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「損失が少ない」は誇れるのか

サブプライムのもう1つの問題

  • J・W・チャイ

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2007年8月24日(金)

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 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人を対象にした住宅融資)問題に端を発した世界的な金融不安は、私の記憶する限り、アジア危機、ロシア危機、ハイテクバブルなど1990年代から2000年初頭にかけて起きたいずれの危機よりも深刻だ。金融技術の発達でリスクが世界中に広く薄く分散されている分だけ、問題の所在がはっきりせず、得体の知れない気持ち悪さがある。もちろん、日本も対岸の火事とは言っていられないだろう。

 そんな中、先頃、野村ホールディングス8604が米国のサブプライム絡みの証券事業で、726億円の損失を出したと発表した。日本の金融機関がこの問題で損失額を公表したのはこれが初めてだ。私はこのニュースを聞いて「野村は日本の金融機関の中ではグローバル化の進んだ会社だ」と思った。

あまりに少ない邦銀の損失

 損失を出した会社を褒めるのは変な話だが、現在の世界金融の実態を踏まえれば、大手金融機関が規模の大小はともかく、サブプライム問題に関わっていないはずはない。米国の住宅ブームを後押ししてきたのが、ローンを証券化する仕組みであり、サブプライムの債権は証券化を通じて、世界中の投資家に購入されてきた。

 世界の流動性のうち、このところ急速に拡大してきたのは、この証券化商品やデリバティブ(金融派生商品)など、少ない投資で大きな取引を行うレバレッジ効果の大きいものだった。米モルガンスタンレーによれば、1990年に世界の流動性は5.7兆ドルの規模でしかなかったが、2006年末の時点ではこれが415兆ドルに拡大している。そのうち9割はデリバティブや証券化商品が占める。つまりグローバルに事業を展開している大手金融機関ならば、これらの商品をポートフォリオに組み込んでいるのが、ごく自然な姿なのだ。

 野村の発表後、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306や三井住友フィナンシャルグループ8316など邦銀大手も相次いでサブプライム関連の損失を発表したが、いずれも数億~数十億円程度だった。

 もっとも、野村は米国で住宅ローン会社からローン債権を買い取り、投資商品に組み替えて投資家に直接、販売している立場にある。こうした商品に投融資しているだけの邦銀大手よりも、損失額が大きいのは当然だろう。

 ただ、いずれにせよ日本の金融機関は欧米に比べると損失額がはるかに少ないというのが、私の率直な実感だ。「ほんとにその程度で済むのだろうか」という思いが半分。そして、もしこの程度の損失額だとしたら、日本の金融機関はグローバル化した現在の金融市場で孤立した存在だという思いが、半分である。

損失を出さなかったことを自慢しがちな日本の経営者

 かつて日本でバブルが崩壊した時、「当社は財テクには手を出さなかった」と胸を張る経営者がいた。今回も同様に、「サブプライムなんて危ない橋は渡らなかった」と力説する日本の経営者が出てきそうだ。しかし、それは見方を変えれば、「世界の潮流から取り残されているドメスティックな金融機関」であることを誇示しているようなものである。

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