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110万冊無料配布。“ゲドを読む。”の狙いを読む
宮崎吾朗監督作品「ゲド戦記」DVDのユニークなプロモーション

  • 中村 均

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2007年5月23日(水)

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 今年のアニメーションDVDマーケットで最大のセールスを期待される作品が7月4日に発売される――それがスタジオジブリの宮崎吾朗監督作品「ゲド戦記」。このDVDの発売に当たって、従来にないマーケティング・宣伝手法が採用された。

 「ゲド戦記」に描かれる世界の魅力を伝えるために、文庫本“ゲドを読む。”を110万部制作し、何と無料配布するというのだ。しかも、この本の内容は吾朗氏の映画ではなく、原作小説を解説したもの。今回は、この前代未聞のプロモーションの狙いを探ってみた。

今回配布される文庫本。

今回配布される文庫本。5色のどれがもらえるかは運次第。無料にもかかわらず208ページものボリューム。配布は6月6日から。配布場所は公式サイト

 アニメーション映画「ゲド戦記」は、スタジオジブリの看板クリエーターである宮崎駿監督の長男・吾朗氏が初監督した作品だ。劇場公開は2006年7月。興行収入は同年の邦画トップとなる76億5000万円を稼ぎ出した。

 「ゲド戦記」の映画化については、かつて若かりし頃の宮崎駿監督が原作者であるアーシュラ・K.ル=グウィンに打診。しかし、その時点では了解を得ることができず、以来20年間以上にわたって、ジブリ内部で温められていた企画だった。ところが、「ハウルの動く城」を制作している最中に、突然原作者からの許諾を知らせる一報が届く。そこで、プロデューサーの鈴木敏夫氏を中心に、さまざま可能性を検討した結果、駿氏の息子である吾朗氏が初のメガホンを取り、映画化することになった――という経緯がある。

 7月にリリースされる、DVD「ゲド戦記」を販売するのは、“ジブリがいっぱいCOLLECTION”を扱うブエナビスタホームエンターテイメント(ウォルト・ディズニー・ジャパンのパッケージ部門)。同社は、「ハウルの動く城」や「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」などについて、国内DVD史上に残る好セールスを記録してきた。

 これまでのブエナビスタのマーケティング手法は、映画公開時の人気や勢いを利用しつつ、パッケージのリリース前には大量のTVスポット、新聞広告などで、「DVD発売情報」をマーケットに意識づけさせるというもの。また、メディアでのプロモーションを行う一方、DVDパッケージには、その作品の性格に合った“おまけ”を付けることで、ファンの心理を巧みにつかんできた。

変化した映像商品と“おまけ”の関係

 一般に、ブエナビスタに限らず、DVDに何らかのおまけを付ける動きは、セルDVDの市場の隆盛に伴い、2000年頃から徐々に広まっていった。

 当初はトレーラー(映画館で上映する宣伝映像)などの映像特典を付ける程度だったが、それは次第にエスカレート。

 初回限定版などを中心に、NGシーンやカットされた未公開シーンを集めた特典映像だけのディスクを1枚付加するという流れが一般的になっていった。

 さらに特典映像だけでは、「他の作品と差別化するには弱い」という理由から、モノのおまけもつくように。具体的にはポストカードや作品を解説した小冊子、あるいはキャラクター人形などのフィギュア類である。特にアニメーションDVDでは“萌え系”や“ロボット系”作品において、精巧なフィギュアを付ける傾向が顕著になっていった。

 このように、DVD市場では、“キャラクター商品”をフックに映像商品の顧客を呼び込むという手法が確立されていったわけだ。

 実はブエナビスタも、これまでリリースされたジブリ作品のDVDの一部については、他社と同様の戦略を取ってきた。食玩ブームでフィギュア人気が盛り上がる中でリリースされたDVD「千と千尋の神隠し」(監督:宮崎駿)では、映像特典ディスクに加えて予約者には「ハクのおにぎりフィギュア」を用意。

 また、DVD「ハウルの動く城」(同)の場合は、実際に上映に使ったフィルム1コマ(24分の1秒分)を、透明キューブの中に密封した「1/24second」という置物を、予約購入者は入手することができた。

モノのおまけをつけないという決断

 こうしたプロモーションもあって、ブエナビスタが扱うジブリ作品は好調なセールスを記録。表に、これまでの主なジブリ作品の興行成績と、DVDの売り上げをまとめてみた。

主なスタジオジブリ作品の興行収入とビデオの売り上げ
作品名 興行収入 パッケージ売り上げ
(出荷本数)
もののけ姫 194億円 440万本
千と千尋の神隠し 304億円 550万本
猫の恩返し 64.6億円 72万本
ハウルの動く城 196億円 270万本
*出荷本数はDVD+VHSの数字

 映画業界において、映画の興行収入とパッケージソフトの売り上げの関係は、ざっくり“興行収入1億円で1万本”という見方がある。つまり興行収入30億円であれば、DVDなどのパッケージ商品の売り上げはおよそ30万本というわけだ。

 だが、ジブリ作品の場合は、その“常識”をしのぐ結果を残している。例えば、「千と千尋の神隠し」は、興行収入304億円に対し、映像商品の売り上げが550万本。宮崎駿監督以外の作品「猫の恩返し」(監督:森田宏幸)であっても、興行収入64.6億円に対して72万本と、業界の“基準”を軽くクリア。この実績からすると「ゲド戦記」も76万本超の販売は見込めることになる。

 こうした数字を残してきた中、業界関係者の間では、ブエナビスタが吾朗監督の初作品の“船出を祝う”ために、どんな特典を繰り出してくるのか注目が高まっていた。

 だが、2006年3月13日に都内で行われた関係者向け発表会で壇上に上がったブエナビスタ代表の塚越隆行氏と、ジブリ作品の宣伝を担当する糸井重里氏から発表されたのは、関係者が予想もしていない内容だった。

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