アニメの制作といえば、スタッフが手作業でセル画を描くアナログなイメージが強い。だが、それは十数年前までの話。現在では多くの作業がデジタル化されている。
アニメやコミックの制作に特化して、パソコンで作業できるソフトを販売して急成長したのがセルシスだ。今やテレビアニメ制作現場におけるシェアは90%以上。加えて、電子コミックの配信をサポートする事業も成長している。2006年12月に名古屋証券取引所のセントレックス市場に上場した。
アニメ制作をデジタル化し効率大幅アップ
川上 陽介(かわかみ・ようすけ)会長
1960年生まれ。82年オークグラフィック研究所入社。91年セルシスを創業し代表取締役社長に就任。2007年代表取締役会長に就任(写真:乾芳江)
十数年前までのアニメ制作は、紙に描いた原画をもとに、アニメーターが紙に少しずつ動きの変化をつけた動画を描き、それを1枚ずつ透明なフィルムのセルに転写して絵の具で色付けした。それをフィルムに撮影して完成、というのが作業工程だった。
通常、テレビで放映されている30分番組(正味22分間)には約3000枚の動画が必要となる。「これら一連の作業をすべて手作業で行っていた時代には、1つの番組に必要な動画を仕上げるには、50人の専門職が集まって約1カ月を要した」(川上陽介会長)という。
その地道なアナログ作業の世界を大きく変えたのが、セルシスが1993年に発売したパソコンソフト「RETAS!PRO」だ。それまで手作業で行ってきた作画、スキャニング(読み込み)、仕上げ(彩色)、撮影といった各工程をすべてパソコン上でデジタル化して行うことで、大幅な効率アップを実現した。
原動画は、これまで紙の上に描かれていた。このソフトでは、タブレット(板状の入力装置)の上で電子ペンを使って、原動画を手書きする。タブレットに書き込まれた絵は鉛筆の筆致そのまま。アニメーターの筆圧までも感知し、紙に描いた絵と比べても遜色ない。
ただ、この段階までの作業効率は従来とそれほど変わらない。大きく変わったのは、その後の工程だ。絵はデータ化されているので、加工や修正が簡単に行える。「特に彩色の工程では、セルに直接絵の具を塗っていたころに比べれば、スピードは10〜30倍以上。しかも絵の具が乾くのを待つこともなく、失敗してもやり直せる。全工程での制作時間は5分の1にまで短縮できる」(川上会長)。
原画や動画を描くのは、「Illustrator」や「Photoshop」といった既存のソフトでも可能だ。しかし、これらのソフトは美しい画を1枚作るには機能も豊富で優れていても、22分に3000枚という数の原動画を効率よく作画することが要求されるアニメ制作を主眼に置いたものではなかった。
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