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南極で生死を分けたリーダーシップ

2007年9月7日(金)

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 南極点近くに、米国が管理する極地研究の基地がある。このコラムを書いている9月4日現在は、南半球の冬。基地周辺の温度は摂氏マイナス67度、強風による体感温度の低下も勘案すると、なんとマイナス97度という極低温の地である。20世紀初頭にこの南極点を目指した2人の探検家がいた。彼らにちなんで、この米国基地は、アムンセン・スコット基地と呼ばれている。

 ご承知のように、この2人は同時期に南極点を目指していたが、アムンセンが1911年12月14日に先に極点到着。「人類初の南極点到達」という成果を上げ、無事スタート地点に帰り着いた。一方、スコットも翌1月17日に到着したものの、帰路猛吹雪の中、探検隊全員が遭難するという事態になった。

 栄光と悲劇、この対照が強烈な印象を残したからだろうか。米国の極点基地は、異邦人(アムンセンはノルウェー人、スコットは英国人)の名を、しかも一番手と二番手、両方の名前を併せ冠している。

両者の明暗を分けたものとは

 日本でも、この2人に対しての興味は高かったようだ。記憶が定かではないが、昔、教科書にも彼ら2人の探検の話が取り上げられていたような気がするし、ジャーナリストの本多勝一氏は『アムンセンとスコット』という著書の中で、両者の探検について詳細に比較している。

 私が読んだ中で最も興味深かったのは、西堀栄三郎氏による2人のリーダーシップの違いについての解釈だ(前述の『アムンセンとスコット』の単行本版に収められ、また、その骨子は西堀氏の『創造力』という著書の中で紹介されている)。

 西堀氏によれば、リーダーシップのあり方の様々な違いが、両者の明暗を分けたという。西堀氏はその中でも、「極地探検への情熱」「チーム運営手法」「徹底的な準備と細部へのこだわり」「楽観から来る平常心」などについての違いを、重要な要素として挙げている。本多氏の『アムンセンとスコット』に見られる両部隊の具体的活動に照らし合わせてみると、なるほどと頷かされる部分が多い。

 例えば、チーム運営手法の違い。英国海軍軍人であるスコットが、軍隊式の上意下達型の組織管理を行っていたのに対し、アムンセンはメンバーのやる気と創意工夫を生み出すようなチームワーク重視型の運営手法を取っていたという。

 アムンセンは、探検の成否を分ける装備品について各メンバーから改良のための知恵を求め続け、ゴーグルについては「改良コンテスト」まで実施したらしい。西堀氏の述べている「チーム運営手法」と「細部へのこだわり」が好循環になっており、まるで日本企業のQC(品質管理)活動のようである。

トヨタの「現地現物」に通じるアムンセンのやり方

 「徹底的な準備」という点で見ると、アムンセンの移動手段(犬ぞり)へのこだわりとそれに基づく準備は、スコットのそれと大きく異なっている。アムンセン隊は、北半球から南半球への航海の間に、そりを引くエスキモー犬を徹底的に労わり、赤道を越える間に、多くの犬を失いかねないところを、97匹から116匹に増やした。

 そのうえで、南極到着後は犬ぞりの訓練に明け暮れた。この訓練は、基地周辺での練習にとどまらない。極点探検をする場合には、極地に向かう道中各所に食料貯蔵地点(デポ)を作る必要があるのだが、そのための遠征も犬ぞりを実地使用する訓練として考え、3回にわたって行っている(スコットは、1回のみ)。また、この3回の遠征で、衣類やテントなどの備品についても様々な改善点を見いだし、実際に改良を加えている。

 スコットの方は、過去犬ぞりで失敗した経験もあり、馬ぞり、エンジンのついた動力そり、そして犬ぞり、という3種類の移動手段を持ち込んだ。豊富な資金力に支えられた一種のリスクヘッジのように見受けられるが、実際には、南極の気候の中で使ってみると予想外のことが起こり、新しい手段は次々と駄目になっていった。

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「南極で生死を分けたリーダーシップ」の著者

御立 尚資

御立 尚資(みたち・たかし)

BCG シニア・アドバイザー

京都大学文学部卒。米ハーバード大学経営学修士。日本航空を経てボストン コンサルティング グループ(BCG)に入社。BCG日本代表、グローバル経営会議メンバー等を歴任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官