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『新時代リーダーの条件』

経営と教育の最前線から見た理想のリーダーとは

  • 鶴岡 弘之,高橋 史忠

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2007年6月15日(金)

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東京大学大学院教授 宮田 秀明氏

東京大学大学院 教授
宮田 秀明(みやた・ひであき)氏

1948年生まれ。1972年東京大学大学院工学系研究科船舶工学専門課程修士修了。同年石川島播磨重工業に入社、77年に東京大学に移り、94年より同大教授。専門は船舶工学、計算流体力学、システムデザイン、技術マネジメント、経営システム工学。世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」の日本チーム「ニッポンチャレンジ」でテクニカルディレクターを務めた。著書に『アメリカズ・カップ―レーシングヨットの先端技術』(岩波科学ライブラリー)、『プロジェクト・マネジメントで克つ』(日経BP社)、『理系の経営学』(日経BP社)など 。

 NBonline1周年記念セミナーの「新時代リーダーの条件」と題したセッションでは、まず毎週金曜日の人気コラム「経営の設計学」を執筆している東京大学大学院の宮田秀明教授が登壇した。題目は「プロジェクトリーダーの実学」。自身が技術開発のリーダーとして活躍した世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」での実例などを示しながら、製造業の進むべき方向性、イノベーションを生み出す人材育成の重要性といった持論を展開した。

 最初に提示したのは「真似は負け」というテーゼ。「日本人は真似をするのが好き。リスクが少なくて安心できるから。でも、それでは勝てない」と、アメリカズカップの体験をひもときながら常識を打ち破ることの重要性を語った。

 宮田教授は、勝負に勝つために重要な要素として「マネジメント」「テクノロジー」「チームワーク」「マネー」の4つを挙げた。しかし、アメリカズカップの日本チームは、イタリアチームなどが80億円以上をかけてレースに臨む中、予算がその半分以下。決定的に“マネー”が少ない中で、ヨットレースの強国・米国チームをすべて打ち破り、予選2位という成果を上げられたのは、ほかの3つの要素で他のチームを上回ることができたからだという。

 特にテクノロジーについては、絶対に他チームの真似をしないという信念を貫いた。真似をしては絶対に勝てないと考えたからだ。ほとんどヨットレースの経験がない日本チームのセーラーで勝利をつかむには、従来にない発想でぶっちぎりのスピードを持ったレース艇を開発することが至上命題だった。

 そのため、宮田教授が他のチームと大きく異なる船尾が細い船型のレース艇を提案すると、技術開発メンバーからもセーラーからも疑問の声が上がった。「どうしてこんな変な船を設計するのですか。(当時最速だった)ニュージーランドチームのような形にしましょう」と言われたのだという。船をレース会場に運び込んだ時には、日本チームのレース艇を初めて目にした他のチームの著名な設計者から「日本艇の形は間違いだ」という声が聞こえてくるほどの非常識だった。

 それでも、宮田教授は設計したレース艇が最速であることを結果で証明した。事実、次のアメリカズカップからは、船尾が細い船型に「スクエアスターン」という名称がついて“世界標準”の船型になった。宮田教授は「イノベーションを生み出すには、これまでの常識を打ち破り、非常識を常識に変えなければならない」と強調した。

プロジェクト思考を持ったリーダーを育成せよ

 ヨットの設計では、ほとんど“素人”だった宮田教授がレース艇のイノベーションを生み出す核になったのは、IT(情報技術)を駆使したシミュレーションだ。これは「経営の設計学」でも何度か紹介しているように、宮田研究室が企業と共同で手がけている書籍流通や通信販売、国際物流といったサービス業のビジネスモデル研究にもつながっている。「サービス業のビジネスモデル構築と、ヨットの設計にはアナロジーがある。イノベーションを生み出す科学的・論理的なプロセスはほぼ共通だ」。

 そのうえで、日本企業がイノベーションを生むために必須なのは、創造的な発想でビジネスを進める“プロジェクト思考”と、その思考でリスクに挑戦するリーダーの育成だと話した。「人を育てるには、早い段階でのエンパワーメント(権限委譲)と、成功体験による達成感こそが重要。もちろん成功するまでには、たくさんの小さな失敗を経験するが、失敗のままで終わってはダメだ」。

 成功体験は、ビジョンのある現場で得てこそ血肉となる。プロジェクトは「現場に始まり、現場に終わる」というのが宮田教授の持論だ。「どんなにMBA(経営学修士)教育で学んでも、本を読んでも構想力は得られない。だが、本来は実学であるはずの経済学や工学は、現場からの乖離がどんどん進んでいて、『論文に始まり、論文に終わる』研究者が増えている。これは憂慮すべきこと。構想のタネは現場にあるし、実学である以上、最終的には世の中の役に立たなければならない」。

 現場で1つのプロジェクトを終えたら、次は少し違う分野のプロジェクトでもう一段階、自らの経験値を上げる。その方が、同じ分野に固執するよりも総合力としてはより高くなる。宮田教授は「常に新しいことに挑戦し、複数のプロフェッショナルを持つような生き方をすべき」と会場の聴衆を鼓舞した。大学の研究室では、産学連携のプロジェクトで学生たちをビジネスの現場に放り込み、そうした生き方のきっかけ作りとなるよう意識しているのだという。

 最後に宮田教授は「少しずつではあるが、大学という教育機関で、これからもビジネスモデルを開発できる人材を育てていきたい」と語って講演を締めくくった。

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