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メガネから転じて携帯、自動車へ

大企業が日参する福井の中小企業は七転び八起き

  • 川嶋 諭

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2007年5月11日(金)

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大増築が決まっている秀峰の本社ビル(福井市)

 福井県にある小さな企業の印刷技術に、日本を代表する電機メーカーや自動車メーカーが注目している。大手メーカーから次々と開発案件が持ち込まれるが、新規に人材採用をしても工場を増設しても対応が間に合わず、てんてこ舞いの状態が続いている。

 福井県の特産品であるメガネのフレームに図柄を印刷する技術を基に、複雑な曲面に精密な印刷ができる技術を開発した秀峰(福井市)である。「顧客対応で精いっぱい。メディアになんて会う時間はないよ」と言う村岡貢治社長に、特別に頼んで話を聞いた。

 秀峰に今、最も熱い視線を向けているのが携帯電話機メーカーだ。

丸い携帯電話にどんな図柄もプリント

 日本の携帯電話機は、電子マネーの機能を持った「お財布携帯」とかテレビ放送が受信できる「ワンセグ携帯」など、次から次へと新しい機能が追加されてきた。その一方で、小型軽量化も要求され、高い機能を付加しながらどんどんスリム化されてきた。

 加えて、形やデザインが良くなければ売れない。少し前のように、機能が高いのだからデザインは犠牲にしてもやむを得ないというのでは、熾烈な開発競争に勝ち残れなくなっているのだ。

 秀峰の曲面印刷技術を使うと、デザインの自由度が一気に上がる。若い女性が好む丸みのある携帯電話機でも複雑な図柄や写真でもプリントできる。しかも、電池の着脱をするための裏蓋部分との間も印刷ズレは全くない。

 秀峰の技は、そうした印刷を独自開発した特殊な印刷機を使って可能にした点にある。特殊といっても印刷にかかる費用は普通の印刷機と大きく変わらず低コストだ。曲面に精密な図柄を印刷するには、電子ビームを使って型に図版を描き、それを転写する方法はあるが、設備コストが高いうえに生産性が悪くて、携帯電話機などの製品では割が合わない。

どんなに細かいデザインでもプリントできる

 独自開発の印刷機と図柄を写し取るゴムの素材や形状、転写の方法に工夫を加えて、いわば紙に印刷するように普通に図柄を転写できるのが同社の特徴だ。それだけではない。試行錯誤の繰り返しによって転写の精度はどんどん上がり、線と線の間が肉眼では見えないような非常に細かい線や絵でも極めて精密に、曲面のある製品に転写できるようになった。

 2006年から、日本を代表する携帯電話機メーカーが次々と秀峰の印刷技術を利用してヒット商品を世の中に送り出してきた。

海外メーカーからのびっくりする金額で買いたいとの申し出を蹴る

 「どこで聞きつけてきたのか、初めは海外メーカーから話があったんですよ。印刷機械を丸ごと売ってくれと。提示された額には驚きました。加えて毎年数千万円ずつロイヤルティーを払うと言うんです。その話にはぐらっときました。従業員に1人2億円ずつ分配して会社を閉じてしまおうかとも思いました」

 「しかし、この技術はまだ開発の余地があったし、ほかに転用も利くと思ってその時は断りました。正直言うと、英語でしかダメという分厚い契約書に辟易とさせられたのも半分ぐらい理由になっていますけど…」

 村岡社長はこう言って笑うが、海外メーカーに売らなかったのは日本の携帯電話機メーカーには幸いだった。英語の契約書に感謝しなくてはいけないかもしれない。

将来的には半導体産業にも進出

 秀峰の印刷技術はさらに進化を遂げている。1マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)の線幅の精度まで細い線を描くことができるようになり、その印刷面の上に金属をメッキすることも可能になった。この結果、印刷面を手で触った時に、凹凸感のある感触を持たせることができ、描画にも奥行き感を与えられる。

 さらに、これだけ細かい印刷が可能になることで、光を屈折させる偏向板にも採用される可能性も出てきた。「将来的には半導体産業にも使ってもらえるのではないか」と村岡社長は期待を寄せる。

高級材の木目が印刷されたハンドル

 半導体への応用には少し時間がかかるようだが、機能とデザインを両立できる技術には当然注目が集まる。村岡社長は「開発の一方で量産体制、品質管理体制も整えなければならず、寝る暇もないくらい忙しい」と話す。

 一方、最近はクルマメーカーも秀峰に秋波を送っている。キーワードは本物を超える質感と環境対応である。

 例えば内装の質感。利幅の大きな高級車へのシフトを強めている日本車メーカーにとって、高級感のある室内は売れ行きを左右する最も大切な要素の1つである。

 もちろん高級な天然素材を多用すれば高級感を出せるが、コストが高くなるうえに木材の伐採など環境破壊にもつながってしまう。そこで、例えば、不要な間伐材の上に高級材の木目を極めて精密に印刷することにより、低コストで木目パネルや木目のハンドルを作ることができる。

コメント7件コメント/レビュー

30歳で創業し60歳で退任して人手に渡しました。その間一番苦労したのは、資金確保でした。30数年前まだ“ベンチャー”なんて言葉すらありませんでしたから資金は、銀行に頼るしかありませんでした。前の会社を退任してから再度新事業を立ち上げ、3年になりますがやはり資金確保には苦労しています。“再チャレンジ”とか“産業活性化”と改正の良いかけ声が掛けられていますので、そうした方面からの資金確保が昔より容易に出来るのかと思いきや、殆ど昔と変わってはいませんでした。この記事の方のように若いときの七転八起なら良いのでしょうが、60歳も過ぎるとなかなか起死回生が難しくなりますが努力してみようという勇気を貰いました。(2007/05/14)

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30歳で創業し60歳で退任して人手に渡しました。その間一番苦労したのは、資金確保でした。30数年前まだ“ベンチャー”なんて言葉すらありませんでしたから資金は、銀行に頼るしかありませんでした。前の会社を退任してから再度新事業を立ち上げ、3年になりますがやはり資金確保には苦労しています。“再チャレンジ”とか“産業活性化”と改正の良いかけ声が掛けられていますので、そうした方面からの資金確保が昔より容易に出来るのかと思いきや、殆ど昔と変わってはいませんでした。この記事の方のように若いときの七転八起なら良いのでしょうが、60歳も過ぎるとなかなか起死回生が難しくなりますが努力してみようという勇気を貰いました。(2007/05/14)

成功するたびに叩き潰されたが、次の成功を生み出し続けた。”近視が儲かる”という分析と判断で成功し、そして近視市場に競争が持ち込まれること、近視が減り市場そのものが縮小することを恐れる勢力からの圧力で2度つぶされた。警察や税務署を動かした背後に、それらの業界の意思があるように見えます。このような構造は国際社会ではより苛烈に巧妙に存在する。存在の否定をするのではなく戦う覚悟を決めるしかありません。”再チャレンジ支援”が政治的スローガンに成り得るように日本の倒産は苛烈です。..立ち上がることが出来たのは、銀行員だったキャリアから経済的なリスクを最低限コントロールしたり受け止めたりする素地があったからではないでしょうか?(2007/05/12)

それで警察は何をしました?国税庁は?裁判所は?これが日本でベンチャー企業が生まれない理由ですよ。苦労して、やっとの思いで成功したら、得た利益は全部税金として吸い上げられる。それに対して文句を言おうものなら警察の強制捜査が入り、次の日の新聞のトップを飾り、成功者はまるで詐欺師で金の亡者であるように報道されるのです。ライブドアも全く同じパターンでしたよね。(2007/05/11)

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川野 幸夫 ヤオコー会長