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金融業に現れた「定説破り」の勝ちパターン

2007年6月28日(木)

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 様々な業界で、「勝ちパターンの定説」というものがある。「自動車業界では規模のメリットが大きいので、グローバル競争に勝ち残るには400万台クラブに入る必要がある」とか、「製薬業界は、巨額のR&D(研究・開発)投資が可能な一握りのジャイアントプレーヤーと、バイオベンチャーに2極化していく」といった類だ。

 往々にして、世界規模でのスケールメリットを述べ立てる例が多いのだが、いくつかの業界では、世界ではなく、国(ないし地域)ごとに一定以上のシェアを取ることが重要視されている。例えばロジスティクス効率(時間、密度、単位当たりコスト)がものを言うセメント業や牛乳のメーカー。加えて、各市場独特の消費者ニーズへの対応が死命を分ける組織小売業チェーンなどだ。

グローバル展開が欠かせない投資銀行

 金融業の場合は、グローバル性が極めて重要な投資銀行業務と、各国市場ごとでの高シェアが好業績につながる商業銀行業務に二分されると言われている。

 投資銀行業務の場合、リスクを取れる投資家に世界各地でアクセスできることが極めて重要だ。資金を必要とする大企業にすれば、世界中の資本市場につながりを持ち、スピーディーかつ妥当な価格で株や社債を売り切ってくれるグローバルな投資銀行は、力強いパートナーだ。グローバル投資銀行は、常に市場の最先端にいることで、商品組成力、提案力、そして、それを支える人材も、トップクラスを維持できる。

 また自己投資業務では、国・地域ごと、商品分野ごとに好不況の波が異なる中、全世界に目配りしながら、利益獲得チャンスの大きい所に資本を投下していける。これは、限られた市場で活動するプレーヤーにはない強みである。

 こういったことが、米ゴールドマン・サックス、米モルガン・スタンレーといったグローバル投資銀行が世界各地でシェアを伸ばし、また、日本のメガバンクグループも、遅ればせながら投資銀行業務の海外展開を再度図ろうとしていることの背景にある。

商業銀行はローカル市場で勝負

 一方、商業銀行の場合は状況が異なる。中堅企業や中小企業の日々の資金マネジメントを請け負い、貸金ビジネスにつなげていく。あるいは、高い利便性を通じて、幅広い消費者から支持を集める。このためには、ローカル市場の中で、相当規模の支店・ATMネットワークを設けることが必要だ。

 特に、利益性が比較的高い消費者向け(リテール)業務の場合、規模そのものが、信用という形でブランド力につながることもあり、ローカル市場内でのシェアが決定的に重要だとされている。

 実際に、グローバル展開を進めている米シティバンクや英HSBCを見ても、自国での高シェア・高収益を基盤としたうえで、各進出先で一定以上のシェアを確保する、という戦い方だ。

 シティバンクの場合、日本ではこれまで限定的なネットワーク展開にとどまり、精彩を欠いていたが、今般、日興コーディアル証券を傘下に収めたことで、日本市場内で(定説通りの)積極的シェアアップ策に出てくるものと考えられる。

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「金融業に現れた「定説破り」の勝ちパターン」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCGシニア・パートナー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経て現在に至る。事業戦略、グループ経営、M&Aなどの戦略策定・実行支援、経営人材育成、組織能力向上などのプロジェクトを手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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