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サブプライム問題が金融機関に問うものは

忘れ去られたプルーデントを復興せよ

  • 神谷 秀樹

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2007年9月3日(月)

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 米国にも英国にも「プルデンシャル」という名の保険会社がある。プルーデント(prudent)であることが金融機関にとって最も重要な価値観とされた時代に設立されたのであろう。プルーデントを辞書で引くと、「慎重であること、用心深いこと、分別があること」と出ている。

 32年前に住友銀行(現・三井住友銀行)に入った時の研修で「貸出金利が低すぎて潰れた銀行はない。銀行が潰れるのは元本が焦げた時だ」と教わった。当時プルーデンスという価値観は明確に収益性より重視されていたが、現代の銀行経営者の発言を聞いていると、もはや過去のものとなってしまったようだ。

 6月に福岡で「Asia Innovation Initiative(AII)」というコンファレンスが開催され私も参加した(関連記事はこちら)。2日目の基調講演でジャーナリストの田原総一朗さんと、AIIの主催者の1人であるクオンタムリープ社長で元ソニーCEO(最高経営責任者)の出井伸之さんが対談された。その中で「日本の金融ビジネスは欧米に比べて、遅れているのか?」という議論が出てきた。

 田原さんが出井さんに質問されたのだが、出井さんは、それに答えるのはご自分ではなく聴衆の1人として座っていた私の方がふさわしいとして、振ってきた。

 「今の日本の金融機関にとって大事なのは、強欲に振り回されている現代のウォール街の真似をするのではなく、戦後の復興の一翼を担った銀行が果たした役割を振り返り、そこから未来に向かって何をすべきか考えるべきではないか」。私はこのような趣旨の回答をした。

古今東西、バブルは欲まみれの人間が引き起こす

 サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付きに発した世界規模の信用収縮は、起こるべき事が起こっているに過ぎないし、私はこれで事が収まるとは考えていない。

 私は本コラムで2月に米国企業の格付け低下問題(7割はジャンク、米国企業のお寒い現実)を指摘し、3月にはサブプライム問題(サブプライム問題に見る米国の病魔)を書き、7月にはプライベートエクイティファンドが主役となって展開しているM&A(企業の合併・買収)ブームも、そろそろ「宴の終わりの始まりか」(ファンド上場、M&Aブームは終わりの始まり)と書いた。8月は為替を問題にし(円安を問題視しない日本の問題)、円高によって人々が大きな損失を被らないようにと願う一方、いつまでも円安麻薬にひたっているわけにはいかないのではないか、ということを語った。

 これらの記事は、いずれも現在のウォール街にはびこる「強欲資本主義」の問題点を指摘したものだ。強欲資本主義とは、金さえあれば何でもできる、金がすべて、という度を超えた儲け主義のことだ。今のウォール街は、プルーデンスであることは疎まれ、欲望をむき出しにして行動することが、称賛される。こうした態度が過激になればバブルとなり、その行き着き先はバブルの破裂だ。

コメント4件コメント/レビュー

記事の懸念は大変参考になりました。が、日本の銀行とて、一度同意した担保の価値変動に自分たちは責任を負わない。無限責任を借り手に押し付けている。これは慎重さとは呼べないしプロとして尊敬もされない。誰かが無限責任を負うべきだと主張する者は往々にして自分の責任を有限化したいという意図を持っている。有限責任であることのメリットは万人にとって大変に大きい。今日の法治国家の常識でもあるように見える。私欲にまみれた悪人は何処にでもいる。この悪人を責任ある立場から排除するという方向性で考えるべき問題だ。日本は国が莫大な借金を積み上げたが、米国は個人が同じように過剰な借金をしてその金で世界の消費を引き受けてきた。それを促進した手段の一つが「なんでも証券化」だ。だがどんなテクニックを使おうと、普通に考えれば借金ブームによる消費の伸びはどこかで止まる。大多数の個人の借金はどんなに理屈をつけても教育資金以外は企業の借入金とは本質的に異なる。サブプライム問題は個人の借金ブームの限界が近いことを示していると思う。(2007/09/03)

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いただいたコメント

記事の懸念は大変参考になりました。が、日本の銀行とて、一度同意した担保の価値変動に自分たちは責任を負わない。無限責任を借り手に押し付けている。これは慎重さとは呼べないしプロとして尊敬もされない。誰かが無限責任を負うべきだと主張する者は往々にして自分の責任を有限化したいという意図を持っている。有限責任であることのメリットは万人にとって大変に大きい。今日の法治国家の常識でもあるように見える。私欲にまみれた悪人は何処にでもいる。この悪人を責任ある立場から排除するという方向性で考えるべき問題だ。日本は国が莫大な借金を積み上げたが、米国は個人が同じように過剰な借金をしてその金で世界の消費を引き受けてきた。それを促進した手段の一つが「なんでも証券化」だ。だがどんなテクニックを使おうと、普通に考えれば借金ブームによる消費の伸びはどこかで止まる。大多数の個人の借金はどんなに理屈をつけても教育資金以外は企業の借入金とは本質的に異なる。サブプライム問題は個人の借金ブームの限界が近いことを示していると思う。(2007/09/03)

面白い視点で書かれた記事です。今の日本で見る限り、同じ無責任でもスティールパードナーズやクラシエホールディングスで名前が出てくる国内三大ファンドのような積極的無責任のファンドと、貸し渋りを行う消極的無責任の銀行と、両極端のような気がします。(2007/09/03)

少し前にNBオンラインで野村証券はサブプライム問題でかなりの損を計上したが日本の都市銀行は少ないのは、世界の資本市場への参加度合いが遅れている旨の発言をしていた。私はそれがどうも引っかかり釈然としなかったが、今度の神谷さんの論旨を読んで納得がいった。同じファンドマネージャーながら背骨がしっかりしている発言に拍手し賛意を表したい。文中にあるように日本の銀行の取得利子率が低いのはより安全な物件を取得しているからだろう。ただ日本の都市銀行も発展方向は投資銀行の方向にあることは否定できない、一方でリテール強化と安易にサラ金を取得するようなやり方はいただけない。強欲な金融機関が低収入所帯と、監視機関を言葉巧みにだまして作り上げた債権が本質的に生まれから不良債権であることを省略している。(2007/09/03)

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