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新市場を作り出す「次の10億人」

携帯電話がバングラデシュの漁業を変えた

2007年7月27日(金)

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 電信電話という発明がなかったら、長距離鉄道輸送の発展は遅れただろうと言われる。鉄道の黎明期、例えば19世紀の米国では、「何時何分にどういう貨物を積んだ列車が、どこの駅を通過したか」という情報を、沿線の各駅で同じように把握できることが、事故なく、かつ効率的に列車を運行する大前提だった。線路が単線だったため、複数の列車を鉄路上で同時に走らせるには、正確な情報に基づいて、どこでどの列車がいつ頃すれ違うかを推定しなければならなかった。電信電話の登場で、これが可能となったわけだ。

 同様に、郵便制度が発明されていなかったら、商業活動の拡大スピードは、もっと遅かっただろうし、テレビやラジオがなければ、マス広告を前提とする様々な消費者向けビジネスも、現在のような隆盛には至らなかったかもしれない。

 こういった「通信手段の進化が、世の中を大きく変える」という歴史は何度も繰り返されてきた。昨今では、インターネットの登場とその活用方法の進化に合わせて、世の中の大きな変化を予測することが、盛んに行われている。

ケータイが変えるバングラデシュの漁業

 日本にいると、ネット化が社会と経済に大きな影響を与えつつあるという感覚を覚えがちだし、それはあながち間違っていないのだろう。ただ、日本にフォーカスした見方から離れ、世界を見わたしてみると、もう少し前の世代の通信革命、例えば携帯電話(ケータイ)が、世の中と人々の生活を変えつつある例が数多く存在することに気づかされる。

 特に、先進国以外の国々で、最貧層から抜け出しつつある“ネクストビリオン(Next Billion、次の10億人)”と呼ばれる人たちにとって、ケータイがもたらすインパクトは非常に大きい。

 今週、日経新聞の紙上でも紹介されていたが、バングラデシュでは、ケータイが貧しい漁師たちの生活を大きく改善しつつある。ベンガル湾で小船を連ね、漁に出る漁師たちはグループで1台のケータイを所有するようになった。漁から帰り、港に着く前に、彼らが最初にすることは、ケータイでその日の魚の買い取り価格について、他のグループと情報交換することだ。

 各港で水揚げを買い取る業者は、これまで価格情報を独占しており、漁師たちは、市況にかかわらず、業者の言い値で買い取ってもらうしかなかった。ところが、ケータイで各港の価格情報や他の漁師グループの水揚げ情報を得ることで、その日の妥当な価格レベルを知ることができる。価格についての情報を得てしまえば、以前より強い立場で交渉することも可能だし、場合によっては、高く買い取ってくれそうな別の港に向かうこともできる。ケータイによる情報格差縮小が、貧しい漁師たちの経済状況を一変させつつあるわけだ。

ケータイを持つことで銀行の口座開設が可能に

 さて、これも日本にいるとピンとこないのだけれど、多くの国で銀行サービスを受けられない人たち(「アンバンカブル(unbankable)」と言われる)が相当数存在する。米国ですら、移民や低所得層を中心に人口の10%前後が銀行サービスの埒外にあるのだ。低開発国の場合、銀行の店舗投資に見合う地域が限られていることもあって、人口の5割以上がこういうアンバンカブルな人たちであることも珍しくない。

 最近になって、こういった人たちがケータイのおかげで銀行サービスを享受できるようになってきている。ケニアでは、ケータイを持つと電話会社に口座を開くことができ、銀行の店舗やATMなど存在しないような田舎に住む、別のケータイユーザーの口座にも、送金することが可能になった。

 ザンビアでは、電話会社によるセルペイというサービスを通じて、クレジットカードやデビットカードのような決済、様々な料金の支払い、そして、お金の送金・受け取りができるようになった。2006年には、このサービスを通じた資金の流れは、ザンビアのGDP(国内総生産)の2%に達したとされている。

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「新市場を作り出す「次の10億人」」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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