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『労働ビッグバンは日本を元気にするか?』

働き方改革を巡り対極に立つ論者2人が激突

  • 水野 博泰

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2007年6月13日(水)

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「NBonline 1周年記念セミナー」の午後の部、セッションA-1のテーマは『労働ビッグバンは日本を元気にするか?』。経済財政諮問会議民間議員である八代尚宏氏と日本労働組合総連合会会長の高木剛氏を招き、講演と対論を行った。
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八代 尚宏氏による立論

国際基督教大学 教養学部 教授
経済財政諮問会議 民間議員
八代 尚宏氏

 
1946年大阪府生まれ。68年国際基督教大学教養学部卒、70年東京大学経済学部卒後、経済企画庁(現内閣府)入庁、総合計画局計量担当計画官、OECD(経済協力開発機構)事務局主任エコノミストなどを経て、92年上智大学国際関係研究所教授、2000年日本経済研究センター理事長、2005年国際基督教大学教授。規制改革・民間開放推進会議委員、内閣府男女共同参画会議議員を経て、2006年10月から経済財政諮問会議民間議員を務める。

 労働ビッグバンはなぜ必要なのか。あらゆる制度は、それができた時の経済社会環境に見合った形でできている。それを取り巻く制度・環境が変われば、それに応じて変えるのが当然である。労働法制も戦後の大きな変化の中で少しずつ改革がなされてきたが、はっきり言ってつぎはぎだらけで、抜本的な改革が見送られてきた。それによって様々な矛盾が起きている。

 経済社会環境の変化の1つは企業の雇用需要の変化、これは経済活動の国際化、あるいは経済成長の大幅な減速、IT(情報技術)化だ。少子高齢化や女性就業の本格化の中で、これまでの日本の労働市場の中で大きな意味を占めてきた日本型雇用慣行──終身雇用、年功賃金の意義が大きく変わっている。

 それにもかかわらず、これまでの労働法制は暗黙のうちに旧来の日本的雇用慣行をベースにしているため、どうしてもそれを維持するという方向にバイアスがかかってしまう。これを中立的な働き方に切り替えていくことが狙いである。

多様な働き方に応じて労働者を保護する法制にすべき

 今の労働法制は、派遣とかパートとかで縦割りの法律になっている。労働基準法は、均等法を中心に働き方の共通ルールの方に変えていく必要がある。労働法は労働者を保護するための法律であるのは当たり前だが、過去の働き方をベースに労働者を保護しているわけで、多様な働きに応じて労働者を保護する法律に変えていかなければならない。

 労働時間の問題が大きく取り上げられている。平均的にもっと労働時間を短くしてワークライフバランスを実現することが大きな課題である。生活の質を上げるためにも当然である。これからの少子高齢化社会では、単にこれまでのような失業率の引き下げということだけではなく、就業率の引き上げ、つまり働く能力と意思を持っている人たちにできるだけ働く機会を提供するということが大きな政策目標になる。

 今の労働市場の様々な問題は、小泉構造改革からきているという意見がある。国会の前のデモ隊の人もそういうことを言っている。だが、失業率と経済成長率をよく見ると小泉政権が成立した2001年には既に上がり始めた後だった。小泉改革が始まったから失業率が上がったというのはおかしい。失業率が上がったのは過去の高い経済成長率を前提に成立していた様々な制度改革を歴代の政権が怠ってきたからだ。いわば政策の不作為の結果である。速やかに労働市場をもっと効率的なもの、労働者にとって効率的なものに変えていくことによって改革しなければならない。

 いざなぎ景気を超えるぐらいの長い景気回復なのに、労働市場は一向に良くならないと言われる。しかし、今回の景気回復は期間が長いだけで、名目成長率で見ればたかだか1%。とてもいざなぎ景気などと比較できるものではない。景気回復はようやく始まったと考えるべきだ。

 最も大事なことは、日本は人口減少社会に既に向かっているということである。日本的雇用慣行もそうだが、過去の人口増加を前提とした制度慣行を変えなければ大変なことになってしまう。改革をきちっとやれば人口減少社会は決して怖くない。

非製造業の生産性、日本は世界的に非常に低い

 最大の問題は生産性の低さである。社会経済生産性本部がまとめた各国の労働生産性を見ると、日本の製造業の生産性は世界トップレベルだが、非製造業も含めた全産業ベースで見ると日本はほかの国に比べて非常に低い。OECD(経済協力開発機構)平均ではむしろ製造業の生産性よりも非製造業を含めた全体の生産性の方が高い。日本は非常にアンバランスになっている。

 低い非製造業の生産性をある程度上げることによって国民が豊かになる余地はまだまだある。そのためには製造業と同じように非製造業も競争市場にさらしていく必要がある。それを怠ってきたことが、日本の生産性を低めている大きな要因だ。

 経済社会環境の一番大きな変化はグローバル化である。今、どんどん海外への直接投資が自由になっている。その結果、日本から海外への直接投資の額はどんどん増えている。海外から日本に入ってくる投資も増えているが、両者のギャップはむしろ拡大している。今や企業が国を選ぶ時代になっているが、日本が選ばれているのかと言えば実はそうではない。日本の企業がどんどん逃げていく。海外から入ってくる企業は非常に少ない。

 その結果、膨大な海外直接投資によって日本企業が海外から得ている利益がどんどん膨らんで、それが経常収支黒字の大きな要因になっている。これは危機的な状況であって、もっと国内の制度、特に労働市場が生産基地として望ましいものになっていかないと、こういう空洞化がますます広がってしまう。結局、労働者の働き場所もなくなってしまう。

 過去の日本の労働市場は、正規社員が主体で非正規は単に補助的な役割をしていた。それが1998年に大きく変わって正社員が減る一方、非正規が増えている。なぜこんなことが起こったのか。企業が突然利益追求に目覚めたという説明がなされているが、それはおかしい。単にバブル期の反動だと企業は思っていたのだが、回復した後、また低成長になったことで、いよいよ日本の企業はこの経済停滞は長期化するということで雇用調整を始めたのである。

 ただ、この雇用調整は、あくまで正社員の雇用維持のために、バッファとしての非正社員をより多く求めるということからきている。日本的雇用慣行が崩れているのではなく、それを守っているのだ。

コメント2件コメント/レビュー

連合はゼネストを打つべきだ。これ以上の労働条件改悪は労働者を殺すに等しい。議論の余地などないのだ。(2007/06/13)

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いただいたコメント

連合はゼネストを打つべきだ。これ以上の労働条件改悪は労働者を殺すに等しい。議論の余地などないのだ。(2007/06/13)

両者の対談は相撲で言えばガップ利四つ状態だが、行事(司会者)も審判員(主催者)の水入り(時間切れ)合図で中断したのだから観客(読者)としても再試合(第二対談)を願いたいところではあるが、しかし、まあ、結論的には、両者のバックとも言える経営者と労働者の面目を保つ意味でも、結論無き、一種の八百長水入り対談とならざるを得ないのだろう。当方の考えでは、そもそも「労働ビッグバン」という題名からして矛盾であると言える。因みに、宇宙の始まりは150億年前の大爆発説を当方は信じていない!結論すれば、司会を含め三者に欠落しているのは「起承転結」で言えば「転」、流行り言葉で言えば「イノベーション」であり、具体的には「1と0」や「SとN」がコンピューターやリニアモーターカーを創ったのである。その意味で、「起≒雇用」「承≒労働」は「転≒個人消費家=個人投資家」の登場無くして「結≒事業創造=雇用創造」は導き出せない!という「当方の説教・・即ち「高度成長期における池田岸の所得倍増計画=個人資産1540兆円(預貯金527兆円)」から「低成長期に於ける個人消費倍増計画に転じている小泉安倍路線」が21世紀の新成長戦略であることに気付くことである。(2007/06/13)

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