下に命令を下すだけ)という“実績”を武器に、高い報酬を約束してくれる新たな企業へと移っていく。その戦略が、実際にもう少し長い目で見た場合、その企業にどんな結果をもたらしたかが検証、評価されることはほとんどありません。にもかかわらず、法外な退職金を手にして去っていく。

 しかし、ご存じの通り、企業合併で成功したケースなどほとんどありません。クライスラーを買収したダイムラーなどは好例でしょう。業績不振の企業があると、アナリストはすぐにリストラをもっと進めればよいと指摘します。しかし、実は人員削減をしたことが原因で会社が経営不振に陥っているケースが少なくない。つまり、米国で言われるところの「生産性の向上」は実はすべて生産性の悪化を招いている、と私は見ています。特に1990年代以降、こうした破壊的とも言える経営によって米国企業は確実に競争力を失い、企業価値を失ってきたと思います。

『MBAが会社を滅ぼす』(日経BP社)

 『MBAが会社を滅ぼす
 ヘンリー・ミンツバーグ著
 日経BP社 ¥2,940(税込)

 経営に責任を持つ立場にある者は、自分の会社について深く思いを致すべきです。どれほど真剣に考えているかは、その経営者が自分の報酬額についてどんな主張を展開しているかを見ればすぐに分かります。例えばこの1月、小売り大手ホーム・デポのCEO(最高経営責任者)だったロバート・ナルデリは、2億1000万ドル(約246億円)の退職金を受け取って退任しました。こんな要求をする経営者に、「リーダー」と呼ばれる資格はありません。

 日本でも、生産性を上げるべく株主価値や成果主義といった米国型経営の考え方を導入する企業が増えたと聞きます。そうならば米国の経営者たちは大歓迎でしょう。同じ土俵で戦えば、自分たちの企業がそれほど劣って見えることはありませんからね。

コメント11件コメント/レビュー

>このように、上が「濡れ手に粟」の状態で稼ぎ、下が「給料分以下の仕事」を>しているのに、アメリカの企業の方が収益体質がいいのは、なぜでしょうか?と、5/22のコメントにありましたが、それは、「仕組み」が高度に整っているからではないでしょうか?IT技術などの最新技術を恐れずに取り込もうとする姿勢は日本の企業にはあまり感じられません。寧ろ「今までこのやりかたでどうにかなったんだから、このままでいいじゃないか」という思想が延々と繰り返されていると感じます。経営方法には難点があるとしても、仕組み作りに対する投資の仕方は見習うべき部分が多くあると思います。その部分を抽出し取り込むことができれば日本の生産性も労働環境も飛躍的に改善すると思います。日本の企業で働くものとして。(2007/05/22)

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いただいたコメント

>このように、上が「濡れ手に粟」の状態で稼ぎ、下が「給料分以下の仕事」を>しているのに、アメリカの企業の方が収益体質がいいのは、なぜでしょうか?と、5/22のコメントにありましたが、それは、「仕組み」が高度に整っているからではないでしょうか?IT技術などの最新技術を恐れずに取り込もうとする姿勢は日本の企業にはあまり感じられません。寧ろ「今までこのやりかたでどうにかなったんだから、このままでいいじゃないか」という思想が延々と繰り返されていると感じます。経営方法には難点があるとしても、仕組み作りに対する投資の仕方は見習うべき部分が多くあると思います。その部分を抽出し取り込むことができれば日本の生産性も労働環境も飛躍的に改善すると思います。日本の企業で働くものとして。(2007/05/22)

「上が「濡れ手に粟」の状態で稼ぎ、下が「給料分以下の仕事」をしているのに、アメリカの企業の方が収益体質がいいのは、なぜでしょうか?本当に疑問です。」>>下が給料分の仕事をしていても高収益を上げられるようにするのがUSのトップの仕事。日本企業では、下が給料分以上の仕事をしても、経営判断のミスからそれを全部帳消しにしてしまうのが日本の経営トップの仕事。それは財務諸表にはっきりと現れる。たしかにMBAでえられる知識と論理的思考「だけ」では満足な経営ができないのも事実だが、米国のトップ経営者は現場経験を積んだ「あと」にMBAを取得し、さらに現場経験も積むのではないか?知識も論理的思考も現場経験もない日本の経営者と一緒にされるのは彼らも心外だろう。(2007/05/22)

最近、ビジョナリーカンパニーの2冊を呼んだ。Greatに属する企業はMBAに翻弄されず、義の企業文化を長年にわたり育成し、かつ株主に対する配当も立派。それに対して比較対象企業はこの記事の文面で指摘されていることが良く当てはまる。このようにアメリカの企業にも優れた企業が多くあり、このような「アメリカ対日本」というようなダイコトミー(dichotomy:二項対立):での議論はどうなのでしょうか?それとももうアメリカにはGreatな会社は存在しないのでしょうか?最近の日本の企業業績が、一つには派遣社員の低賃金による効果の現れだとすれば、例えばキアノン、トヨタの優良企業が数年に渡り大きな利益と税金を国に与えたとしても、派遣社員、期間従業員などのの文化を助長し定着させた一翼を担っているとしたら、そしてこの文化が若者に悪影響を与えた弊害が後世まで続くとしたら、その功罪は後者の方が大きいのでは?と考えてしまいます。派遣も雇わず正社員だけで、長年利益も上げ、義の文化を持つ、そんな日米の優良企業の土台を築いている原則を考えていただきたい。ビジョナリーカンパニーには示されていると思いますが・・?(2007/05/22)

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